- 2024/08/05 掲載
アングル:急激な円安修正、企業収益押し上げ期待収縮 コスト削減など急務に
[東京 5日 ロイター] - 4―6月期に企業業績を大きく押し上げた円安が急激な基調転換に襲われている。一時1ドル=141円台と、多くの企業が想定為替レートとする水準を下抜けてきたことで、為替による収益底上げは期待できない状況となっている。こうした為替水準が続けば、コスト削減などによる為替影響の吸収も求められることになる。
トヨタ自動車が1日に発表した4―6月期決算(国際会計基準)では、「型式不正」による国内生産減の影響を円安が補い、営業利益は前年同期比17%増の1兆3084億円と過去最高となった。23年4─6月期の1ドル=137円に対し24年4─6月期は156円となり、為替円安による押し上げは3700億円にのぼった。
トヨタの通期想定為替レートは1ドル=145円。5日の東京為替市場では一時1ドル=141円台まで円高・ドル安になっており、このままの相場水準が続けば、第2四半期以降の為替による収益底上げ効果は期待できない。
麻布リサーチのMike Allen氏は「ほとんどの企業が145円を予測のベースとしていた。市場は企業がガイダンスを上回ることを期待していたかもしれないが、今ではそれを期待する理由はかなり薄れている」と指摘する。
一時1ドル161円台まで進んだ円安を受け、現在行われている3月期決算企業の決算発表では今期の想定為替レートを円安方向に見直す企業が多くみられた。三菱電機は7―9月期以降の為替を150円に、日産自動車は155円と円安方向に見直した。
キヤノンは7月25日に24年12月期通期業績予想を上方修正した。売り上げ増に加え、為替前提を円安方向に見直したことも寄与した。日本の貿易赤字や日本が連続利上げできないことなどから「一時的に調整があっても年内には大きな是正は起こらない」(田中稔三・最高財務責任者)との見通しから、前提為替レートは1ドル=153.87円と円安方向へと見直した。キヤノンでは、今後、円高水準が続くとなれば、さらなるコストダウンや経費削減により影響を極力吸収していくとしているが、1円の変動で売上高に70億円、営業利益で22億円の影響を受ける。
野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト・木内登英氏は「日本の円高・株安の流れを食い止めるには、米国の景気悪化懸念が和らぐことが必要だ。仮に米国経済が景気後退に向かうケースでは、円安・株高バブルの崩壊過程がさらに進み、金融市場の動揺はなお続くことになる」とみている。
為替を含む金融市場の急変を受けた5日に決算発表したSUBARUの水間克之・最高財務責任者(CFO)は「非常に見通しが立てにくい」としたうえで「円高になってもしっかり利益を上げられるような実力をつけるという対応を今している」と述べ、体質改善に取り組んでいると強調した。
為替の直接的な影響は軽微なJFEホールディングスでも「輸入鋼材の価格への影響や輸出企業の業績への影響など、今後精査したい」(寺畑雅史副社長)とし、間接的な影響も含めて警戒する声が聞かれた。
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