- 2024/07/05 掲載
アングル:米株高の裾野拡大に期待感、来週以降の決算発表に注目
[ニューヨーク 5日 ロイター] - 米株式市場では株高の裾野が巨大テック「マグニフィセント・セブン(M7)」以外にも広がるとの期待が浮上しており、来週以降の決算発表で増益率がM7に追いつけるかに注目が集まっている。
S&P500指数は今年16%上昇しているが、株高の原動力となっているのは人工知能(AI)ブームの追い風に乗っている一握りの超大型株だ。
BofAグローバル・リサーチによると、上半期にS&P500指数をアウトパフォームした構成銘柄は全体のわずか24%で、半期ベースでは1986年以降で3番目に低い水準となった。
また、超大型株の株価変動による影響を受けにくいS&P500均等加重指数は、今年の上昇率が約4%にとどまっている。構成銘柄の約4割が今月2日時点で年初来マイナス圏にある。
市場では来週から第2・四半期決算の発表が始まる。12日には金融大手のJPモルガンやシティグループが決算発表を予定。M7以外の企業が増益率でM7に追いつけるかに注目が集まる。
M7にはエヌビディア、マイクロソフト、アップル、アルファベット、アマゾン、メタ・プラットフォームズ、テスラが含まれる。
一部の市場関係者の間では下半期に物色が広がるとの期待が浮上。米経済のソフトランディング(軟着陸)で業績が上向く企業が増えるとの見方が背景だ。
B・ライリー・ウェルスのチーフ・マーケット・ストラテジスト、アート・ホーガン氏は、第2・四半期の決算発表を受けて、物色が広がる可能性が十分にあると指摘。
同氏によると、S&P500指数の予想株価収益率(予想PER)は約21倍だが、時価総額上位10銘柄を除けば16.5倍に下がる。
S&P500指数を構成する11セクターのうち、今年S&P500指数をアウトパフォームしているのは、M7の大半が含まれる情報技術セクターと通信サービスセクターのみ。これも株高の裾野の狭さを物語っている。
LSEGのシニアリサーチアナリスト、タジンダー・ディロン氏によると、M7の第1・四半期の増益率は前年同期比51.8%。M7を除くS&P500指数構成銘柄の増益率は1.3%だった。
LSEGによると、増益率の差は縮小に向かうとみられている。第2・四半期の増益率予想はM7が29.7%、M7以外が7.2%だ。
ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュート(WFII)のグローバル株式ストラテジスト、クリス・ハバーランド氏は、増益率の差が縮小すれば今後数四半期で株高の裾野が広がる可能性があると指摘。
WFIIは、情報技術、通信サービスセクターへの投資を減らし、割安感のあるエネルギー、ヘルスケア、工業、素材セクターに買いを入れる戦略を提案している。
年後半は増益率の差がさらに縮小すると見込まれている。M7の増益率の予想は第3・四半期が17.4%、第4・四半期が18.3%。M7以外はそれぞれ6.8%、13.9%だ。
ノーザン・トラスト・ウェルス・マネジメントのケイティ・ニクソン最高投資責任者は「今年はS&Pのほぼ全てのセクターが増益を記録すると予想している」と述べた。
ただ、増益率の差が縮小するとの見方を疑問視する向きもある。AIが依然として非常に大きなテーマになっているためだ。
ダコタ・ウェルス・マネジメントのシニア・ポートフォリオ・マネジャー、ロバート・パブリク氏は、個人消費の低迷やインフレの高止まりなどを背景に増益率が予想に達しないのではないかと指摘している。
ただ、来週9日にはパウエル連邦準備理事会(FRB)の議会証言、11日には消費者物価指数(CPI)の発表が予定されており、経済状況や利下げ時期の見通しが一段と明らかになれば、株高の裾野が広がることも考えられる。
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