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  • 2017/02/16 掲載

自社だけでビジネスはできない ビジネス成功の秘訣は人脈にあり

連載:イノベーションのすゝめ(7)

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イノベーションとは何だろうか? 普段何気なく使っているが、それがどういう定義なのか、なぜ必要なのか、どうすれば上手くいくのかは曖昧だ。本連載では、IT業界一年生の柏木亜依と共にイノベーションを一から学んでいこう。前回、R&Dセンターにお願いしていた試作品が完成し、商標登録を終えた。この試作品を使って、社外のパートナーとWin-Winの関係を築きながらテストマーケティングとプロモーションを実施できるだろうか?
執筆:浅井 治
photo
イノベーションのすゝめ(イラスト:のはらあこ)


前回までのお話
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社外のパートナーと連携する

試作品もできたし、テストマーケティングの内容も見えてきた。さて、どこと組むか?



先日、先輩がおっしゃっていた、ケアハウスはどうなりましたか?



うん、施設はできたけど、入居が進んでいないみたい。 まだ、数人とかいってたな。



そうか、数人じゃね~。



ただ、デイサービスもやっているようなので、そちらから攻めるか? デイサービスの人たちは、サービスがよければフルタイムに移行してくるはず。なので、デイケアの人たちをケアハウス入居候補者と見立て、営業活動として、見学会を開いている。



だったら、そのプロモーションに、「てからーず」を引っかけられないですかね?



亜依ちゃん、いいね、それ。先方も、営業ツールに使えるね。 見学会の参加者に、お試し版を無料で配る。



はい。



早速、話をしてみよう。今日の午後空いてる。 試作品もって出かけてみようか?



はい、行きます!




(ケアハウスの事務所で)

始めまして、XX化粧品の柏木亜依と申します。 よろしくお願いします。



兼ねてからお噂は聞き及んでおります。元気がいいお嬢さんだって。



いや、お恥ずかしいです。



柏木は、若手の成長株で、社内でいつもやられてます(笑)



先輩! そんな言い方しないでくださいよ。



まぁまぁまぁ、亜依ちゃんと呼んでいいかな?



もちろん、いいですよ。柏木なんて呼ばれると、かえって、ドキッとしますから(笑)



今回、試作品を作りましたが、より多くに方に使っていただき、ご意見をいただきたいのです。 1000本くらい、無償で提供することができますが、ケアハウスのみなさんや、デイサービスの方々にお配りいただけますか?



配ることは、構わないけど、まず、どんな製品なんだね?



初老の男性向けの化粧品です。沁みを隠す効果とお肌を健康に保つ効果があります。 名付けて、「てからーず」と申します。



なるほど、面白そうだね。売るとすると、いくらくらい?



3000円程度で売りたいのですが……。



う~ん。率直に言わせてもらうと、感覚的に、ちょっと高いかな? ケアにいらっしゃる方々は、年金生活者であるものの、結構、節約されてます。歳を取るといろいろ要り用ですからね~。その中で、3000円はどうかな?



値段は再考しなきゃいけないかも知れませんね。



あと、よほどの健康マニアでない限り、男性が肌の状態を気にすることはないだろう。脂性とか乾燥肌程度の意識はあるでしょうが?



ただ、潜在的に健康への意識が高くなると思いまして。



確かに、環境問題とか考えるとおっしゃる通りの世界になるかも知れないが、まだまだ時間がかかる。



それを、今回にキャンペーンで意識を持ってもらって、加速することできないかしら?



う~ん、手軽に使えることも大切だな。お年寄りの場合、習慣化すれば使い続ける。そこまで持っていくのが難しい。ポイントとか、SNSも響かいないだろう、一番は、口コミ。



だから、ケアハウスでのコミュニティが使えないかと思いまして。



やはり…、Webに情報がありますとか、パンフがありますというより、説明会など、生の声の方がいいだろう。ケアハウスには、訪問者も少なく、イベントがあればみなさん参加される。そこで、ちょっとした相談ができれば。相談というより話相手だろうね。孫の話とか、お墓の話とか。要は聞いてもらいたいんだ。こういうケアができるか? ってこと。単に、物売りは嫌われるだけ。



なので、所長、まずは、ケアハウスで説明会をやってみたいのですが……。



そうだね、やってみないとわからないこともあるし。 我々にとっては、それを配ることで、多くの方にケアハウスに足を運んでもらえればいいわけで、 そこで、ケアハウスを見学してもらえるし、ケアハウスのことが説明できる。見てナンボ、体験してナンボの世界だからね。そこがビジネスの始まりですからね。



そもそも、「てからーず」って言っても、ほとんどの人が、何のことだかわからない。なぜ、ケアハウスで説明会を開催するのかわからない。「てからーず」を無料で配るといっても、何かわからない物を欲しがる人もいないだろう。なので「てからーず」の説明会ではなく、ケアハウスの見学会がメインで、そこに参加すると「てからーず」の試供品がもらえるという形で進めましょうか?



そうですね、あくまでも「てからーず」は脇役で、メインにするとストーリーが成り立たないですね。



これだったら、他の施設にも展開できそうだな。 そこで、アンケートに答えてもらう。



アンケートは記入式? だったら、エンピツとか用意しなきゃ。



いやいや、ちょっと、考えて。「てからーず」は、色を塗ることできるよね。だったら、「てからーず」で記入してもらったら?
そのために、パッケージを開けると、アンケートだけでなく、手の甲とかに塗って試してみたくなるよね。パッケージのまま、ごみ箱に行くのではなく、少なくともパッケージを開けて使ってみるチャンスは増える。だったら、単に記入させるだけでなく、似顔絵とか、塗り絵のように、「沁み」の上に塗る行為をしてもらう。その結果がアンケートの答えになるといいね。



お孫さんが描いた似顔絵に沁みが描かれていたら、それを消すというのはどうですか?



意味は分かるけど、ちょっと、凝り過ぎかな。簡単でなければ楽しめない。



幼稚園児が顔に落書きをして、高齢者が後から消して回るというゲームはどうですかね? ゲームが終わった後、「これは、沁み隠しという化粧品です。」って説明して持ち帰ってもらう。 何に使う物かって嫌でも伝わ理ますよね。お子さんと遊びながら、「てからーず」の商品イメージを 刷り込むことができると思いますが。



いわゆる、「ゲーミフィケーション」だね。遊び心を取り入れ楽しみながらアンケートに答える。 面白い、もうちょっと考えよう。



アンケートの回収率を上げるために、回答をスタッフに手渡し返却すると「もう一本進呈」とか、 お友達の紹介というのもやりたいですね。如何に継続的に拡散させるかですよね。



草の根的に拡散させたいよね。大題的にコマーシャルもいいけど、他社に模倣される危険性もある。他社が、参入しないうちに、シェアを確保してブランド化するところに旨みがある。



それでは、来月あたり、50人規模でケアハウスの見学会をやってみようか。



そうですね、細かいところは、やりながら考えましょう。



事前にお誘いする時に案内のチラシを配るので、ついでに「てからーず」のチラシも折り込んであげるよ。



ホントですか!じゃ、早速チラシつくります。




(帰社後)

とりあえず、上手く行きましたね。



我々のやりたいことも伝えることができた。 さぁ、「チラシ」と「アンケート」だ。手分けしてやろう。「アンケート」は、R&Dにも相談したいので、亜依ちゃんは「チラシ」作って。



はい! わくわくしてきましたぁ、いよいよですね。



あと、当日の説明もね。



はい! その前にうちのお父さんで練習しておきます。



そうだね。そんな世代だよね。亜依ちゃんが説明すれば、自分の娘の姿とダブってくるよね。 「じゃあ、買ってやるか?」ってことになるね。



それって、心理的作戦ですね?



まぁ、そういうことだね。



見学会でユーザーの反応を探る


(見学会当日)

もう、ドキドキ!



亜依ちゃんならできるよ、親父さんで練習したんでしょう。



練習したけど、結局、笑っちゃってできなかったです。



いいんだよ、まずは、「笑顔」だから。



私のソバカスにも使えるかしら?



はい、女性の方にも是非! お使いいただけます。



もう、この歳になると、化粧が面倒で、これ、お手軽でいいですね。



是非、お試しください!




(見学会終了)

いやー、昨日はご苦労様。疲れた、疲れた。 でも、準備した試供品(100点)は全部配ったし、アンケートの回収率も85%位いってるかな?



みなさん、よく聞いていただきましたね。



興味があるんだよ、亜依ちゃんにもね? そのうち「うちの息子の嫁に」って声がかかるよ。



いやだ~っ先輩!



反応やアンケートを分析する

それはさて置き、早速アンケートを集計、分析しよう。



先輩! 出来てます。



え!



いてもたってもいられず、昨夜、やっちゃいました。Excel得意ですから。



そうだったね、凄いね~、グラフまでできてる。 やはり、一番人気は、「乾燥肌」×「少し薄め」、次に、「しっとり肌」×「普通」か。 前者が女性、後者が男性。これは予想通りだね。



はい。



ただ、サンプル数は、85。もう少しデータ欲しいね。



おばあちゃんから質問があるとは思わなかった。



でも、ちゃんと応えていたね。女性にも潜在的なニーズがあるってことだよ。



そうですね、だったら、パッケージデザインももう少し考えた方がいいかも知れないですね。



どうも化粧品というと、若い人とか、奥様とかをボリュームゾーンって考えるけど、実際には、年配の女性というターゲットを考えると別の市場があるのかも知れないね。



これって、凄い発見ですね?



年配の女性にとって、「老い」との戦いは、男性よりも切実な問題のはずだ、しかし、化粧品は、若い人用の物しかない、化粧するのが面倒、お手軽に済ませたいというニーズがあるんだ。 男性用ということで始めたけど、女性用をどうするか。考えどころだな。



う~。



生産面でも、初老の男性をターゲットにした成分分析はできているはずだが、年配の女性のデータがあるだろうか? 優先度をどうするか? タイミングは? そもそも、市場のボリュームは?



調べなきゃいけないことが一気に増えました。



でも、これって、嬉しい大変さだよね。
この分野では、男性顧客は、新規ユーザー。ところが、女性の場合が、乗り換え組だよね。要するに乗り換え組には、これまで自社製品を買っていただいていたとすると、その製品ではなく、新製品を購入していただくことになる、これは、カニバリゼーション(共喰い)と言って、シェアは維持できるけど、実際に売り上や利益にはあまり寄与しない可能性がある。だったら、男性用を先行して市場に投入して、投資費用の回収を進めながら、女性用にも展開する方が得策かも知れない。
男性が使っているのを横目で見て、自分も使ってみるというケースが多いのではないだろうか? ニーズを膨らませてから、「女性用」を発売すれば、「待ってました!」ってことになる。



ただ、女性用は、他社に持っていかれるリスクもあるんじゃないですか?



そうなんだ。亜依ちゃん鋭くなってきたね。 だったら、女性用もロケットスタートできるように海面下で準備しておくか。



3、2、1、0、ドカーン!



待てよ!「男性用」と言うからいけないのかも知れない。 男性用と言わなければ、女性にも抵抗なく浸透できる。



ただ、男性用と、女性用って色が違いますよね。



確かに。でも、それって、男性用、女性用という意味じゃなくて、色のレパートリを充実させるってことだよね。



そうですよ。男性用、女性用なんて関係ないんじゃないですか? UNISEXなんじゃないですか?



お! なんか、吹っ切れた感じ。 若々しくしていたい。というのは、男女関係ないんだ。



だったら、「男性も化粧を!」というようなスタンスで、ターゲットはUNISEX。



ターゲット市場をこういう定義にしよう。
「ナイスなシニア必携、「てからーず」でエンジョイするアクティブライフ」って感じかな。 ヘルシーってキーワードも欲しいな。



若い女性向けの化粧品とは、一線を隔した感じですね。



憧れや夢が優先する女性用化粧品に対して「てからーず」肌ケアを含めたは品質が勝負。お手軽だけど、安心でしっかりケアしてくれる。って感じを出したいね。



いい感じですね。



これが、ブランド化なんだよ。



UNISEXにするとして、色のレパートリって何色くらいがいいですかね?



多い方が「カスタム感」があっていいけど、製造コストがかかる。 最初は、「濃い」、「薄い」、「普通」くらいかな?知名度が上がり、ビジネスとして軌道にのってきたら、「少し薄め」とか、「少し濃いめ」という中間色を市場に投入してより「自分用」を表現する。
この「少し」という表現が利用者に響く。化粧品やアパレル等の装飾品では、人と違う、既製品でないところにちょっとした優越感を感じるんだ。こういうニーズにひっかける。



確かにそうですよね。利用者の心理を突いているわ~。



ただ、色のレパートリに、肌タイプとして「乾燥肌」、「しっとり肌」を準備すると3×2=6通りになるね。



あれ? 何故、肌タイプに「普通」がないのですか?



いいかい、ここで「普通」を入れてしまうと、殆どの人は、最初に購入するのは「普通」だろう。 そして、次に購入する時、必要に応じて、「乾燥肌」、「しっとり肌」を選ぶ。



はい。



「普通」を作ってしまうと、「乾燥肌」、「しっとり肌」の意味が薄れる。 「普通」がないと、店頭で、自分は、「乾燥肌」なのか「しっとり肌」なのかを考える。 つまり、この製品は、利用者の肌のタイプを意識した製品なんだと訴えることができるよね。



それで?



裏面の商品の説明や注意書きを読む機会が増える。製品についてより知ってもらえるんだよ。



なるほど、深いですね~。



さらに、肌タイプも将来は、「少し乾燥」、「少ししっとり」を追加すればよい。



「少し乾燥」、「少ししっとり」を加えると、3×4=12種類です。



6種類あるいは、12種類の製品を一律、同じ数量を作るわけではないよね。それぞれ、どの程度生産するか? という生産計画を立てなければいけない。これらのためにも、販売数データをきっちり集計する仕組みも必要だ。たとえば、季節や天候によっても変わってくるよね。



なるほど。ビールみたいですね。



ビールのように、山谷はないだろうけど、ある程度傾向があるはずだ。このような天候や季節のデータをコーザルデータと呼び、コンビニのPOSシステムの売り上げ情報と見比べて分析するんだ。ここで、問題は、この商品の販売チャネルは、ケアハウスだったよね。そうすると、POSのような売上情報を採取するのが難しいんだ。折角売れても情報が取れないとつらいね。



【次ページ】 販売形態を見据えてシステムを考える
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