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  • 2018/10/22 掲載

なぜローソンやライオンが「家電見本市」に参加したのか?

CEATEC JAPAN 2018レポート

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10月16日から開催されていた「CEATEC JAPAN 2018」。従来の「家電見本市」という位置づけを超えて、農業、建設・土木、都市インフラ、スマートシティ、医療・ヘルスケア、物流・流通などの展示も行われた。なぜローソンやライオン、LIXILといった、従来の枠組みでは考えられない企業群が出展したのか。業界の垣根を超えた「異業種競争」の現場を追った。
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LIXILのスマートホームについての展示。エアコンやテレビなどの機器がIFTTTによりスマート化し、外気温から窓の開け閉めについての助言ももらえるようになる
(写真:筆者撮影)

ICタグはコンビニ決済の自動化ツールとなり得るか?

 大手コンビニのローソンは近未来の店舗を想定した「ウォークスルー型チェックアウト」のデモをブース内で行った。仕組みはこうだ。まず、スマホに専用アプリをインストールし、決済用のアカウントと決済用口座を紐づける。

 次に、商品購入時にはスマホに表示されるQRコードを専用の読み取り機にかざすとともに、全商品に貼られたICタグを専用レーンにくぐらせる。これにより、読み取ったQRコードとICタグの情報を基に、決済口座から商品代金の引き落とし処理が行われ、完了後にはスマホに電子レシートが送付される。この仕組みはパナソニックと大手スーパーマーケットが共同開発し、すでに実証実験済みのICタグシステムを改良したものだ。

 改善点の1つがICタグの貼り付け方である。ICタグは電波を利用するため、水分や金属の近くでは読み取り精度が低下しやすく、実証結果でもそのことが課題に挙げられていた。水分や金属に強いタグも存在するが、利用コストはそれだけ割高となる。そこで今回のデモでは飲料やパッケージに金属を含む商品には、パッケージからできる限り離れるようRFIDタグを添付。「コンビニの商品価格帯を考慮すれば、ICタグのコストは1円未満に抑える必要がある」(ローソン)ことを踏まえた運用でのカバー策である。

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そのまま貼っては商品とICタグが直に接してしまう。それを避けるため、タグの余白に切込みを入れ、起立させることで商品と距離を取る。
(写真:筆者撮影)

 同社はスマホアプリを使ったセルフ決済「スマートペイ」を実店舗で実証実験中だ。ただし、この手法では商品のバーコードをスマートフォンで読み取る作業が求められ、利用者の手を煩わせることになっていた。この問題をICタグによって解決し、さらなる決済の自動化を図っているのも今回のデモのポイントだろう。

 「誰でもできる作業の自動化」や「人が日頃から安心して集える場」などの実現が、2025年に向けた同社の店舗開発の目標だ。そのツールとして、ICタグの自動貼り付けシステムや、医師の診断から最適なサプリまで提供する診療サービスなども提案していた。法制面の問題から診療サービスは検討段階にとどまるが、今後のサービス開発については「地域のコミュニティづくりに貢献するものが最有力」(ローソン)としている。

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診察サービスには遠隔会議システムを活用。制度面の課題から検討段階にとどまるが、安心して集える場としては有力なサービスだ。
(写真:筆者撮影)

身近な不便さを解消するために金融サービスも進化

 三菱UFJフィナンシャル・グループの一員のJapan Digital Design(JDD)は、スマホをキャッシュカードの代替として利用し、キャッシュレスの多様な決済など可能とするサービス群「mini」を披露した。miniはキャッシュカードレス環境を実現するための「CARD mini」と、決済サービスの「BANK mini」「SCHOOL mini」、イベント会場での利用した移動式ATMの「ATM mini」などから成る。

 CARD miniはキャッシュカードとスマホに割り振られるIDを紐づける仕掛けだ。具体的には、専用装置にキャッシュカードを差し込み、ATMと同様に暗証番号を入力する。併せてスマホをかざすことで、アプリ情報がスマホに送信され、あとは専用アプリをダウンロードし、指示に従い操作することで、センター側での両社の紐づけ作業が完了する。

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「CARD mini」のデモ環境。下部のスロットにキャッシュカードを挿入後、暗証番号を入力すると、専用アプリをダウンロードできるようになる。
(写真:筆者撮影)

 それを基に、Bank Miniは請求書などをスマホのカメラで読み取ることで、自分や相手の口座情報や金額の入力を一切伴わない入金を、SCHOOL miniは入金に加え、独自のコミュニケーション機能で学校や親同士の交流の場をそれぞれ実現する。

 ATM miniは鹿児島銀行ですでに採用されている現金の引き出しに特化した小型のATMだ。ワゴン車に収容できるサイズで、バッテリーを電源に最大8時間稼働する。遠方のATMに出向く手間を軽減できることからユーザーの利便性をそれだけ高められ、顧客と直に接する金融機関にとっては手数料を割高に設定するといった戦略も取りやすくなる。

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右側のパネルを操作することで、左側の機械から現金を引き出す。手数料戦略の見直しのきっかけとなるか?
(写真:筆者撮影)

 インターネットバンキングを使えば現時点でもカードレスでの振り込みは可能だ。ただし、利用時には暗証番号より長い契約番号(もしくは口座番号)やパスワードの入力が求められ、ATMよりも手間がかかるとの声がかねてから寄せられていたという。miniは、こうした金融サービスのちょっとした悩みを解決するサービスに位置づけられるという。

 ただし、現金主義が強い日本では、キャッシュレス決済は馴染みにくい。その点はJapan Digital Designも織り込み積みで、「これまでの慣れもあり、一足飛びでカードレスに移行するとは考えていない。小さな利便性の積み重ねによって、まずは心理的なハードルを下げる」(JDD)考えだ。

 CARD miniもすでに実用段階にあり、SDKのライブラリもすでに公開済み。現在は全方位で提携先を開拓しており。半年以内に10店舗での採用を目指す計画だ。

 また、独自の「Origami Pay」で日本のスマホ決済市場を開拓してきたOrigamiは、Origami Pay対応の自動販売機による利用体験コーナーを設けることで使い勝手の高さをアピールしていた。商品ボタンを選択後、表示されるQRコードを専用アプリで読み取らせて決済するデモだが、そのための処理時間は写真を撮影できないほど一瞬だ。

 今年に入りみずほ銀行や三井住友銀行などのメガバンク、地方自治体、さらに中国の銀聯国際とも提携。来年にはグローバルな銀聯QR決済ネットワークによりOrigami Payのサービスエリアはアジア太平洋地域を中心に24カ国まで拡大する。「初期登録料や年会費などの負担なく、気軽に乗り出せる。しかも決済時に即時割引などが行われることで賢くお得に利用できることがユーザーにとっての何よりのメリット」(Origami)だが、類似サービスが相次ぐ中、日本発のスマホ決済サービスの行方が注目される。

自分では気づきにくい口臭リスクを可視化

 歯磨き粉などで広く知られるライオンはオーラルケアでのノウハウを生かし、口臭リスクや歯茎の健康度の可視化アプリを出展した。双方とも使い方は簡単で、アプリを起動し、舌や歯茎をそれぞれ撮影するだけで画像解析による判定結果が表示される。前者はほぼ開発を完了しており、来年初頭から接客機会の多いサービス業などを中心に営業活動を本格化させるという。

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相手の口臭が気になっても指摘することははばかられる。そうしたアンケート調査の結果が、口臭リスクや歯茎の健康度の可視化アプリの開発につながったのだという。
(写真:筆者撮影)

 開発を担当したのは新規ビジネスの創出に向け今年1月に新設された同社の戦略部門のイノベーションラボだ。「新ビジネスにはITをはじめとする外部の知見獲得が不可欠」(ライオン)との考えからパートナー開拓にも注力。初出展の狙いの1つもまさにその点にあるという。両アプリも富士通クラウドテクノロジーやエムティーアイ、歯科衛生士などの協力を仰ぎ完成に漕ぎつけた。

 同社はヘルスケア領域全般での事業拡大に取り組んでおり、今後は口の脇にある「ほうれい線」の状況を解析するアプリなど、新領域の開発に取り組む計画だ。

【次ページ】自分では気づきにくい口臭リスクを可視化
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