- 2024/07/30 掲載
アングル:解消に向かう米国債逆イールド、今回は景気後退指標として有効か
[ニューヨーク 29日 ロイター] - 景気後退のシグナルとされる米国債の長短利回り逆転(逆イールド)は過去最長かつ最大となっているが、解消が近づいている可能性がある。
ドイツ銀行によると、70年の歴史で起きた10回の景気後退のうち9回で、この逆イールド現象が必ず先行していた。しかし今、米経済は長い痛みを回避できるとの楽観論が広がっており、景気後退の予兆としての逆イールドの信頼性を疑問視する声も出ている。
オザイクのチーフ市場ストラテジスト、フィル・ブランカート氏は「現段階で景気後退の様相は見えない。今回は非常に異なる局面ではないかと思う」と語った。
昨年、複数の米大手金融機関は借り入れコスト上昇を理由に景気後退が発生すると予想したにもかかわらず、経済は底堅さを維持。ロイターが今月実施したエコノミスト調査では、向こう2年間で景気拡大が続くとの見通しが示された。今年の債券ストラテジストに対する調査でも、イールドカーブはもはや景気後退のシグナルとして信が置けないとの意見が多数派を占めた。
LPLファイナンシャルのチーフ債券ストラテジスト、ローレンス・ギラム氏は「データが示唆するほど完璧な指標ではないのかもしれない。目下、逆イールドは解消に向かっているが、それは景気後退のせいではなく、単に正常な右肩上がりのカーブに戻りつつあるだけだ」と述べた。
2年債と10年債の逆イールドは2022年7月序盤から続いており、その期間は1978年の最長記録を更新している。ただ逆イールドの幅は縮小し、24日にはマイナス14.5ベーシスポイント(bp)と発生以来で最小となったことが、トレードウェブのデータから分かる。
景気が減速すると市場は米連邦準備理事会(FRB)が利下げに動くと予想し、短期ゾーンの利回り低下幅が長期ゾーンよりも大きくなるので、イールドカーブは右肩上がりになるのが一般的。足元でも、景気が緩やかに鈍化する兆しが出ている中で、逆イールドが解消に向かってもおかしくない。
それでも一部の市場関係者は、近年のイールドカーブの歴史からは、まだ景気後退の可能性が残されていることがうかがえると警告する。
ドイツ銀が調べた全てのケースでは、景気後退が始まる前にイールドカーブは右肩上がりに戻っている。
2020年、2007─09年、2001年、1990─91年という直近4回の景気後退を見ると、2─10年のイールドカーブは景気後退発生までに右肩上がりに転じた。逆イールド解消から景気後退の開始までの時間差は、直近4回の場合約2カ月から半年までばらつきがある。
ペン・ミューチュアル・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジョージ・チポローニ氏は「われわれは重要なポイントに立っている。なぜならイールドカーブは右肩上がりの方向に進みつつあり、それは通常何らかのトラブルに突入する局面だからだ」と述べた。
デューク大学のキャンベル・ハーベイ教授によると、2─10年のほかに注目される3カ月─10年の期間でも直近4回の景気後退開始前に逆イールドは解消された。ハーベイ氏は、イールドカーブが景気先行指標になるとの考えを唱えた先駆者だ。
3カ月─10年は22年11月に逆イールド化し、26日時点でもなおマイナス109bpと幅が大きい。一方、このゾーンの逆イールド解消から景気後退開始までの最長時間差は22カ月なので、まだ逆イールドが景気後退シグナルとして間違っていると切り捨てるには早過ぎるという。
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