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  • 2019/07/29 掲載

なぜ「痴漢」は日本でのみ顕著なのか? 撲滅に向け「誘発する社会風土」を考える

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もはや目を引くニュースですらなくなっているが、JR山手線の電車内で痴漢をしたとして、国土交通省のキャリア公務員が逮捕された。今年5月にはツイッター上で、痴漢に対する防衛策として安全ピンを持ち歩く話が拡散し、一連の動きを受けてシヤチハタが「痴漢対策用スタンプ」の開発を表明するなど、痴漢対策はビジネスの世界にまで拡大している。痴漢冤罪による被害も無視できない状況になっている現状を考えると、社会全体での解決が急務である。
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おびただしい数の性犯罪が日常的に発生する日本は、極めて特殊な国だ
(Photo/Getty Images)

シヤチハタが痴漢撃退スタンプ開発を表明したが……

 2017年における東京都内の痴漢発生件数(迷惑防止条例違反)は約1750件だが、実際にはその数倍、あるいは数十倍の被害が発生しているとも言われる。

 満員電車で通勤する女性にとっては深刻な状況であり、そうであればこそ、安全ピンを持ち歩く話がネットで拡散したわけだが、議論は微妙な方向に進んでいる。一連のネット上での反応を受けて、文具大手のシヤチハタが「痴漢撃退用スタンプ」の開発を表明したのである。


 詳細は明らかではないが、同社の定番商品であるインク浸透印(いわゆるシヤチハタ印)の技術を応用し、痴漢の加害者と思われる人物をインクなどでマーキングするものと思われる。

 店舗に押し入った強盗犯などにインクの入ったボールをぶつけてマーキングするカラーボールと呼ばれる防犯グッズが存在しているが、似たようなコンセプトと考えてよいだろう。

 安全ピンで痴漢に対して反撃するというのは、下手をすると自身も傷害罪に問われる可能性があり、当然のことながら、社会的にあまり推奨されるものではない。

 痴漢撃退スタンプはこうした事情を考慮に入れた製品であり、ネット上では女性を中心に賛同の声が大きいようだが、一部の専門家からは冤罪リスクを指摘する声も上がっている。

 とはいえ、シヤチハタに悪気はなく、ニーズを元にしたアイデア商品という位置付けと思われるが、同社の公式ツイッター上で「今現在Twitterで話題になっている社会問題の件ですが、早期に対応ができるようにします。ジョークではなく、本気です」と社員がツイートするなど、冤罪の誘発リスクについて、少々無頓着に見える面があったことは否定できないだろう。

世界が知る「日本には痴漢が多い」事実

 被害に遭っている人からすれば、非常に切実な問題であり、加害者を取り締まることが最重要課題であることは言うまでもない。

 だが、ここまで被害が拡大しているという現状を考えると、個人の犯罪として処理するだけでは限界があり、社会全体として問題を解決する方向性が求められる。

 実は痴漢という犯罪は日本においてのみ顕著であり、海外ではあまり例がないと言われる。

 もちろん海外でも公共交通機関における性犯罪は存在するが、件数が少ない代わりに、極めて凶悪なケースが多い。凶悪犯罪は少ないものの、おびただしい数の性犯罪が日常的に発生しているという点においては、日本は極めて特殊な国といえる。

 実は日本において痴漢が多いという事実は海外にも知れ渡っており、一部の国では自国民向けの渡航注意情報に日本の性犯罪に関するリスクが記載されている。

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「日本に痴漢が多い」ことは海外にも知れ渡っている
(Photo/Getty Images)

 以前、英国の渡航情報サイトがネットで話題になったことがあったが、そこには、「日本ではレイプ事件は希にしか発生しないが、性犯罪の被害立証については被害者側に大きな負担があり、女性の人権が守られていない」「通勤列車内で痴漢の被害が発生することは一般的」といった、驚くべき記述が並んでいた。困ったことに「chikan」という単語まで使われている。

 では痴漢という性犯罪が日本人に特有なのかというと、そうでもなさそうである。

 明確な統計ではないが、一部の専門家は、日本に赴任している外国人ビジネスマンが痴漢に手を染めるケースが増えていると指摘している。しかも、たいていの場合、母国での性犯罪歴はないという。

 犯罪心理について、軽々に判断を下すべきではないが、母国で痴漢をしたことがない人が日本に滞在したことで痴漢をするようになったという指摘が事実であれば、日本独特の社会風土が痴漢を誘発している可能性について検証する必要があるだろう。

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