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  • 2021/12/01 掲載

2020年代のIoT市場予測をITR 金谷氏が解説、関連テクノロジーの採用動向は?

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産業界でデジタルシフトが進み、企業もIoTシステムのデータ分析や活用ニーズが増えてきた。それに伴い、IoTに関わる技術分野が多様化しており、各分野の技術開発や市場展開も活発な動きを見せている。このような状況を踏まえ、アイ・ティ・アールの金谷敏尊 氏が、テクノロジー活用の現状、IoT推進において考慮すべき課題と今後のトレンドについて説明した。今後のIoT市場を左右する「Hyper Scaler」とは。
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2017年と2020年のIoTプロジェクトの対象分野の変化(詳細は後述)

コネクテッドデバイスやデータ量が増え 「データグラビティ」が起きる

 デジタル化の対象は、交通網を制御する信号機や物流システム、スマートホーム、コンピュータ・スマートフォン、太陽光パネル、スマートシティなど、さまざまな分野に広がってきている。このような中で、データの持つ意味もより重要になり、データを生み出すモノも多様化している。

 たとえば、インターネットの進展で通信分野を中心にコネクトされたIoTデバイスが増加してきた。5年先、10年先を見据えると医療系、産業機器系、コンシューマー系、自動車・宇宙航空系まで、IoTデバイスが広がる。それに伴いIoTデバイスを管理する製品・サービスのニーズも高まると予想され、CAGRは25%ほど拡大する(2020~2025年度)と見積もられている。

 金谷氏は「コネクテッドデバイスが増加する話は10年前ぐらいからありましたが、いまなおモノにインターネットが接続されている比率は1%未満。データ活用が広がり、残りの99%が接続されると、創出価値も非常に大きくなっていくわけです」と説明する。

 コネクテッドデバイスが増加することは、データソースが増えて取得データが増えることでもある。現在、データセンターやクラウド領域のデータ量が増大するのと並行して、クラウドと対極に位置する現場のエッジ領域で生み出されるデータも増加している点が1つのトレンドになっている。金谷氏は、エッジ領域で生成されるデータの例を説明した。

「たとえばコネクテッドカーでは、交通管理や走行支援に活用する車両のプローブデータ、高精度3次元地図(HDマップ)からのデータ、光検出と測距を行うLiDARデータ、電子制御ユニット(ECU)データ、自動運転の制御データなどがあり、エッジ領域のデータが増加しています」(金谷氏)

 このようにコネクテッドデバイスが増え、データ量も増えてくると起きるのが「データグラビティ」と呼ばれる変化だ。これは大規模データの存在地点にアプリケーションが誘引される傾向のことで、重力にたとえて表現されたものだ。

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大規模データの存在地点、クラウドやデータセンタはもとより、端末やデータソース近傍にアプリケーションが誘引される傾向はデータグラビティと呼ばれる

 データグラビティの傾向は、クラウドやデータセンターだけでなく、コネクテッドカーやスマート工場/デジタルツイン、環境モニタリングなどでも同様だ。データ量が大きく処理も重いため、アプリケーションを端末やデータソース近傍に置く動きが加速する。

「これまで主流となるコンピューティング環境は外部(オフサイト)と現場近辺(オンサイト)を振り子のように行ったり来たりしています。メインフレームからクライアント/サーバ、クラウドからエッジコンピューティング、という流れも、振り子の揺り戻しの一環と見ることができます」(金谷氏)

 データ処理の観点では、第三世代のAIがデータの民主化をもたらしている。機械学習とディープラーニングにより、データの認識や推定の精度が格段に高まった。画像認識、チャットボット、推論エンジンなどが実用的になり、とりわけIoTとAIが企業に浸透し始めている。もともと両者は親和性も高い。IoTで大量データを吸い上げ、AIで認識・分析・予測するために用いられるからだ。

IoTシステムのテクノロジーの採用動向の影にコロナ禍の影響も

 続いて金谷氏は、IoTシステムに関わる技術採用の最新動向についても説明した。IoTプロジェクトを2017年と2020年で比較すると、特に投資が際立つ分野は「人のトラッキング(導線、見守りなど)」(21%)、「人の健康のモニタリング/分析」(18%)、「小売店舗のモニタリング」(12%)だという。

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2017年と2020年のIoTプロジェクトの対象分野の変化。2020年の調査では、投資が際立つ分野は少なからずコロナ禍の影響を受けているものと推測される

「これはコロナ禍の影響があると考えられます。CO2濃度から混雑度を見たり、導線をトラッキングして混雑緩和に役立てるソリューションも登場し、IoTプロジェクトの対象も徐々に変化しています」(金谷氏)

 またIoT技術スタックには、多数のレイヤーとテクノロジーがあり、複雑な技術体系や人材スキルの横断的な管理が、IoTプロジェクト特有の課題になっている。

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IoT技術スタックはアプリケーションかデバイス/機器まで、各レイヤーごとに多くのテクノロジーがあり、それらの横断的な管理が課題に挙げられる

「たとえば、アプリケーションレイヤーではアジャイル開発環境や、AI/機械学習/データ分析、BIといった技術基盤が求められています。次にIoTプラットフォームやクラウドネイティブ開発(PaaSなど)のプラットフォームレイヤーが必要です。これには、EdgecrossやFIELD systemといった産業系プラットフォームも多くあります。複数メーカーかつ独自性の強い生産設備、PLC、産業用PCなどを視野に入れなければならない点もエッジコンピューティングの課題となります」(金谷氏)

 コネクティビティのレイヤーでは、短距離無線、無線LAN、低電力消費なLPWA、高速な5Gまで、ネットワークの選択肢も多い。さらにモジュールやデバイスのレイヤーでも、センサー、アクチュエーター、ロボット、ドローン、XR、ウェアラブルと多岐にわたるコンポ―ネットがあるため、一社ですべてをカバーすることが難しい状況だ。

「しかし、これらの技術を総合的に網羅しないと、IoTのパフォーマンスを高められないため、できるだけ総合的に理解し、システム化していくことが大切です。自社で足りない部分は外部ベンダーやプロバイダーに頼り、やり繰りしていく必要があるでしょう」(金谷氏)

【次ページ】「Hyper Scaler」によるIoT関連サービスとラインアップの強化
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