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  • 2018/12/17 掲載

「動画だけでは不十分」、イラストでつなぐ「MUGENUP」のクリエイター学習支援方法

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自社開発のクラウドソーシングシステムを通して国内外のクリエイターに仕事を紹介し、イラストや3DCGなど、年間2万点近い多彩なアートクリエイティブを制作するMUGENUP(ムゲンアップ)。企業理念は「創ることで生きる人を増やす」で、クリエイターの新しい働き方に取り組んでいる。また、西野亮廣さんが脚本&監督となり、完全分業制で制作した絵本『えんとつ町のプペル』でプロジェクトの中心的な役割を担ったほか、最新作『ほんやのポンチョ』でも制作統括とアートディレクションを務めた。今回、同社が手掛けるクリエイター向けのノウハウ情報や育成サポートサービス「いちあっぷ」について、立ち上げに携わったペラン・アントワーヌ氏と現在、編集長をつとめる石崎亮司氏に同サービスの狙いなどについて話を聞いた。
聞き手・構成:中島 幸佑

聞き手・構成:中島 幸佑

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取材に応じてくれたMUGENUPのペラン・アントワーヌ氏(左)と石崎亮司氏

きっかけは「外部クリエイターの登録会員数を増やしたい」

──「いちあっぷ」を立ち上げられた経緯を教えてください。

ペラン・アントワーヌ氏(以下、ペラン氏):私が入社した当時、MUGENUP STATION(2D/3Dクリエイターのためのお仕事紹介サイト)の会員数が既に2万人を超えていました。さらに会員数を増やす施策として、オウンドメディアを作るのはどうか、と社内でアイデアが出たことがきっかけです。
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「いちあっぷ」は、イラストの描き方やコツを画像付きで丁寧に紹介している
(出典:MUGENUP「いちあっぷゼミ」)

──立ち上げ当時の2014年だとイラストの描き方は、書籍で情報発信することのほうが多かったと思います。Webメディアを選んだ決め手は何だったのでしょうか。

ペラン氏:定期的に書籍の話をいただいていますが、書籍は出版社や弊社の双方にとってどれだけの結果を見込めるか、不安定なところがあります。マネタイズももちろん重要ですが、まずは弊社の知名度を上げる方向で効果を期待して、Webメディアを開始しました。

──ペランさんがMUGENUPにジョインされた理由を教えてください。

ペラン氏:前職は、ギャラリーに務めていて、彫刻や絵画を売ることが主なお仕事でした。仕事に励む中、以前よりイラストに興味があったので、「イラストを中心とした新しい働き方をしよう」と思い、入社しました。

 イラスト全般が好きなので、大学時代は日本でフランス/ベルギーのイラストレーターの展覧会を開いていました。日本でずっと仕事をしたいと思っていて、フランスのクリエイターとつながる機会もあったので、その人たちの作品を日本で紹介したいとも考えていました。

──「いちあっぷ」の立ち上げ時、イラストや漫画の学習実態について、どのように考えていましたか? 専門学校は入学費用が高く、地方在住だと専門学校に通うことが難しい問題もあるかと思います。

ペラン氏:「いちあっぷ」の立ち上げ当時はイラスト学習が主要な目的ではなく、あくまでもMUGENUP STATIONの会員数を増やすという目的を達成するためのオウンドメディアでした。メーカーが自分たちの製品の認知を広げ、商品やサービスを購入してもらうためにすることと同じです。その後、会員登録も増え、「いちあっぷ」の読者も伸びてきたので、メディアをきっかけとした新たな取り組みとして、「いちあっぷゼミ(オンライン学習サービス。プロのアートディレクターが制作した教材で学び、課題の添削を行う)」を立ち上げることとなりました。
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2D/3D制作の仕事を紹介する業務委託サービス「MUGENUP STATION」
クリエイターの登録数は4万人を突破している
(出典:MUGENUP「いちあっぷゼミ」)

──会員数が増えたことで恩恵があったということでしょうか。

ペラン氏:はい。何よりも喜ばしいことは、「プロのクリエイター」だけでなく、「いつか仕事がしたいと考えているクリエイター」にリーチできたことがとてもよかったです。

競合他社に負けない強み「いちあっぷゼミ」を起点にする

──石崎さんにもお聞きしますが、MUGENUPにジョインされた理由を教えてください。

石崎亮司氏(以下、石崎氏):高校時代からアニメのようなエンタメ業界で働きたいと考えていました。就職活動では出版社を含むエンタメ関連企業を複数応募しましたが、うまくいかず、結局IT企業に入社しました。しかし、エンタメ業界を諦めきれず、8ヶ月で退職し、2015年1月にMUGENUPへ転職しました。

 MUGENUPのことは、ワールドビジネスサテライトで紹介されていたことをきっかけに知り、求人サイトで見かけた時もそのことを思い出して応募しました。当時、2Dの制作進行で応募していましたが、面接で高いモチベーションを伝えるために動画教育コンテンツを活用したクリエイター支援事業の企画書を提出しました。それが採用担当者や当時の社長にささり、入社したら「いちあっぷ」のポジションを提案されたことがきっかけです。

──業務に携わる中で、面白いと感じていることがあれば教えてください。

石崎氏:クリエイターの情報を集約できるところが面白いです。テクニックもですが、業界の考えているポイントが分かるところです。たとえば、イラストはゲーム業界で求められるものと、ソーシャルメディア(pixivやtwitter)で求められているものは異なります。それは入社した時に頻繁に感じていました。

 ゲーム業界は一枚絵の完成度が求められるため、素体のデッサンが厳しくチェックされますが、ソーシャルメディアは雰囲気や共感、話題性が重視されるため、素体のデッサンはそれほど重要視されません。同じイラストではありますが、出版や広告業界も含め、求められるものは業界やプラットフォームによって違います。業界ならではの感覚を横断的に分かるところが面白いですね。

──学生時代に、動画に興味を持った理由について教えてください。

石崎氏:動画で学ぶことに高い価値を感じていたからです。リッチコンテンツのため、非常に良いと考えていましたが、今は決してそうではないと考えています。

──「いちあっぷゼミ」でも動画教材を制作したそうですね。そもそも「いちあっぷゼミ」は、どういう経緯で決まり、どの部分に注力されましたか。

ペラン氏:弊社は主に外部のクリエイターと一緒に仕事をします。社内のアートディレクターが外部のクリエイターの制作物に対して、クオリティ面のチェックやクライアントの意向などを反映し、赤入れしています。2014年時点で2万人、2015年10月には3万人のクリエイターがMUGENUP STATIONに登録して、アートディレクターと仕事をこなしてきたので、そのノウハウが溜まってきました。そのため、このノウハウを活かして、クリエイターのスキルを向上させるオンライン学習サービスを作ろうと考えたのです。
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プロによる個別指導でデジタルイラストを本格的に学習することができる
(出典:MUGENUP「いちあっぷゼミ」)

 当時、海外で「MOOC(大規模公開オンライン講義)」のようなオンライン学習サービスで新しい仕事に就くことが注目され始めていました。私自身もプログラミングを学習している時に利用していて、同じことをイラストでもやってみたいと思っていました。

 そこで2016年にサービスをリリースして、動画コンテンツでの指導を始めましたが、当初からその先にAIによる自動添削なども想像していました。今も手動で添削していますが、将来的に実現できればと考えています。

──なるほど。 「いちあっぷゼミ」は貴社サービスにおける強みですね。

ペラン氏:そうです。専門学校で提供しているサービスを弊社はWeb上で実現しています。Web上で添削できるところは強みだと感じていて、それを軸に売り出してきました。他社で一時期同様のサービスを開始したところもありましたが、すぐに閉鎖してしまいました。

──少し話が逸れますが、当時、ペランさんはキングコング西野さんの『えんとつ町のプペル』の制作統括をされていた時期とかぶっています。非常に忙しい時期にリリースされたんですね。

ペラン氏:大変でした(笑)。「いちあっぷゼミ」の動画はすべて自分で編集をしていましたので、非常に大変な時期にリリースしました。

【次ページ】動画だけでは教育コンテンツとして完ぺきではない
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