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  • 2021/09/07 掲載

日本の「完成品メーカー」が絶滅する7つの理由、モノづくり大国はなぜ凋落したのか

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福島県の南相馬に最新テクノロジーを駆使した「R&F南相馬デジタルファクトリー」を開所したロボットシステムインテグレーターのロボコム・アンド・エフエイコム(以下、R&F)。同社 代表取締役社長の天野眞也氏と、代表取締役の飯野英城は「日本の製造業は、完成品では世界に勝負を挑めなくなってしまった」と指摘する。なぜ、モノづくり大国の日本が、完成品で勝負できない国になってしまったのか。それを裏付ける理由を聞いた。
聞き手:編集部 松尾慎司 構成:編集部 渡邉聡一郎 執筆:井上猛雄

聞き手:編集部 松尾慎司 構成:編集部 渡邉聡一郎 執筆:井上猛雄

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ロボコム・アンド・エフエイコム(R&F) 代表取締役
オフィス エフエイ・コム 代表取締役社長
飯野英城 氏

理由1:研究・開発だけ強く、世界に向けて売るスキームがない

 日本は各分野での専門家が多く、先進的な研究・開発も多く行われている。医学・生理学などでもノーベル賞を取っているが、一方で飯野氏は「モノづくりは、そうした研究・開発とは断絶されている」と語る。

「新型コロナウイルスのワクチンも同様ですが、他国が先行してどんどん作れるのに、まだ日本では製品化できていません。研究レベルでワクチンを開発できても、それを世界に向けて売る販売スキームがないのです。製品化して売ることができないし、それをできる人材もいません」(飯野氏)

 そのような状況でまだ気を吐いているのが日本の自動車産業だが、それも今後は不透明な状況になるという。

「自動車産業もかなりデジタル化が遅れており、まずい状況です。ルールで縛りすぎる従来の手法が浸透しており、それを壊せる人がいません。部分最適化できても、結局既存システムが散在しているので、誰も全体最適化に手がつけられない状態になっています」(飯野氏)

 これまで超効率的な生産ラインを作ってきた日本の自動車産業だが、それが逆にあだとなり、足を引っ張っているというのだ。

 飯野氏は「私が社長を務めるオフィス エフエイ・コムのある栃木には、大手自動車会社の下請け中小企業がたくさんあります。自動車部品を作る会社は、どんどんロット数が落ち、一品ものを受注して食いつないでいる状況で、かなり悲惨な状況です」と、自動車産業を下支えしてきた中小企業の崩壊を危惧する。

 一方、天野氏は、近い将来の自動車産業において、新たなEVの台頭が国内製造業の屋台骨を揺るがすと見ている。

「EVは部品点数も少なく、iPhoneのような家電と同じ生産体制になると思います。モータと電池とコンピュータがメインとなれば、中国の独壇場です。しかもEVは性能に大差がなく、メンテナンスも簡単です。EVの進展は、本当にビジネスモデルの変革と言えるでしょう。ディーラーも従来のようなサービスが成り立ちません」(天野氏)

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ロボコム・アンド・エフエイコム(R&F) 代表取締役社長
FAプロダクツ 代表取締役会長
天野眞也 氏

理由2:ボクシングで勝てるが、K1では勝てないのが現在の日本

 2つ目の理由として挙げられたのが、いまの日本には、電気・機械・ソフトウェアといった専門家しかおらず、機械、電気、電子工学、ソフトウェアの知識・技術を融合させる「メカトロニクス」の視点で、横断的な見方ができる人材がいないということだ。

「メカトロニクスは、すべての技術が求められる“総合格闘技”です。しかし日本は特定の種目、格闘技でたとえるなら“ボクシング”といった専門分野がすごく強い一方で、総合的に技術を学ぶ機会がありません。真の意味でプロのインテグレーターがいないのです」(飯野氏)

 たとえば、現場をみると生産技術は機械系が中心、IT情報はソフト系が中心になっており、完全に役割が分かれている。そもそもこうした2つの括り(OTとIT)で製造現場が語られること自体が、その証左でもあるだろう。

「これは良くも悪くも日本の強いところなのですが、それぞれの専門性が高すぎて、研究もピンポイントでしか行われていません。採用面接でもメカトロニクスを学んでいる学生は少数です。いま日本は素材系しか強い分野がなく、完成品を組み立て、売れる製品に仕上げる仕組みがありません。結局、素材や部品メーカーばかりで、世界の下請けのような立ち位置になっています」(飯野氏)

理由3:人件費以上の投資は不可、自動化が進まない閉塞感

 中小企業の加工メーカーを例に挙げると、かつては新しい加工機を買うと「1×1mの材料を数十秒で削れる機械が入ったので、そういう仕事はありませんか?」といった営業をしても成立した。顧客のリクエストに応じた加工を施すために、専用加工機を買うような場合には、量産の見込みがあるため設備費がペイしていたのだ。「しかしロボットの導入になると話は別だ」と飯野氏は話す。

 「最新ロボットを導入したので、仕事をください」とは言えない。得意先のメーカーから「この加工が年間これだけ来ます」という前提ならば、銀行から資金を調達できるかもしれない。しかし「人手不足を補うためにロボットで自動化したいので融資してもらえませんか?」と言っても「それでもうかりますか?」という話で終わってしまうという。

 飯野氏は「せっかく高価なロボットを導入しても仕事をもらえないので、なかなか自動化に踏み切れません。銀行にも説明がつかないので、人件費1人分よりも高い設備を買えないわけです。これまで中小企業に何百案件と関わってきた自分の経験から言うと、まずお金がないので自動化できません。悩んでいることはみんな一緒なのです」と中小企業の厳しい台所事情について打ち明ける。

【次ページ】理由4~7、設備や人材、投資の問題
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