- 2024/10/16 掲載
アングル:ECB理事会、今週追加利下げへ 5つの疑問点
[14日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は今週17日の理事会で追加利下げを決定するとみられている。
すでに6月と9月に利下げを実施しているが、ユーロ圏経済は前回の理事会以降、悪化しており、四半期に1回だった利下げペースが加速するとの見方が強まっている。
ドイツ銀行の欧州担当チーフエコノミスト、マーク・ウォール氏は「ECBが10月に利下げを実施しなければ、市場はECBが後手に回っており、政策ミスを犯す恐れがあると考えるだろう」と述べた。
以下に5つの重要な点をまとめた。
(1)ECBは今週利下げを実施するのか
利下げはほぼ確実だ。トレーダーは25ベーシスポイント(bp)の利下げが実施される確率を90%程度と見ている。前回のECB理事会の時点ではわずか20%だった。
S&Pグローバルがまとめた9月のユーロ圏HCOB総合購買担当者景気指数(PMI)改定値は49.6と、前月の51.0から低下し、好不況の分かれ目となる50を2月以降初めて割り込んだ。
一部のECB当局者はすでに10月の利下げの論拠を示している。
ECBのラガルド総裁も、インフレ率が目標の2%に回帰するとの自信を強めており、これを10月の政策決定に反映させるべきだと発言。10月の利下げを示唆した。
(2)連続利下げが始まるのか
ウォール街のエコノミストはそう考えている。トレーダーも10月後の4回の理事会で3回強の利下げを予想している。
ただ、ECB当局者は、まだそこまで踏み込んでいない。ECB理事会メンバーのレーン・フィンランド中銀総裁は、追加利下げのペースと規模は会合ごとに決定されると繰り返し表明している。
ただ、アクサのチーフエコノミスト、ジル・モエック氏はECBが経済予測を公表する12月の理事会で今後の見通しを変える可能性があると予想している。
(3)ECBはもはやインフレを懸念していないのか
トレーダーはそう考えている。2年前に10%を超えて急上昇したインフレ率は、今年9月にはECBの目標である2%を下回った。
ECBが特に懸念している根強いサービスインフレでさえ、わずかに鈍化した。野村によると、季節調整後の前月比では2023年11月以来の低水準だった。
ダンスケ銀行がまとめたデータによると、インフレリスクのヘッジに利用されるデリバティブ市場は、インフレ率がECBの予測よりかなり早い来年1月から持続的に目標を下回ると予想している。
タカ派として知られるECBのシュナーベル専務理事でさえ、インフレ率が目標に向けて低下する可能性が高まっていると述べた。
とはいえ、サービス価格の上昇率はまだ4%で、今年は鈍化していない。9月のインフレ率鈍化はエネルギー価格主導で、ECBはまだ勝利宣言をしていない。
(4)ECBの主な懸念要因は経済成長なのか
経済成長に対する懸念は強まっている。
だが、ECBは米連邦準備理事会(FRB)とは異なり、インフレ率のみを目標としているため、問題は景気停滞によってインフレ率が持続的に目標を下回るリスクがあるかどうかだ。
今のところ、ECBは実質所得の増加で消費と成長率が押し上げられ、経済成長率が今年の0.8%から来年は1.3%に加速すると予想している。一部のエコノミストはこの予想が楽観的過ぎると指摘。ドイツ経済はすでに2年目のマイナス成長に直面している。
アクサのモエック氏は、予想される景気回復がすぐに実現しない場合、インフレ率がECBの目標を下回るリスクがあると指摘した。
(5)ECBにとって地政学的リスクは懸念要因か
そうだ。だが、エコノミストによると、どちらかと言えば物価よりも経済成長の点で懸念しているとみられる。
イスラエルとヒズボラの紛争が激化する中、原油価格は10月初めから9%以上値上がりしたが、今年の高値を依然10ドル以上下回っている。
BNPパリバの欧州担当チーフエコノミスト、ポール・ホリングスワース氏は、インフレ率が低いため、ECBはエネルギー価格主導の一時的な物価上昇を容認できると指摘。ECBはどちらかと言えば経済成長のリスクの方を重視しており、地政学リスクはECBの懸念を強める要因になると述べた。
重要な点だが、今週の理事会は11月の米大統領選前最後の理事会となる。
エコノミストは、トランプ前大統領が勝利し、全ての輸入品に一律10%の関税を課す公約を実行に移せば、ユーロ圏の経済成長が打撃を受け、利下げをさらに進める論拠になると指摘している。
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