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- 2016/10/24 掲載
今さら聞けないAWS移行の基本と手順、成功のポイントは「オンプレミス流」を求めない
CIOのためのAWS解説(2)
AWS移行の基本的な手順
自社の情報システム基盤をオンプレミスからAWSへと移行するにあたって、「具体的にどのように始めたらよいのかよくわからない」というユーザー企業の情報システム担当者も多いのではないでしょうか。実際に弊社にも「現在、社内システムで使用しているハードウェアの保守が切れてしまうため、クラウドサービスに移行したい」といった問い合わせが多く寄せられています。オンプレミスからAWSに移行する際には、直接業務に影響するような既存システムではなく、新規で開発するサービスのような、業務への影響度の小さいものから移行を進めていきます。いずれにしても弊社では、ユーザー企業には以下のようなステップで導入を行うのがよいとアドバイスをしています。
(1)AWS採用の目的を明確化する
(2)対象システムを洗い出す
(3)AWSの制約条件を確認する
(4)移行後システムの構成を決定する
(5)システム移行を開始する
事前にチェックすべき移行の制約事項
それでは各ステップの流れについて、少し詳しく説明していきましょう。まず(1)では、AWSの検討を始める際に「AWS移行の軸がブレないように、しっかりと目的を決める」ことが重要です。「コストを削減したい」「パフォーマンスを向上したい」というように、ユーザーのニーズもまちまちです。そこで本当に実現したいことを整理し、移行の目的を明確にしていただくことがスタートになります。
目的が明確になった段階で、次に(2)の対象システムの洗い出しを行います。これは冒頭で触れたとおり、影響度の小さいサービスから移行していくことが原則になるでしょう。
また、対象システムを選定する際には、(3)のAWSを利用するにあたっての制約条件を十分に確認しなければなりません。
例えば、AWSでは、OSにWindowsやLinuxは利用できますが、SolarisやAIXといったOSは使えません。また、AWSには共有ディスクが用意されていないため、複数サーバーから1つのディスクにアクセスできない等の制約があります。その制約のために、既存システムでクラスタリング構成にしていたシステムをそのままAWS環境に移行しても、同じ構成で冗長化することができないケースが出てきます。
その場合には、Amazon RDSの利用を検討したり、DBミラーリングの機能で対応したりといった工夫が必要になります。
また、ハードウェアリソースにも制限があります。現状ではメモリ制限が最大2TBに拡張され問題も解消されつつありますが、Oracle TimesTenやSAP HANA 等のインメモリDBを使用していた場合、データ容量によっては移行ができない場合もあります。これから次第に増えてくる、エンタープライズ系システムの移行には、これらの注意が必要です。
ストレージ関連のチェックポイントとしては、Amazon RDS はオンラインストレージを採用しているため、ioDrive等のフラッシュドライブと比較して性能が出ない可能性がありますので、パフォーマンスチェックを事前にしておくとよいでしょう。つまり、事前検証としての概念検証(PoC: Proof Of Concept)をきちんと実施していくことが重要になります。PoCで見つかった問題は、1つずつ解決していけば良いのです。
コストメリットが出るのはどんなシステム?
AWSの制約事項をクリアして(4)移行後のシステム構成を確定させ、PoCを終えた段階で、実際に移行を実施する(5)に入りますが、その前に別の側面を検証しましょう。 移行に向いているシステムなのか、不向きのシステムのなのか、です。移行は可能でも、コストメリットが得られないケースがあるかもしれません。逆に移行が困難であっても、なんとか移行した後にコストが大幅に削減されるケースもあります。そこで経営判断にもつながる、「コストと運用」の両面から、向き・不向きを見ていきましょう。
まずコスト面から移行を考えたとき、AWSの場合は「ピーク特性のあるシステム」には適しています。選挙システムやキャンペーンサイトなど、一時的なイベントで使われるシステム基盤や、年次や四半期に1回しか稼働しないようなシステムなら、オンプレミスでは固定費がかかりすぎる投資になります。AWSなら、使わないときは停止しておけばよく、コストを最小限に抑えることが可能です。
しかし実際に5年間のトータルコストを考えたとき、システムによっては思ったほどコストが抑えられないケースがあります。AWSでは月々分割で料金を支払うため、一見すると安く思えるかもしれません。しかし移行時にもコストがかかりますし、運用時には転送量課金もあります。やはり数年後までのランニングコストをしっかりと計算してみることが大切です。
コストを抑えるTIPSとしては、「リザーブドインスタンス」というキャパシティ予約の仕組みがあるので、活用するとよいでしょう。これは1年または3年契約でインスタンスを予約しておくものです。いわば「早割」のようなもので「全前払い」「一部前払い」「前払いなし」の3種類の支払い方法があります。見返りとして、使用状況が一定ならば、オンデマンド使用料金が大幅割引になる契約方法です。
また、災害発生時などインスタンス利用が急増する傾向があります。あらかじめインスタンスを予約して確保しておけば、いつでも必要なときにインスタンスを確実に起動できるというメリットもあります。ただし、事前に起動するインスタンスタイプを指定する必要があるため、頻繁にインスタンスタイプを変更するような成長が早いシステムには、リザーブドインスタンスは適していません。
次に運用面を考えてみましょう。突発的にアクセスが増えるようなシステムなら、AWSは安心して利用できるでしょう。弊社も大手メディアで毎年開催される番組サイトや、スポーツ系イベント・大会などの情報サイトをAWS上で運用をお手伝いしています。
【次ページ】AWS移行は「オンプレミス流」を求めると失敗する?
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