- 2024/08/06 掲載
アングル:10年国債入札が不調、日銀タカ派姿勢に疑心暗鬼 副総裁発言が鍵に
[東京 6日 ロイター] - 財務省が6日に実施した10年利付国債入札が不調な結果となり、円債市場では、金融市場の急変動を受けても日銀がタカ派スタンスを維持するか見極めたい投資家が応札を手控えたと指摘する声も聞かれる。7日には内田真一副総裁の発言機会が控えており、市場の注目度が高まりそうだ。
この日の入札は、テールの長さが2003年以来を記録する不調な結果となった。SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは「市場がボラタイルで金利の落ち着きどころが見えない中での入札で、参加を見送った人も多かったのではないか」とみる。
先週末の弱い米雇用統計をきっかけに、金融市場では連邦準備理事会(FRB)が大幅な利下げに動くとの織り込みから「株売り・円買い・債券買い(金利低下)」が進行。日本では日銀の利上げ継続シナリオに暗雲が漂い始めたとの見方も出て、週明け5日の円債市場では、国債が買われて長期金利(新発10年国債利回り)は0.7%台半ばと4カ月ぶり水準まで急低下した。
6日は一転、反動売りが広がり、金利が上昇。5日の米ISM非製造業景気指数が堅調で行き過ぎた米景気後退懸念が和らいだことから、米国はリセッションに陥らず、日銀も利上げを続けられるとの見方が優勢になった。
日銀の利上げ継続を見込む投資家にしてみれば0.8%の長期金利は低いとして、金利先高観から「今買う必要はない」との判断で応札を手控えた可能性もあるとSMBC日興証券の田氏はみている。
<市場は日銀副総裁発言に注目>
もっとも、OIS市場の利上げ織り込みからは、株安でいったん低下した日銀の追加利上げ観測は回復にまで至っていないと三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介シニア債券ストラテジストは指摘する。「市場の政策金利期待の代理変数」とされるOISフォワード1カ月物の1年先レートは日銀会合が終了した先週31日には0.6%をうかがう水準だったが、金利が急低下した5日も、急反発した6日も0.4%付近で横ばい推移した。米国の景気後退懸念に端を発した過度な金利先安観は薄らいだとはいえ、日銀の段階的な利上げの織り込みは剥落したままになっている、との見立てだ。
「市場は昨日までの株安を受けて、日銀がどういうトーンの発信を行うか、この相場変動をもってしても段階的な利上げを行う方針を保ち続けることができるかに疑心暗鬼だ」と鶴田氏は指摘し、7日に予定される日銀の内田副総裁の金融経済懇談会での発言機会がカギになるとの見方を示した。
投資家は今回の相場波乱で日銀の利上げ継続シナリオに変更があるか見極めようとしており、ボラタイルな円債市場が落ち着きを取り戻すにはまだ時間がかかりそうだ。岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは「引き続き正常化を進めるとのトーンを前面に出し過ぎると市場に冷水を浴びせかねないし、慎重さが伝われば足もとの金利低下を肯定することにもなる。そのあたりの温度感を探りたい」と話している。
(植竹知子 編集:平田紀之)
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