- 2024/08/14 掲載
情報BOX:人民元キャリートレードとは、円との違いは
[上海/香港 13日 ロイター] - 円キャリートレードの巻き戻しに伴う世界的な株価の急落を機に、人民元に注目が集まっている。人民元も低金利の資金調達通貨として幅広く使われているためだ。
8月に入り人民元の対ドル相場は2%上昇したが、トレーダーの話では人民元キャリートレードは特異で、早期に巻き戻される公算は小さい。
<人民元キャリートレードとは>
通常のキャリートレードでは、投資家は円やスイスフランといった低金利通貨で資金を借り入れ、高利回りの資産に投資する。投資先は大半が通貨だが、株式の信用取引に資金が使われることもある。
人民元キャリートレードも同様の仕組みだが、人民元は完全な兌換性がないため、制限がある。
人民元キャリートレードの大部分を占めるのは、ドルで現金をため込んでいる中国の輸出企業による取引。次に、外国人が人民元を借りて中国本土に投資するパターンがある。第3のパターンは、低金利のオフショア人民元を使ってドルや他通貨建ての債券に投資する取引だ。
<変遷>
2022年まで何年間も、中国の金利は米国よりも高かった。22年に米連邦準備理事会(FRB)が積極的な金融引き締めを開始した一方、中国は低迷する経済を支援するため金融緩和スタンスに移行した。
ドルの金利が大きく上昇すると、中国の輸出企業はドル建て収入をドルのまま維持すると、年間で5%もの金利を稼げることに気付いた。当時、人民元建て預金の金利は皆無に等しかった。
輸入企業によるドル資金の抱え込みは、22年4月以来の人民元安の主因だ。
人民元の下落により、外国人は人民元・ドルのオンショアのスワップ取引により大幅なスプレッドを稼げるようになった。外国の投資家は、低金利のオフショア人民元を借り、ドルなどの通貨に転換して株式や債券に投資することが可能となった。投資家は資産のリターンに加え、人民元安によって為替差益も得られるようになった。
<規模>
アナリストによると、人民元キャリートレードの規模を推計するのは困難だ。ただ、円の方が流動性が高く世界的に開かれた通貨であるため、円キャリートレードよりも規模は小さい。
マッコーリーの推計では、中国の輸出企業と多国籍企業は22年以降、5000億ドル超の外貨を積み上げた。
外国企業も中国での利益を同国に再投資するよりも海外に送金する方が多かった。
一方で公式統計によると、海外勢によるオンショア人民元債の保有高は22年末以降で9200億元(1281億2000万ドル)ほど増え、今年6月に過去最高を更新した。これは「リバース人民元キャリートレード」が行われている証拠だ。これは外国人投資家が為替ヘッジ付きのスワップ取引を介してドルを貸し出して人民元を借りた上で、人民元建て債に投資することで利益を稼ぐ取引を指す。
<巻き戻しはあるか>
日銀の利上げを受けた円キャリートレードの巻き戻しにより、人民元相場は上昇し、人民元キャリートレードの有効性を巡り疑念が生じた。
UBSは、人民元と円には相関性があるため、オフショア人民元の売りポジションは減少したとしている。
中国の金利が上昇してドルと人民元の金利が収斂した場合、オンショアのキャリートレードは巻き戻される可能性がある。
マッコーリーのチーフエコノミスト、ラリー・フー氏は「中国の内需が好転すれば、人民元キャリートレードは巻き戻されるだろう」と予想。「その時期は、景気刺激策が本格化するタイミング次第だ」と語った。
関連コンテンツ
PR
PR
PR