- 2024/03/25 掲載
アングル:米利下げ、バイデン氏の追い風になるか トランプ氏が批判も
[ワシントン 25日 ロイター] - 米大統領選で連邦準備理事会(FRB)の利下げがバイデン大統領の追い風になる可能性がある。
世論調査では高インフレや住居費の高騰を背景にバイデン政権の経済運営に対する批判が出ているが、利下げで有権者の心理が変われば、FRBが大統領選に少なからぬ影響を及ぼすことになる。
また、トランプ前大統領をはじめ、共和党からはFRBがバイデン陣営に肩入れしているとの批判が出るとみられる。実際、トランプ氏は先月のFOXビジネスとのインタビューで「(パウエルFRB議長は)恐らく民主党を助けるようなことをするだろう。もし利下げすればだ」とけん制した。
消費者心理に金利が大きな影響を及ぼすことを踏まえれば、トランプ氏の不安やバイデン氏の期待はもっともだ。
バイデン陣営の世論調査担当者セリンダ・レイク氏は「利下げは国民に絶大な人気がある。大統領選に注目が集まる中、経済への信頼醸成に大きく寄与するだろう」と語った。
<タイミング遅過ぎるとの見方も>
世論調査によると、有権者は経済に重大な関心を持っているが、FRBは景気拡大、低失業率、インフレ鈍化、借り入れコスト低下を予測。11月の大統領選に向け、バイデン氏にとってはかなりバラ色のシナリオといえる。
市場は現在、6月中旬と9月中旬の利下げを予想。利下げが決まれば、バイデン氏はインフレが最悪期を脱した証拠だと指摘する可能性があり、有権者の経済に対する見方が変わることも考えられる。
利下げは住宅ローン金利、自動車ローン金利、中小企業向け融資金利の低下につながる。問題は、大統領選前に見込まれる50ベーシスポイント(bp)の利下げで有権者の心理が変わるかどうかだ。
左派系シンクタンク、グラウンドワーク・コラボラティブのリンゼイ・オーウェンズ氏は、FRBの利下げはバイデン氏の支持率を大きく引き上げるには遅すぎると指摘。「今は23年ぶりの高金利環境にあり、11月までに25bpの利下げが1回か2回あっても、住宅ローン金利が高いという現実に変わりはない」と述べた。
<バイデン氏、FRBに言及>
バイデン氏は今月、フィラデルフィア州で演説し、住居費を下げる取り組みを進めていると発言。「保証はできないが、金利はさらに下がるだろう。金利を設定するあの小さな組織が決定を下すとみられるためだ」と、FRBの利下げを予測した。
ホワイトハウスはその後、バイデン氏は経済に対する自身の見方を示しただけで、政治的に独立しているFRBに政策を提言したわけではないと説明。選挙戦でFRBの政策を取り上げる際に難しい綱渡りを迫られることが浮き彫りとなった。
<バイデンフレーション>
共和党はFRBの利上げとバイデン政権の経済運営の失敗を結び付けようとしている。
共和党全国委員会のアンナ・ケリー報道官は「FRBはバイデン政権下で金利を23年ぶりの高水準に引き上げ、すでにバイデンフレーションの影響に苦しんでいる世帯の生活をさらに悪化させた」と主張した。
利下げがあれば、トランプ氏が口出しすることは間違いない。同氏はFRB理事だったパウエル氏を議長に昇格させたが、利上げを巡ってすぐにパウエル氏と衝突。同氏を悪者扱いにした過去がある。
トランプ氏は高インフレの責任がバイデン政権にあるとの主張を選挙戦で展開。先月のFOXビジネスとのインタビューでは、パウエル氏が「恐らく(誰かを)当選させるために」利下げを検討しているとまで発言した。
FRBはどのような決定を下しても、民主・共和のいずれかから批判を浴びそうだ。ノースカロライナ州立大学のマイケル・ウォルデン教授(経済学)は「パウエル氏は、どこから批判が出ようと、今後数カ月間、耳をふさぐ用意をすべきだ」と語った。
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