- 2024/08/07 掲載
インタビュー:長い目線で投資を、相場の過度な変動起こりうる=井藤・金融庁長官
[東京 7日 ロイター] - 金融庁の井藤英樹長官はロイターとのインタビューで、新NISA(少額投資非課税制度)導入後初めて相場が大きく崩れ、個人投資家の間で動揺が広がったことについて、長期的な視点で運用することの重要性を訴えた。金融機関にも投資家の不安を払しょくするよう対応を求めた。
井藤氏は「短期的・過度な相場の変動はどうしても市場においては起こりうる」とした上で、「家計の投資行動としては、一定の長い目線で対応し投資というものに向き合っていただきたい」と述べた。
政府は「貯蓄から投資へ」を掲げ、1月には投資で得られた利益が非課税になるNISAを拡充した。年初から株価が上昇したことも手伝い、日銀資金循環統計によると、家計の金融資産残高は3月末時点で2199兆円と前年同期から7.1%増加。投資信託が同31.5%増の119兆円、株式・出資金が同33.7%増の313兆円伸びた。
しかし、米国の景気後退懸念などから8月1日から週明け5日までの3日間で日経平均株価が8000円近く暴落。新NISAをきっかけに新たな投資家が増える中、商品を販売した金融機関に相談が殺到した。
インターネット証券最大手のSBI証券のウェブサイトはつながりにくくなり、利用者からの電話の問い合わせが5割増え、コールセンターの人員を増強した。広報担当者によると、売りたいという相談だけでなく、下がったところで買いたいという相談もあったという。
井藤氏は投資家の不安に理解を示した上で、相場の変動時に冷静な対応を呼び掛けた。「長期で積み立て投資を重ねていく分には、相場の変動は収れんされてならされていく」、「足元評価損が出ることは決してハッピーなことではないが、下落したベースの価格で今後の積み立てが行える」などと語った。
また、利用者と直接やり取りする金融機関に対して、「特にNISAを始めたばかりで不安になる顧客に長期・積立・分散投資のメリットやヒストリカルなデータを示す」などの丁寧な対応を求めた。
井藤氏は、新NISA導入後初めて相場が混乱したことを受け、投資や運用、市場について学ぶ「金融経済教育」の場を拡充することの意義も改めて強調した。日銀内に事務局がある金融広報中央委員会の調査によると「金融教育を受けたと認識している人」の割合は7・1%にとどまる。政府はこれを28年度末までに20%に引き上げる方針で、4月には金融経済教育推進機構を設立した。
7月に長官に就任した井藤氏は、企画市場局長を務め、政府が進める「資産運用立国」の実現に向けた改正金融商品取引法の成立に携わった。新NISAの導入も手掛けた。
*インタビューは5日に実施しました。
(浦中美穂 取材協力:竹中清 編集:久保信博)
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