- 2024/08/14 掲載
アングル:韓国個人投資家が米国株買い拡大、市場混乱にもひるまず
[ソウル 14日 ロイター] - 韓国の個人投資家は、先週の世界的な金融市場の混乱にもひるむことなく、米国株買いを拡大している。こうした動きは何年も続くトレンドで、国内の株式市場が低迷しているため今後も衰えそうにない、というのが市場関係者の見方だ。
今年になって韓国政府は国内株式市場への資金呼び込みに向けた取り組みを進めているが、個人投資家は世界的な人工知能(AI)ブームもあって、エヌビディアやテスラ、アップルなどの米国株を物色している。
2020年からテスラに投資し、現在は金融資産の約85%をテスラ株が占めるというサニー・ノーさん(49)は、足元の株安も長期的な買い場とみなす。「1年か2年単位なら値下がりしても、より長い10年ならば再び上昇するだろう」と言い切った。
韓国の株式市場には、サムスン電子やSKハイニックス、現代自動車といった世界的な大企業が上場している。しかしノーさんら個人投資家は、「コリア・ディスカウント」と呼ばれる相対的に低い株主還元や企業価値に不満を募らせてきた。
例えば国内上場企業による過去10年の配当性向は平均26%で、台湾の55%、日本の36%、米国の42%を軒並み下回っていることが、韓国金融委員会のデータで分かる。
サムスン電子やSKハイニックスが、AIブームの先頭集団に入っていないことも、投資家を一層失望させている。このため特にサムスン電子は年初来で4%安と、120%高のエヌビディアと対照的な値動きだ。
韓国企業の過去10年の株価純資産倍率は平均1.04倍で、米企業の3.64倍に遠く及ばない。
これらの要因から、個人投資家はもう10年余りもこぞって外国株に資金を振り向けている。
今年1─7月を見ても、韓国の個人投資家は米国株を90億ドル買い越した。同期間に韓国株は16兆3000億ウォン(119億ドル)売り越され、S&P総合500種が13%上がったのに韓国総合株価指数は1.3%下落した。
韓国株は1─7月に外国人投資家の買い越しが過去最高の27兆ウォンに達したものの、1日当たりの売買高平均に占める外国人の比率は27%と、国内個人投資家の54%よりもずっと低い。
<政府の取り組みに逆風>
このような個人投資家の外国株志向は、国内株のバリュエーション引き上げを目指す尹錫悦大統領の政権にとって好ましくない。
しかし先週米国株と国内株でおよそ1億ウォン(7万3012ドル)を失ったというオー・ジョンミンさん(42)は「適切な時期に」米国株を買い増す計画を立てている。「米企業で目にする配当や株主還元のトレンドを韓国で見つけ出すのは全く難しい」という。
ノーさんやオーさんのほかにロイターがアナリストや政府高官にも話を聞いたところでは、高齢化が進む国民がより高いリターンを求める中で、外国への資金流出は止まらないとの見通しが示された。
韓国政府は今年2月、日本の資本市場改革と似た「企業価値向上プログラム」を提案し、個人投資家への税制優遇などを盛り込んだ。
ただ多くのアナリストは、韓国特有の「財閥(チェボル)」の不透明な企業統治構造、つまり経営支配権を握る一族が次世代に低い市場価値で持ち株を譲り渡す仕組みがあるため、プログラムの効果は限られるとみている。
モンドリアン・インベストメント・パートナーズのアナリストチームはノートに「日本では証券取引所が企業価値向上を単に要請すると十分に改革が促されたように見られたが、韓国は政府の説得だけで少なくともチェボルに効果があるのかどうかは疑わしい」と記した。
そして韓国の個人投資家は、米国株のさらなる値上がりに賭けている。トス・セキュリティーズのスンジョン・キム最高経営責任者(CEO)は「投資家として長い目で考えるなら、米国市場を選ぶべきであるのは間違いない」と述べた。
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