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- 2017/08/31 掲載
なぜあの人は有能なのか? 共通する「手順」「知識」「行動規範」を具体事例で解説
経営者の意向を超える企画提案の変革(11)
ものごとをうまく進められる人財の3つの共通点
冒頭から脱線するが、筆者たちは一時期、ITに限らずさまざまな領域で“有能”と評価される人が、なぜ有能なのか、自主研究でそのノウハウを調査した。有能者のノウハウそのものはさまざまだが、ものごとをうまく進められる人財には共通点がある。企画提案をうまく進める上でもまったく同じであり、それは次の3点だ。●手順:どのように進めるか手順が確立している。
●知識:対象について知識が豊富で、知識拡充の努力を怠らない。
●行動規範:自身の思考と行動を律する信念がある。
ある設備メーカーの有能な設計者の部品開発の事例では、上記3点は次のようになっていた。
有能者が主要部品のコストを半減させた手法
製品の付加価値を高め、価格を大きく上げた主要部品について、その第2世代で大幅なコスト削減を達成した設計者がいた。この有能者は、「動作原理を製品の前提条件に立ち返って最適化する」というノウハウをもっていた。この主要部品の第1世代は、機能の発想自体が他業界の優れた製品機能を、自動制御できるようにした上で製品内部に取り込むものだったので、他分野の製品の構造をスタディするところから設計を始めていた。それによって機能は達成できたが、部品そのものは高額なものになっていた。第2世代では、コスト削減が目標であったが、この有能者は目標を大きく上回って、コストを半減させる成果を上げた。
一般の設計者の多くは、既存部品のコスト削減を検討する場合、場当たり的に材質の変更(例えば金属を樹脂代替する)を検討し、試作と評価を繰り返す。それに対してこの有能者は、確立した手順で検討を進めることで、一般の設計者では到底達成できないコスト削減を成し遂げた。
この有能者が行ったコスト削減検討の手順は次だ。
一般の設計者に、有能者と同じ手順を教えて検討させても、多くの場合、同じ成果は得られない。それは対象についての知識量に大きな差があるからだ。この有能者は、次の領域の知識を豊富にもっていた。
しかし、一般の設計者に有能者と同じ手順を教え、同じだけの知識をサポートしても、同じ成果にはならない。実はどの業界・領域の設計でも、時間との戦いがある。それ故に、多くの設計者は一刻も早く答えが欲しいので、テッパンとも言えるコスト削減策の「金属樹脂代替」に最初からとりかかる。しかし見通しをもって設計している訳ではないので、形状や加工精度は従来と同じにしか設定できず、わずかに樹脂代替できた成果に止まる。それが関の山だ。
有能者の手順は、現状の動く部品があるのに、それを否定して白紙から考え直すことなので、「絶対に『動作原理を製品の前提条件に立ち返って最適化する』ところからやる」信念なしにはとてもできない。つまりこの有能者には、自身のもつノウハウを何があってもやり切る行動規範があった。
【手順】 コンサルティング・プロモーションのプロセスそのもの
繰り返しになるが、企画提案をうまく進められる人の共通点は、他のエンジニアリングと同じ、手順・知識・行動規範だ。つまり企画提案人財の育成は、手順・知識・行動規範の3軸で進めるべきだ。この3軸を伸ばすことで育成が進む。●手順
企画提案の手順は、コンサルティング・プロモーションのプロセスそのものだ。このプロセスは仮説検証型なので、手順を進めても一見、成果物は変わらない。初期仮説をどのように構築するか、それをどのように拡充するか、これを手順に従って進める。プロセスは第6回で詳しく解説したので復習してもらいたい。
【知識】 成功事例のファクトを意味解釈してロジックにする
●知識企画提案に必要な知識は事例の知識だ。競争相手や先行異業種の成功事例を、公開情報だけでなく、できれば直接対話で獲得すべきだ。そして事例のファクトを意味解釈してロジックにし、ファクトとロジックをセットで蓄積する。これがなければイノベーション・ロジックを生み出せない。
また、意思決定者は何に悩んでいて、どのように提案することでその意思決定課題を解決できたか、その知識が豊富にあることで妥当なキー・イシュを設定することができる。さらに事例の業務改革では、推進上どのような課題があったか、それをどのように解決したか、その知識が豊富にあることで、一つでも多くの課題を想定することができる。ファクトとロジックの例を次に示す。
ロジック(イノベーション・ロジックの例) |
商社マンたるもの営業から代金請求まで…のパラダイムによって分散していた間接業務を統合し、販売費・一般管理費を削減し、営業時間増大によって拡販する。 |
ファクト |
販管費を6年で20%削減(平成**年3月期連結ベ-ス、4700億円を950億円削減し、3750億円とした)。方法は、営業担当者の間接業務の統合による合理化。 従来は、商談から物流の手配、経理処理まで、一人で担当することが多いため、営業、物流、経理等専門部門でそれぞれ業務を推進出来る組織、業務制度の整備を行い、全社の生産性を向上させた。 |
【次ページ】 3つめの軸「行動規範」、クリエーションを突き詰めろ
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