- 2024/05/27 掲載
焦点:人民銀の債券取引、政策手段として機能発揮に長い時間
[北京/上海 27日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)はこのほど、金融政策の伝達メカニズムを改善するため国債の売買を政策手段に加えると表明した。ただ、政策手段として機能するには比較的長い時間がかかるとの指摘がある。
中国金融セクターにおける低リスク資産の不足が人民銀行の金融政策効率化に向けた取り組みを妨げている。
人民銀行の債券取引は、欧米諸国での量的緩和策とは異なり、流動性を高めてボラティリティーを低下させることで債券市場深化につながると期待されている。また、より多くの発行体と投資家を引き付け、非効率的な銀行融資への企業依存を減らすのに役立つと見込まれる。
ただ、問題もある。中央政府はここ数十年間、リスクの高い地方政府発行体に投資プロジェクトの資金調達を任せてきた。そのため、地方政府の債務が持続不可能な状態になる一方、中央政府のバランスシートは膨らんでいない。
この結果、活発な債券市場を構築するために必要な信頼できるベンチマークが存在しない。これは、中国経済の拡大に向けた人民銀行の戦略強化計画が、短期計画というより中期目標に基づきゆっくりとしたペースで進むことを意味する。
ある当局者は「国債取引を主要な市場操作方法として活用すれば、人民銀行の金融政策の枠組み、特に金利の伝達が大きく改善される」と述べた。その上で、「しかし、条件はまだ整っていない。資産不足に陥っている」と指摘した。
中国債券市場のゆがみを示す直近の事例は、先週実施された今年初の超長期国債発行で顕著になった。流動性の低い取引所で価格が20%急騰し、利回りが中銀の政策金利を下回り、取引停止を引き起こした。
<非効率的な融資>
資金の流れの大半を国営銀行が管理する中、資本の不適切な配分が長年の懸念事項となっており、利下げや流動性供給でデフレ懸念を和らげるのに苦慮している人民銀行にとって頭痛の種となっている。
アナリストは、プロジェクトの質に関係なく、 生産能力の高い国有企業に低利融資が流れ続けていると指摘する。一方で、事業拡大を望む民間企業は、銀行がリスクが高いと見なし、融資条件は厳しくなる。
また中銀は、巨額の資金が実体経済に流れず、金融システム内に滞留していると指摘する。
ロジウム・グループのアナリストは「中国の企業が実際にやっていることは、2─3%の低金利で銀行融資を受け、その資金を銀行の資産運用商品や長期定期預金などの商品に再投資することだ」と指摘する。
チャイナボンドのデータによると、中国企業は米国に次ぐ世界第2位の債券発行国であり、発行額は約106兆元(GDP比84%)に達し、このうち約30兆元が国債となっている。
しかし、債券発行は主に地方政府とその資金調達機関、政策銀行が担っており、購入者は主に満期まで保有する傾向のある銀行である。
実質的にこれは銀行融資とさほど変わらない。市場関係者によると、流通市場で活発に取引されているのはほんの一部だという。
売買高が低水準であるため、これらを利用して流通市場の流動性を高め、利回り曲線をより適切に管理することは難しい。売却は利回りの急上昇につながる恐れがあり、中国の5%前後の成長率目標の達成が困難と予想される中、金融状況が引き締まる可能性がある。
買い入れにより利回りが低下し過ぎる可能性もあり、すでにマイナス200ベーシスポイント(bp)となっている米国債との差がさらに拡大して資本流出の懸念が高まり、人民元に圧力がかかる。
人民銀行が今後進むべき道の一つは、さらに国債が発行されるのを待ち、中銀の動きを小幅にとどめ、国債購入のタイミングを慎重に選択して中銀のマネタイゼーション(財政赤字の穴埋め)を招かないようにすることだろう。
スタンダード・チャータード銀行のチーフエコノミスト、Shuang Ding氏は、人民銀行の債券取引が「流動性供給ツールとして機能する」には「比較的長い時間」がかかるとの見方を示した。
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