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  • 2016/04/21 掲載

第4次産業革命ではITこそが主役に、デジタル化がもたらす新ビジネスモデル競争

ローランド・ベルガー、シーメンス、SAPが集結

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第4次産業革命とも言われる「インダストリー4.0」は、決して製造業だけに関わるテーマではない。それは、デジタル化というメガトレンドに適応し、生き残るために、あらゆる企業が実行すべき具体的なアジェンダだ。後編では、インダストリー4.0がもたらす未来、IoTの可能性、IT部門の役割などについて、前編に続きローランド・ベルガー 長島 聡 社長、シーメンス 島田太郎専務、SAP 馬場 渉 バイスプレジデントが縦横に語り合った(聞き手はフロンティアワン 代表取締役 鍋野 敬一郎氏とビジネス+IT 編集部 松尾慎司)。
前編はこちら

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すでに「やる」と結論は出ている、問題は具体的な実行方法だ

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シーメンス
デジタルファクトリー事業本部
プロセス&ドライブ事業本部
専務執行役員 事業本部長
島田 太郎 氏
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ローランド・ベルガー
代表取締役社長
長島 聡 氏
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SAPジャパン
バイスプレジデント
Chief Innovation Officer
馬場 渉 氏
──IoTが話題になって、製造業のIT化、あるいはIT企業の製造業化といった動きが活発化しています。この動きに対するご意見をお聞かせください。

馬場氏:日本と海外の時代認識のギャップを感じます。海外では「製造業とITがナントカ」という段階はすでに終わっています。もう答えは出ているんです。あとはやるだけです。やると決まっているから、何とか乗り越えようと必死です。しかし、日本は、まだ「やる」と決まっていない企業が多い。

長島氏:日本はやるって決まっても、現場がついてこないというケースはありますね。

馬場氏:ボトムアップでもいいと思います。時間はかかりますが。重要なのは時代認識です。

島田氏:シーメンスもそうですが、戦略を立てるときは「メガトレンド」を重視します。メガトレンドとは、たとえば、グローバル化、都市化、人口構造の変化、気候変動といった確実に訪れる未来です。デジタル化もその1つで、それはすでに起こっています。それなのに、「製造業対IT」とか「ITと製造業が手を組む」とか、今さら何を言っているんだろうと思います。すでに現実なのだから、具体的な実行方法について話をしなければいけない。そもそも、ドイツがインダストリー4.0をはじめたのは、デジタル化に対応するためなのです。

 はっきりいって、インダストリー4.0なんかにビクビクしていたらダメですよ。デジタル化に対応するには、自社のプロセスをよく考えてモジュール化するとか、製造業の人たちなら、みんなわかっていることです。これまでずっと先送りしてきただけなんです。ですから、この機会に、これまで先送りしてきたことを全部やりましょうといいたいですね。

製造業の未来~10年後には何が待っているか?

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──少し話題を変えて、10年後、製造業にどんな未来が待っているか、想像を交えながらでけっこうですので、お話いただけますか。

島田氏:未来についての質問の回答は遠慮させていただきます(笑)。だいたい、原油がこんなに安くなるなんて、誰が予想していたでしょうか。

馬場氏:確かに、未来の予測は無理です。だから、メガトレンドをウォッチすることですよ。メガトレンドは必ず起きる未来だから、細かい違いはあっても必ず起こります。少なくともグローバルでやっていくなら、必ず起こる未来に備えて、他のグローバル企業がやっていることを、つべこべいわずにすべてやればいい。それはERPの標準化かもしれないし、ダイバーシティかもしれませんが、他がやっていることはすべてやる。

──長島さんはいかがですか。未来の製造業のイメージをお聞かせください。

長島氏:ソフトウェアが入ることで現場が考えなくなり、現場の人たちの強みが失われると悲しいですね。AIが発達して、人がどんどん代替されるという話もありますが、AIを使って人が進化することもありうると思います。たとえば、AIを使ったら、現場のおじさんが多くの機械を一度に使えるようになるとか、そういう時代になってほしいですね。さらに、もう少し先の話をすれば、AIによって人間の脳が刺激され、人間そのものが進化して、結局シンギュラリティ(Singularity)は起こらない、といった未来もイメージしています。

──確かに道具が進化したら、使う人間もレベルアップしますね。東京大学の暦本純一教授が、IoTの先には人の可能性を広げる「IoA(Internet of Ability)」の世界があると言っていますが、それと通じるところがありますね。

注目の新興国はどこだ? IoT発展の鍵を握るアクセプタンス

──新興国の中ではシンガポールがIoTの取り組みに積極的ですが、今後、注目を集めそうな国はどこだと思われますか。

島田氏:やはり教育水準の高いことが必要です。インドも注目ですが、州や階層によってデジタルデバイドが大きいのが気になります。IoTに関していえば、アクセプタンス(acceptance)が重要だと思います。IoTが発達するにはデータ活用が不可欠ですが、それに対して抵抗が大きい国は、やはり難しい。たとえば、中国の新聞を読んでいたら、クルマの自動運転に対して中国人の半分くらいはOKだそうです。しかし、日本人は数パーセントではないでしょうか。

長島氏:IoTのアクセプタンスという意味では、ブラジルあたりは高いと思います。インドネシアも、これから高くなりそうです。

──日本の自動車業界が、今後、自動運転にチャレンジするとしたら、ブラジルやインドネシアでやってみるのはアリでしょうか。

長島氏:ASEAN諸国なら、きっとたくさんあると思いますよ。あと、インドも出ましたが、やはり人材面が注目です。毎年、IT技術者が20万人ペースで増えて、5年で300%増加したそうです。

──人口という意味では、インドネシアも多いですね。

島田氏:いちばんの課題はインフラです。インフラが整わなければ何もできない。電力や水道が整備されていなければ、いくらiPhoneがあってもね。

馬場氏:世界全体を見渡せば、どこかは必ず成長します。そうなったら、リソースの奪い合いが起きる。優秀なタレントにしてもエネルギーにしても、あらゆる有限リソースの奪い合いです。すると、先進国は相対的に不利益を被ります。その備えが、日本はあまりに不十分だと感じます。

島田氏:外の厳しい状況を理解していませんね。いい温度のお湯につかっている。外は吹雪いているんですが。

【次ページ】インダストリー4.0でITが主役になる
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