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  • 2018/09/11 掲載

日本サッカー協会会長 田嶋幸三氏がW杯直前に語った「日本代表、苦難の道」

成功の裏にあるブランディングとは

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サッカーの世界一を決めるために4年に一度開催されるFIFAワールドカップ。日本サッカーの黎明期を知るファンであれば、2018年ロシア大会でベルギー代表を相手に善戦し、ベスト16をもぎとった日本代表への感慨は大きいだろう。では、日本サッカーがこれほど発展できたのはなぜか。また、世界の強豪を目指し、日本のサッカー界を率いる日本サッカー協会(JFA)は今後、どう強化に取り組もうとしているのか。JFAで会長を務める田嶋幸三氏が、W杯直前の5月16日、日本サッカーのこれまでとこれから、そしてブランディングの重要性を語った。
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田嶋 幸三氏。1957年生まれ。熊本県出身。元サッカー日本代表で、現在、日本サッカー協会の会長を務める。JFAアカデミー福島初代スクールマスター

間違っていなかった「クリーンなサッカー」へのこだわり

 4年に一度、世界中のサッカーファンが熱狂するFIFAワールドカップ。全世界で約300億人がテレビ観戦し、オリンピックをしのぐ経済効果をもたらす世界最大級のスポーツイベントだ。

 2018年6月14日から7月15日にかけて行われたロシアワールドカップには、208の国と地域が予選にエントリー。日本代表は下馬評を覆してグループリーグを突破、決勝トーナメントでベルギー代表にまさかの逆転負けを喫するも、世界のトップチームを相手に善戦しベスト16に輝いた。

 だが、「ここまでの道のりは決して平坦ではありませんでした」と振り返るのは、現役時代に日本代表のフォワードとしてプレーし、引退後は日本サッカー協会(JFA)の一員として日本代表を支え続けた田嶋 幸三氏である。田嶋氏は、ワールドカップ直前の2018年5月16日、「Advertising Week Asia 2018」(アドバタイジング・ウィーク・アジア2018)に登壇。まず、日本サッカーのこれまでの苦難を赤裸々に語った。

「70~80年代の勝てない時代には、それゆえの悔しさを幾度も経験しました。海外から招聘したコーチには、『もっとマリーシア(ずる賢さ)を覚えなさい』とあきれられることもありました。しかし我々は、あくまでもクリーンなサッカーにこだわり続けました。その選択は、決して間違っていなかったと断言できます。今や30台以上のテレビカメラが選手を追い、汚いプレーを隠し通すことはできません。そして、クリーンへのこだわりを貫いてこられたのも、『戦術が正しければ必ず強くなれる』という強い思いがあったからなのです」(田嶋氏)

夢を文化として根付かせるために

 プレーヤーを取り巻く環境の変化も、日本サッカーを大きく発展させた。93年のプロリーグ「Jリーグ」の発足により世界の一流プレーに触れる機会が増え、日本人選手のレベルが短期間で大きく底上げされた。

 一方でJFAは、2005年の「JFA2005年宣言」で新スローガン「DREAM」を採用。これは現在、JFAが展開中の日本代表応援プロジェクト「夢を力に2018」にも、一貫して受け継がれている。

「夢があるからこそ強くなれます。また、そのためのスローガンを発し続けることで、思いが文化として根付きます。JFAはそのことをJリーグ発足時から強く意識してきました。スポーツ振興に向けた“100年構想”をいち早く掲げたのも、まさにそのためです。根底には、早く世界レベルのサッカーに追いつきたいという強い願いがあったのです」(田嶋氏)

 より早く夢を実現すべく、JFAはブランディングにも注力した。JFAはプロやアマ、老若男女を問わず日本サッカーを統括する立場にありながら、従来は出場資格によって大会が細分化され、理念や将来ビジョンを関係者と広く共有することが困難だった。ブランディングへの注力は、その克服が一番の狙いだった。

「ブランディング」であらゆる関係者の一体感を醸成

 「当初は大会ロゴを揃えるだけで多額のコストが発生し、当惑することもありました」と苦笑いする田嶋氏だが、活動が本格化する中でブランディングの意義を理解できるようになっていったという。

「ロゴが統一されたことで、参加者は県大会が天皇杯につながっていることを一目で認識できます。これは一例ですが、そうした細かい積み重ねが一体感の土台となり、スポーツを文化として根付かせる力となることを、肌感覚で分かるようになりました。大会ごとの日本代表ユニフォームの変更も、売上のためだけではなく、その時々の一体感を上手く生み出すために欠かせないことなのです」(田嶋氏)

 むろん「夢を見続けるには、勝利が何より大切です」と田嶋氏。ロシアワールドカップにおいても、初戦のコロンビア戦に勝利したことで世論が大きく動き、加速度的に注目が高まっていったことは記憶に新しいだろう。

 JFAは勝利の確率を少しでも上げるための準備にも余念がなかった。キャンプ地が固定されることでの選手の心理的な疲弊を避けるため、日本大使館を巻き込みつつ、当時の代表監督西野 朗氏とともに複数のキャンプ地を決定。初戦のコロンビア戦を想定したスイスやパラグアイとのトレーニングマッチも組んだ。日本代表の23名に加え、選考から漏れた若手選手の帯同も行われている。

「代表選手は皆、自身のプレーにプライドを持っています。ただ、トレーニングのサポートに回ることが多い控え選手は、それゆえにモチベーションが低下しがちです。しかし、若手がサポート役を務めることで、チーム全体の士気を高く保てます。しかも、ワールドカップでの貴重な体験を次世代に引き継げるのです」(田嶋氏)

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