• 2024/05/29 掲載

上昇続く長期金利、「常態」とは判断できず=安達日銀審議委員

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Takahiko Wada

[熊本市 29日 ロイター] - 日銀の安達誠司審議委員は29日、熊本県金融経済懇談会後の記者会見で、上昇が続く長期金利について「常態になっているとは判断できない」とし、コメントを控えた。国債買い入れの減額はまずは金融市場局の裁量で行い、その後は別途考えていくとして「早くした方がいいとか遅くした方がいいとかはない」と話した。

円安によって基調的な物価上昇率や中長期の予想インフレ率に影響が出てくれば政策対応を考えると述べる一方で、自身の物価見通しは4月の展望リポート時点と変わっていないと明言した。

<国債の減額ありきで長期金利が急騰すれば「本末転倒」>

10年金利は足元で上昇基調にあり、29日には1.075%と2011年12月以来、約12年半ぶりの高水準を付けた。市場では、日銀の国債買い入れの本格的な減額を巡る不透明感が金利上昇の一因とされている。

安達委員は13日の国債買い入れ減額について、3月に金融市場局が示した買い入れ額のレンジ内の対応であり「何かしらの政策意図をもって行ったわけではない」と説明。理想的には完全に市場に金利形成を任せることだが、現状は日銀が減額すると次の減額を期待する状況になっていくとし「予見性を持って減額していくのはまだ今の段階では早いのではないか」と述べた。国債買い入れの「減額が先にありきで、長期金利が高騰しずぎたりすると本末転倒だ」とも指摘した。

安達委員は昨年11月、愛媛県松山市で行った懇談会で、長期金利は「金融政策を行う上で、非常に高い情報的価値を有する指標だ」と述べた。29日の会見では、長期金利の水準をより注意深くモニタリングしていくと語った。

<物価見通し、4月時点と変わらず>

安達委員は午前のあいさつで、為替について、過度な円安の状況が長期化して物価の動きに影響が生じ、物価目標の実現に影響を与えると予想される場合には金融政策による対応も選択肢の一つになると述べた。

会見では、為替の水準感についてはコメントを控えるとした上で「今の状況が長期化すれば、(影響は)当然出てくる」との見方を示した。

統計や企業へのヒアリング、日銀短観などで影響をみながら、基調的な物価上昇率や中長期の予想インフレ率に影響が出てくれば政策対応を考えると述べたが「現時点で影響ある、ないの話はできない」とした。

自身の物価見通しは4月の展望リポート時点と「変わりない」と言明。現状は毎月の指標でインフレ率が反転するか確認している状況だと説明した。

安達委員は政策金利について、持続的・安定的な物価上昇が「100%実現」するまで0.1%を維持し、実現したら急に2%に引き上げるのは「経済を傷めてしまう」と話し、景気の状況などを見ながら非常に緩やかなペースで段階的に金利を調整していくのが最も適切と話した。今のところ「100%実現」は見通せない状況であり、追加利上げについて「具体的な政策論をするのはまだ早い」と述べた。

ターミナルレート(利上げの到達点)については「まだ全然イメージがない」と話した。物価2%目標が実現した際の潜在成長率が現状のような低い水準なのか、デフレ以前の1990年代前半のような高い潜在成長率に回帰するのか整理しきれていないことを理由に挙げた。

<ETFの取り扱い、「長い時間かけて検討」>

日銀が保有する上場投資信託(ETF)の取り扱いについては「長い時間をかけて、いろいろな識者の意見も聞きながら考えていくことだろう」と述べた。国会では、少子化対策でETFの分配金収入の活用などの議論が展開されたが、安達委員は「いろいろな政策マターがある中、できる範囲で協力するということだと思う」と話した。

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