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- 2021/10/04 掲載
長期エネルギー貯蔵技術(LDES)とは何か?再エネ活用に欠かせない7つの技術の動向
LDESとは? 再エネ普及率8割を目指すのに必須の理由
太陽光発電などの再生可能エネルギーは、常にその電力系統において蓄えることのできるエネルギーの量と時間による制限を受けます。これは、再生可能エネルギーの普及率を80%以上に高めるだけでなく、長期的に地球温暖化と気候変動抑制の目標を達成するために必要な脱炭素化された電力系統を実現する上で、大きな課題となっています。この問題は、長時間にわたってエネルギーを蓄えられるシステムであるLDES(Power Technology Research社では、8時間を超える放電時間を持つシステムをLDESと呼んでいます)の導入により、解決することができます。
この記事では、揚水式貯蔵、液体空気エネルギー貯蔵、圧縮空気エネルギー貯蔵、フライホイールエネルギー貯蔵、熱エネルギー貯蔵、水素エネルギー貯蔵、そしてバッテリーエネルギー貯蔵などの有望なLDESについて紹介していきます。
LDESに関する有望な7つの技術
LDESにはいくつか競合する技術があり、その中でも特に有望なものは下記のとおりです。- バッテリーエネルギー貯蔵(リチウムイオン電池)
- 水素エネルギー貯蔵
- 揚水式貯蔵(PHS)
- 液体空気エネルギー貯蔵(LAES)
- 圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)
- フライホイールエネルギー貯蔵(FES)
- 熱エネルギー貯蔵(TES)
それぞれの技術について、以下に解説をしていきます。
リチウムイオン電池
新規の多くの再生可能エネルギープロジェクトにおいて、リチウムイオン電池やその他の種類の電池が蓄電設備として選択されてきていますが、一般的には長期的な貯蔵として必要な、4時間以上にわたる最大出力による送電を、コスト効率よく提供することは不可能でした。また、今後も再生可能エネルギーを完全に補完し、持続可能なエコシステムを実現するためには、非常に高いコストが必要になることが予測されています。
水素
水素は一般に水の電気分解によって製造されますが、そこで使われる電気が再生可能エネルギーによって作られている場合は、グリーン水素と呼ばれます。水素は加圧された容器、塩(えん)や岩盤で作られた容器などに貯蔵できます。必要に応じて、水素を燃料電池(効率は最大50%-Energy Storage Associationによる)に変換するなど、コンバインドサイクル発電装置での発電用燃料として使用できます。
NextEra Energy社は、同社の既存の太陽光発電設備を利用して、20MWの電解槽で水素を製造する実証プラントを2022年に建設することを提案しています。その水素の一部は、Florida Power Light社のオキーチョビー発電所において、天然ガスの代わりに燃料としてタービンへ供給される予定です。オハイオ州のロングリッジでは、General Electric (GE)社がNew Fortress Energy社と共同で、GE社製タービンに水素と天然ガスを混合して使用するプロジェクトを進めており、ユタ州では三菱パワー社が発電所に水素燃料を組み入れるプロジェクトを複数進めています。
揚水式貯蔵(PHS)
揚水式貯蔵(PHS)は最も古いエネルギー貯蔵技術で、現在最も広く採用されています。2019年の世界のエネルギー貯蔵のうち、158GW以上をPHSが占め、米国では公共セクターによる電力貯蔵容量の94%に上り、その容量は約21.9GWに達しています (U.S. Energy Department:米国エネルギー省)。このLDES技術では電力需要が少ないときに、水を高い位置にある貯水池にくみ上げて位置エネルギーとして蓄え、電力需要が多いときには、高い位置にある貯水池の水を放出し、タービンを回して発電します。
世界の揚水発電の容量のほとんどは、EU(欧州)、日本、中国、インド、韓国そして米国が占めています。欧州は30GWと最も多い容量を保有しますが、中国が最も急速に成長しており、2020年までに40GWの容量を確保することを目標としていました。メキシコ、中南米を含む地域ではEUより多くの水力発電が導入されていますが、それらの発電所には揚水式貯蔵設備は備わっていません。
【次ページ】液体空気エネルギー貯蔵(LAES)
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