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  • 2021/03/26 掲載

EUデジタルサービス法とは何か? 企業に迫る「欧州委員会のプラットフォーム規制」

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GAFAのオンラインプラットフォームが個人にとっても企業活動の上でも重要な基盤となる中、プラットフォームを利用することが基本的権利を侵害したり、社会の公正な競争を阻害するなどの問題を引き起こしたりすることも増えた。欧州委員会(EC)では昨年末にEUで運営されているSNSやオンラインマーケットプレイスを含むあらゆるデジタルサービスに対して、新たな規則を提案している。この中の1つである「デジタルサービス法」を解説する。
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EUデジタル法とは何か?
(Photo/Getty Images)


EUデジタルサービス法とは何か?

 EUデジタルサービス法とは、EU域内市場の仲介サービスを適切に機能させることにより、消費者の基本的権利が保護されるオンライン環境を維持することを目的として制定された法律である。

 EUでは2000年に電子商取引指令が制定されているが、当該法律をインターネット環境やオンラインプラットフォーム環境の進化に適用させることが難しくなってきたため、当該指令を改正する形で、本法案が提案されている。

 近年デジタル化(特にオンラインプラットフォーム)が日常生活や企業活動の重要な基盤となる中で、それらが消費者の基本的権利を侵害したり、社会の公正な競争を阻害するなどの問題を引き起こしたりすることも多くなってきている。

 それらを受け、欧州委員会(EC)が2020年12月15日、EUで運営されているSNSやオンラインマーケットプレイスを含むすべてのデジタルサービスに対して、新たな規則である「デジタルサービス法」および「デジタル市場法」の適用を提案した。上記2つの提案のうち、以下ではデジタルサービス法(以降「本法案」)について解説する。

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図表1:オンラインプラットフォーム事業者の例
(出典:総務省(2019)「デジタル経済の将来像に関する調査研究」)

デジタルサービス法の背景

 先述の通り、デジタルサービス法は電子取引指令の改正版との位置づけである。電子商取引指令が制定されて以降、約20年の間にオンライン環境は大きく進化した。

 たとえば、GAFAに代表される巨大なプラットフォーマーが生まれ、利用者は情報の検索だけでなく、ニュースの閲覧・コミュニティへの参加・モノの売買などさまざまな行為を行うことができるようになった。また昨年来の新型コロナウィルスの影響により、ネット上での非対面取引の割合は国・地域を問わず加速度的に増加している。

 その結果、オンラインプラットフォームにはさまざまな形式かつ膨大なデータがアップロードされるようになった。たとえばFacebookなどの巨大なSNSの場合、1日あたり数千万回の投稿が行われ、数億枚の画像ファイルがアップロードされているという。

 当然その中には無害な情報もあれば、暴力・虐待・ポルノなどの不適切なコンテンツもある。また、2016年の米国大統領選挙などをきっかけに、フェイクニュースも問題になっている。最近ではフェイクニュースも巧妙化されており、AIを使ってあたかも本物のニュースであるような動画も出回っている。

 消費者の行動がオンライン環境に依存すればするほど、当然ではあるが、オンライン取引の場は適切であることが求められる。EUでは電子商取引指令の制定後、類似の目的で行動規範が出されたり、各加盟国が独自で各国法を制定したりしてきたが、単一市場の機能向上を目的として本法案が提示された形となる。

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図表2: 違法コンテンツ等に関する規制の一覧(EUに関わる主なものを抜粋)

デジタルサービス法に関連する主体

 本法案はオンライン環境を適切に維持するためのルールということであるので、対象としてはオンライン環境の提供者であるオンラインプラットフォーム事業者である。厳密に言えば、本法案の対象はオンラインプラットフォーム事業者より範囲の広い「仲介サービス事業者」ということであるが、本稿の説明上オンラインプラットフォーム事業者とさせていただく。

 オンラインプラットフォーム事業者は、情報の提供者かつ利用者である消費者への責務と、当局への責務を果たすことが求められている。大まかに整理すると次の図のようになる。

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図表3: デジタルサービス法の関連主体

 消費者に対する事業者の責務としては、自社が消費者より受け取った情報をどのように処理し表示させているのかを明瞭な方法で開示し、それに疑義がある場合に備えて苦情を受け付ける窓口を設置することが求められる。また、当局に対する責務としては、コンテンツの取り扱いについての定期的な報告や外部監査への対応などが挙げられる。

【次ページ】デジタルサービス法の要件
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