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- 2021/02/10 掲載
冗長性とは?ITにおける意味とシステム構成例、活用のメリット・デメリットを解説する
テック系編集者/メディア・コンサルタント
外資系ITベンダーでエンジニアを経てSBクリエイティブで編集記者、スマートキャンプでボクシル編集長を歴任。2019年からフリーランスで活動。メディアコンサルタントとしてメディア企画プロデュース・運営に携わる。
冗長性(冗長化)とは
・一般的な冗長性の意味冗長性の一般的な意味は、「余分な重複がある状態」「その余剰の多さ」を指す。どちらかといえばネガティブな意味合いで使われることが多い。
・IT用語としての冗長性の意味
IT用語としての冗長性は、「主に余裕のある状態や二重化などシステムの運用が継続できる状態」「負荷分散」などを表現するときに使われる。一般的な意味とは異なりポジティブな意味合いだ。システムやストレージを「冗長化」することで得られる安全性のことを「冗長性」と表現する。
「システムやストレージの冗長化」という場合、単にデータやシステムのバックアップが取られているだけではなく、障害発生時、速やかにバックアップに切り替えて運用できるシステム構成を指す。サーバや、ストレージの冗長化例は次の通り。
冗長性を保っているシステム構成は、一瞬の停止も許されない金融取引や重要インフラなどの業務システムに採用されている。
冗長性を実現する代表的なシステム構成
冗長性を実現する代表的なシステム構成は次の4つである。- アクティブ・スタンバイ構成
- アクティブ・アクティブ構成
- マスター・スレーブ構成
- マルチマスター構成
これらの構成についてもう少し詳しく見ていこう。
(1)アクティブ・スタンバイ構成
メインで稼働しているシステム(アクティブ)と待機状態のシステム(スタンバイ)を用意する構成。この構成は、さらに「ホットスタンバイ」「コールドスタンバイ」の2種類の運用方法に分けられる。
- ホットスタンバイ
スタンバイ側も常に電源を入れておき、アクティブ側と同期させる運用方法。ホットスタンバイは障害が発生してもすぐに復旧可能だが、コストがかかるというデメリットもある。 - コールドスタンバイ
スタンバイ側の電源を入れないのがコールドスタンバイという運用方法。障害発生時にアクティブ側と同期を取るため障害からの復旧に時間がかかるが、運用コストは抑えられる。
(2)アクティブ・アクティブ構成
複数のシステムをアクティブにして、平常時は負荷分散して稼働させる構成。システムを複数持つためコストがかかるが、どのシステムに障害が発生しても、システムを停止することなくそのまま稼働できる。
(3)マスター・スレーブ構成
主にDBサーバで採用される構成。すべてのサーバを制御・操作するマスターを一つ選び、残りのサーバは制御を受けるスレーブとして冗長性を持たせる。制御する側をマスター、制御される側をスレーブと呼ぶ。
通常時は、マスターのみが情報の書き込み・読み込みが可能であり、スレーブは読み込みのみで、マスターの複製を行う。マスターに障害が発生すると、残ったスレーブの中から一つがマスターとなって処理を継続する。
なおマスターは主人、スレーブは奴隷といった意味となるため、この表現を問題視してグローバルのIT企業を中心に「マスター」は「メイン」、「スレーブ」は「レプリカ」などといった言い換えが進んでいる。
(4)マルチマスター構成
マスター・スレーブ構成とは異なり、すべてのサーバがマスターとなり書き込み・読み込み可能とする構成。どのサーバに障害が発生しても、他のサーバがすぐに代替となれるため、障害復旧のタイムラグがない。
ただ、マスター・スレーブ構成はマスターのデータが正しいといえるが、マルチマスターの場合は、データの整合性を取るのが難しい。そのため、障害発生時にデータの整合性を取るための仕組みを組み込む必要がある。
冗長性を確保するサービス・機能
冗長性を確保するサービスや機能としては、主に次の3つがある。- RAID
- DRBD
- 仮想サーバやクラウドシステムの冗長化
これらのサービスや機能について解説しよう。
ただし、RAIDには「モード」があり、各モードによって必要なハードディスクの台数やコストが異なる点には注意しておきたい。代表的なモードは次の通りだ。
RAIDのモード | 特徴 |
RAID0 | ・処理は高速 ・1台故障すると全体がダメになるため耐障害性はない
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RAID1 | ・1台のハードディスクの内容をコピーして持つ「ミラーリング」 ・データを削除すると他のハードディスクでも削除されるため、データのバックアップは別に必要
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RAID5 | ・高速な処理と耐障害性を両立した方式 ・1台のハードディスク障害に対応できる
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RAID10 | ・RAID0とRAID1を組み合わせた方式 ・ハードディスクは4台必要となり、利用可能な容量は総容量の2分の1となってしまうが、高速処理と耐障害性を両立できる
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どのモードを選択するかは、利用シーンと予算によって検討しなければならない。
また、DRBD自体もオープンソースとなっており無料。そのため、導入コストを抑えられる点がDRBDの導入メリットだ。
【次ページ】冗長性を確保するメリット・デメリット
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