- 2024/05/18 掲載
アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件売れず苦戦
[北京/香港 16日 ロイター] - 中国当局は低迷する不動産市場のてこ入れ策として、市民に新しい住宅への買い換えを促すキャンペーンに乗り出し、関心も集まっている。しかし中古住宅の売れ行きが悪く、政策推進の大きな壁になっている。
キャンペーンは政府が先月打ち出したもので、全国の都市で増える新築アパートの売れ残り在庫を一掃するとともに、経営難にあえぐデベロッパーにキャッシュを提供する狙いがある。中国指数研究院の調べでは「以旧換新(買い換え)」制度を導入した都市は5月6日時点で50余りに上った。
しかしアナリストや不動産代理店、デベロッパーによると、中古住宅購入への関心は非常に限定的で、政策の成功は疑問視されている。従って中国の不動産市況は今後も悪化が続きそうだ。
上海で不動産代理店業を営むチン・イー氏は「このキャンペーンへの問い合わせはいくらかあるが、今のところ一件も成約していない。最大の問題は中古物件の売却だ」と語った。
中国当局は2022年以来、利下げや頭金比率の引き下げなど、次々と不動産市場の支援策を打ち出してきたが、不発に終わっている。
新旧いずれの不動産でも需要が減っており、特に小規模な都市でその傾向が顕著だ。住宅購入を検討する人々は、価格がさらに下がったり、デベロッパーがプロジェクトを完成できなかったりする可能性を懸念している。
新旧ともに、住宅の売り出し件数も増えている。
最新の公式データによると、1─3月に売り出された新築住宅の総床面積は3億9500万平米と、前年同期比で24%増えた。一方、同期に売れた新築住宅は1億8942万平米と、前年同期比28%減少している。
<崖から急落>
Zhuge Real Estate Data Research Centreが14都市を調査したところ、4月は中古住宅の売り出し件数が成約件数の20倍に上った。深センでは売り出し件数が前年同月比294%、上海では39%、それぞれ増えている。
その上、未完工の新築アパートも中国全土に数千万軒ある。
GDDCEリサーチ・インスティテュート(上海)のシニアアナリスト、マー・ホン氏は「販売は崖から転げ落ちている。あえて住宅を買おうという人はほとんどいない」と語る。「不動産安定化基金を設けるなど、もっと革新的な手段を使わなければ市況の悪化は続きそうだ」と述べ、買い換えキャンペーンの効果は限られると予想した。
中国の家庭の約96%は既に、少なくとも1つ住宅を所有している。市況が悪化する前の数十年間、中国市民はアパートを最も安全な貯蓄手段と見なしており、特にモダンな新築アパートがその対象となっていた。
買い換えキャンペーンに参加している都市の大半は、新築アパートの購入者に手付金を入れてもらった上で、数カ月たっても既存住宅が売れなければ手付金を全額返すことにしている。成約した場合には税率や手数料の引き下げも提供している。
しかし深センの不動産代理店業者は、十数人から手付金をもらっているが既存の住宅が「売れた形跡はない」と語った。
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