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- 2017/11/29 掲載
米スプリントの未来を危ぶむ声、グーグルやフェイスブックがMVNO参入か
トップ2が変わらず、3位と4位で食い合いのワケ
米携帯は長らくベライゾン、AT&Tという元々通信事業を行っていた2社の独占が続いていた。携帯が普及して以来、そこにさまざまな企業が参入したが、メジャーとして生き残ったのはスプリント、Tモバイルの2社のみで、現在この4社が「ビッグ4」と呼ばれている。
しかし、マーケットシェアで見ると1位ベライゾンがおよそ33%、2位AT&Tがおよそ26%なのに対し、Tモバイルは15%強、スプリントは14%とトップ2とボトム2のギャップはなかなか埋まらないのが現状だ。言葉を変えると、現在3位と4位のTモバイルとスプリントが互いのシェアを食い合っている。
4位だったTモバイルがスプリントを抜いて3位に浮上したのは2014年だが、それ以来この両社による顧客の奪い合いには凄まじいものがある。
というのも、トップ2を選ぶ顧客は固定電話、ケーブルテレビなども合わせたバンドル契約が多く、顧客は容易に他社に乗り換えない。新興勢力であるTモバイルとスプリントは固定電話サービスを持たないがゆえに、新たなサービスを付帯して「他社からの乗り換え割引」などを展開しているのだ。
ネットフリックスやHuluの視聴を無料に
たとえば今年に入りTモバイルはネットフリックス視聴無料サービスを、一部のプランで提供し始めた。これに対しスプリントも11月に入ってからではあるがHulu無償提供、というキャンペーンを始めた。それでも現在のマーケットシェアは「2020年までほぼ横ばい状態が続く」と予測するのは、ボストンに本拠を置くストラテジー・アナリスティック社だ。多少のサービスによる顧客獲得があったとしても、全体としてシェアを大きく動かす要素にはなり得ない、という。
唯一市場を大きく動かす鍵となるか、と注目されたのがスプリントによるTモバイル買収の動きだった。元々スプリント、Tモバイルともに吸収合併を繰り返して現在のような大手になった企業だが、この2社が合併すれば市場規模ではAT&Tを抜いて2位に躍り出ることになる。しかしスプリントが仕掛けたこの合併はTモバイル側から拒否され成立しなかった。
経営のスケールメリットとして合併は合理的、という見方がある一方で、両社の企業カルチャーの違いから合併は無謀、という声もあった。
元々小規模な電話会社で古くから存在するスプリントに対し、Tモバイルは創業が1994年という、まさに携帯に特化した新規企業だ。サービスのあり方なども異なる。
そもそも現在のスプリントの低迷は、提供するネットワークの速度の不安定さに加え、合併を繰り返した名残りから、Webサイトやカスタマーサービスに統一感がなく、顧客からの不満がもっとも高い、という点にある。
米には顧客の声を集めるConsumer AffairsというWebサイトがあるが、ここで携帯についての不満の声を拾うと群を抜いて多いのがスプリント、逆に最も少ないのがベライゾンとなっている。AT&TとTモバイルはほぼ同数だが、スプリントに寄せられる不満の声はベライゾンより6割も多い。
スプリントのWebサイトは3つもある
ではそのサービスの実態とはどのようなものか。筆者は過去2年間スプリントを利用していた。理由はソフトバンクによる買収でスプリントが「ジャパン・アドオン」という、月5ドルで日本での通信無料、というサービスを開始したためだ。しかし、驚いたのはスプリントのWebサイトが3つもあることだ。セールス、カスタマーサービス、スプリントワールドワイド、とそれぞれWebサイトが別個にあり、目的に応じてWebサイトを行き来する必要がある。
しかもワールドワイドでジャパン・アドオンが申し込めない。どのWebサイトでも最終的には電話しなければ目的が果たせない、というシステムなのである。
また、ジャパン・アドオンは月単位のサービスであり、日本に行くときだけ1ヶ月申し込んだにも関わらず、その後ずっと5ドル加算が続いた。
【次ページ】筆者の実体験から見えたこと
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