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- 2022/10/25 掲載
「NFTへの関心は低いが潜在能力は高い」ITR金谷氏が語る、DXによる新ビジネス創出術
ハードルがそもそも高いDXでの新ビジネス創出
DXに取り組む企業はすでに珍しくなくなった。その取り組みは、目的別に次の3つに分類される。間接業務の業務効率化やワークスタイル変革など、企業の本来業務の支援に向けた「業務改善」と、本来業務のプロセス革新に向けた「プロセスイノベーション」、本来業務での新商品や提供形態の変革により新ビジネスの創出を目指す「プロダクトイノベーション」である。金谷氏は、「これら3つのうち、業務改善はやって当たり前。差別化で力を入れるべきは、プロセス品質向上やコスト削減をもたらすプロセスイノベーションと、売り上げ拡大に直結するプロダクトイノベーションの2つです」と説明する。
この中のプロダクトイノベーション、すなわちDXによる新ビジネス創出に注力する企業は必ずしも多くない。理由として金谷氏がまず挙げるのがDX推進体制の成熟度だ。DX案件は、業務改善、プロセスイノベーション、プロダクトイノベーションの優先順になることが多い。
「投資効果や即効性の観点から業務改善を優先しがちですが、それに終始すると、DXの本義であるビジネス革新への取り組みが滞ってしまいます」(金谷氏)
加えて、VUCAの環境下におけるプロダクトイノベーションは、従来からの前提の通じにくさゆえに難度がそもそも高いこともあるという。実際に、デジタルの最先端である米国の西海岸でも、成功するスタートアップはまさに「千三つ」だ。
DXでの新ビジネス創出における明確な日米格差
ただし、産業全体を概観すると、DXによる新ビジネスは徐々に、しかし着実に芽吹きつつあるのも確かだ。鉄道会社や自動車会社による交通データなどの情報提供や、メタバースでの仮想不動産やデジタル商品販売、ライブ配信を組み合わせたフィットネスサービス、3DスキャナとARを活用した服飾品の販売などが代表だ。これらを踏まえて金谷氏は、「デジタルに無関心では産業構造の変化に取り残されてしまいます。むしろ変わらないことがリスクであると自覚し、新ビジネスに挑む気概を持つべきです」と金谷氏は訴える。
では、企業は現状、DXによる新ビジネス創出にどう取り組んでいるのか。その点について金谷氏は、日米間での明確な温度差を指摘する。情報処理推進機構の『DX白書2021』によると、製品/サービスへのDXへの適応率について、「すでに取り組んでいる」「実証実験中」との回答は米国企業で6割を突破。対して日本企業は3割に届かない。現状、デジタルビジネス競争で米国は日本の先を行き、このままではさらに水を空けられるのは確実な状況だ。
回避のために、金谷氏が必要性を訴えるのが、「DXでの新ビジネス創出の難しさを前提としたマインドシフト」だ。失敗を繰り返しつつも最終的に成功にたどり着けるよう、「チャレンジ推奨」「デザイン思考/アート思考中心」「リーンスタートアップ」「アジャイル開発」「テクノロジーの民主化」といったデジタルネイティブの価値観へシフトすることが不可欠なのだという(図1)。
臨機応変にアイデアを伸ばすテクニック
金谷氏によると、デジタルを前提にビジネス開発のやり方も変える必要があるという。従来は計画を入念に策定し、その着実な実施に重きが置かれることが多かった。だが、デジタルも相まって環境変化がさらに激しさを増す中、「前提が崩れることで計画がムダになることも珍しくありません。である以上、リーンスタートで柔軟に市場テストを開始し、臨機応変に方針を転換しつつ、うまくいくやり方を伸ばしていくのが現実的な手法となります」(金谷氏)具体的には、コンセプトワークや企画立案フェーズで発散的にアイデアを出し、検証フェーズでそれらのビジネス性を確かめる。このうち前者については、さまざまな思考法やアイデア創出・収集技法を利用可能だという。
思考法として金谷氏が紹介したのが、事実関係を整理し、理論と根拠に基づいて結論を導く「論理思考/ロジカルシンキング」、問題解決の対象をシステム体系としてとらえ、最善の解決アプローチを導く「システム思考」、顧客の行動や心理を共感的にとらえて、コンセプトをデザインする「デザイン思考」、クリエイターの主観に基づき、課題、仮説、コンセプトを発案し探求する「アート思考」などだ。
「ロジカルシンキングは当然、重要ですが、それらの客観的な考え方には思考の幅が狭まるというデメリットがあります。対して、主観的に発案するアート思考や顧客に感情移入するデザイン思考により、より幅広く斬新なアイデアを期待できるようになります」(金谷氏)
【次ページ】技術の潜在能力の大きさで今後はNFTにも注目
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