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シリコンバレーを中心にベンチャーキャピタルやコンサル業界で注目を浴びている「エクスポネンシャル思考」。これは「テクノロジーやビジネスは人間の直観に反して指数関数的(=エクスポネンシャル)に成長する」という考え方だ。では我々は、この極めて強力なエクスポネンシャル思考をどのように実践したらよいのだろうか? そのヒントを得るために、今回、特別に早稲田ビジネススクールで試験的に行われたエクスポネンシャル思考のワークショップに潜入した。これを読めばきっとあなたも、今日から自分の仕事に取り入れて"世界を変えられる"はずだ。
なぜ今、日本に「エクスポネンシャル思考」が必要なのか?
前回ご紹介した「エクスポネンシャル思考」。まだなじみがない言葉だが、なぜ今、日本に必要なのか? それは、現在日本が危機的状況にあり、そこから脱するにはエクスポネンシャル思考が必要だからだ。
企業の時価総額や科学技術分野の論文数、少子高齢化など、さまざまな指標で日本の革新力が減退している。「一人負け」とまで言われているが、このような危機は初めてのことではない。
それでは、日本は今までどのように生き延びてきたのか? 折しも今年は、明治維新150周年。バブル景気の絶頂から始まった平成ももうすぐ終わる時代の境目だ。150年前の日本は、欧米で興った産業革命を受け入れるか否かの瀬戸際にあった。
結果、欧米に学び、それを全面的に受け入れることで、アジアでは稀有な「先進国」の仲間入りをした。当時日本の近代化を推進した福沢諭吉は、適塾での壮絶な勉学の様子を「福翁自伝」に記したが、維新を推進した志士たちは死にもの狂いで海外の最先端知識を吸収した。
では、今、日本が学ぶべき最先端は一体「どこ」にあるのだろうか? そこから「何を」学ぶべきなのだろうか? 間違いなく欠かせない場所の1つは「シリコンバレー」であり、そこから学ぶべきことの第一歩が「エクスポネンシャル思考」なのだ。
しかし、エクスポネンシャル思考でのビジネス定式化は、まだ試験段階だ。そうなると「エクスポネンシャル思考の成功例は? 本当に成果が出るの?」と問いたくなる。だが、その答えは「現在成功しているIT企業のすべて」といって
過言ではない。
そして特筆すべきは、その思考方法を実践したビジネスモデルが、中国やインドに急速に広がっていることだ。中国のIT企業(アリババ、テンセントなど)の躍進は周知のとおりで、シリコンバレーではインド系CEOが急増中だ(グーグルのピチャイCEO、マイクロソフトのナデラCEOなど)。
つまり、150年前に産業革命を受けるか否かで国の運命が決まったように、世界は今、エクスポネンシャル思考のビジネス原理を受け入れるか否かの瀬戸際にあり、このままでは日本の「一人負け」がエクスポネンシャルに加速するのも時間の問題なのだ。
例えば、
こちらの動画をご覧いただければ、いかにこの20年で中国とインドが急拡大し、日本が急速にしぼんでいるかが分かるはずだ(図1)。
似たような話は、「ビッグデータ」「AI」「IoT」「第4次産業革命」と形を変えて繰り返し展開されているが、「エクスポネンシャル思考」はそれらに通底する思考を読み解き、その思考方法を実践する試みである。目標はずばり、これを読んだ日本の皆さんのマインドセットを変えることで、(まずは気持ちだけでも)ラリー・ペイジやイーロン・マスクのようになっていただくことだ。
「エクスポネンシャル思考」のワークショップの基本構成
今回は、そのヒントとして一線のビジネスパーソンが参加した「エクスポネンシャル思考」のワークショップを取材したので、その様子をお伝えする。
2018年1月の夜、早稲田ビジネススクールの池上重輔 教授の授業で、そのゲスト講師である齋藤和紀氏が開催。
齋藤氏は2015年に米シンギュラリティ大学が提供する企業幹部向けプログラムを修了し、帰国後に同大学の卒業生とともにエクスポネンシャル・ジャパンを創設した2017年5月には「シンギュラリティ・ビジネス~AI時代に勝ち残る企業と人の条件」 (幻冬舎新書)を出版。
今回のワークショップは、齋藤氏がシンギュラリティ大学の教材も活用しながら、独自に試行錯誤を重ねて日本のビジネスパーソンが取り組みやすくしたものだ。
今回は受講生約50名を対象に1チーム6人×8チームほどに分けてグループワークを行ったが、約3時間を5つのフェーズに分ける構成で実施された(図2)
まず「Phase0」で、講師が1時間ほど講演を行い「エクスポネンシャル思考」の”さわり”を理解してもらう。前回述べた内容と共通するので詳細は省くが、シンギュラリティ大学の特徴は、その共同創設者であるピーター・ディマンディスが提唱する「破壊的進化に起きる6つのD」が提示されることだろう(図3)。
これは、エクスポネンシャルなビジネスは指数関数曲線の軌道上を進み、その過程で「デジタル化→潜行→破壊→非収益化→非物質化→大衆化」が次々と起こるというものだ。
ここで注目すべきは、多くの企業でいきなり「マネタイズ(収益化)」が求められるのとは真逆に「デマネタイズ(非収益化)」が前提となっている点だ。せっかく良いアイデアを思いついても「どうやってもうけるの?」と執拗に追求され、結果的には現実的で凡庸なアイデアになってしまった経験は多くの方がお持ちだと思う。
しかしここでは、そんな小さい(?)ことには目もくれず「どれだけ大きなインパクトを世界に与えられるか」に集中するのだ。これは、グーグルもフェイスブックも、最初からビジネスモデルありきのサービスではなかったことと整合する。
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