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- 2015/03/17 掲載
数年で既存ERPは駆逐される――分散処理型クラウドERP「HUE」がもたらすユーザー体験
ワークスアプリケーションズCEO 牧野 正幸氏インタビュー
ワークスアプリケーションズCEO 牧野 正幸氏が語る
創業時に掲げた2つの理念
牧野氏:1996年に創業した時、理念を2つ掲げました。1つは日本企業のIT投資効率を世界レベルに引き上げること。もう1つは、高度な問題解決能力を持った人材、すなわちスマートクリエイティブに、成長と活躍の場を提供することです。
なぜ、日本でERPパッケージの提供を目指したのか。その動機は「あまりにも周囲がやらないから」です。もちろん、日本にも基幹業務を管理するシステムはありました。しかし、多くの日本企業は、独自開発システムにこだわり、アドオンなどで「従来の業務フローにマッチするようカスタマイズするのが当たり前」と考えていたのです。
その結果、日本のIT投資効率が著しく低下し、競争力を失ってしまったんですね。私はワークスアプリケーションズを創業する前は、外資系コンピューターメーカーでコンサルティングをしていましたが、日米の同じ規模の企業を比較すると、日本企業のIT投資効率は、米国企業の半分以下でした。
――海外のERPパッケージベンダーにとって、日本市場は魅力的ではなかったのでしょうか。
牧野氏:当時、私は日本進出を検討していたERPパッケージベンダーのコンサルティングをしていたのですが、すでに彼らは欧米のニーズを吸収し、最適化したパッケージ製品を持っていました。彼らは「自分たちの製品がERPのグローバルスタンダード」なわけですから、ERP市場の規模が小さい日本に対応するよう製品をカスタマイズしても、ビジネス的に“ウマみ”がないと思ったのでしょう。だから私は、「日本の商習慣や企業文化にあったERPパッケージがないのなら、自分たちで作るしかない。そして、日本企業のIT投資効率を世界レベルに引き上げたい」と考えたのです。
米国では優秀な人材ほどベンチャー企業を選ぶ
――すぐれたソフトウェアの開発には、優秀なソフトウェアアーキテクトの存在が不可欠です。創業時の理念である「クリティカルワーカーに、成長と活躍の場を提供すること」についてもお聞かせください。牧野氏:以前、シリコンバレーのベンチャー企業に出向していたことがあるのですが、そこには超高学歴で優秀な人材が集まっていました。彼らはストックオプション目当てでも創業者の理念に共感しているわけでもなく、「ベンチャーは自己成長の場所。ここで経験と実績を積んで、自分のキャリアを充実させたい」と考えていたのです。米国では優秀な人材ほどベンチャー企業を選ぶ傾向がありますね。
米国でベンチャーと定義されるのは、世の中を変えるイノベーションを起こす企業のことで、設立年数や人数規模ではありません。ベンチャーでは何でも自分たちでチャレンジしなければならないから、短期間で様々な経験ができるのです。そうした環境から既成概念を根底から覆すような製品やサービスが誕生する。配車サービスアプリの「Uber」などはその好例でしょう。
翻って日本はどうでしょうか。優秀な人材は待遇の良い大規模企業を選ぶ傾向が強い。IT業界を見ると、ソフトウェア会社やシステムインテグレーターは、企業情報部門の下請け的な業務が多い。これでは、優秀な人材は集まらないでしょう。本来、ソフトウェア開発はクリエイティブな仕事です。建築の世界で言えば、建築家の役割を担うべき存在なのです。私はソフトウェア開発のスマートクリエイティブたちが、確実に成長できる最高にエイサイティングな場所を作りたかった。だから、そのための投資は惜しみません。
新卒者の採用については、2000年初頭からインターン制度「問題解決能力発掘プログラム」を設け、優秀な人材を発掘しています。同プログラムには毎年4万人以上の応募があり、数年連続で「後輩にオススメしたいインターンシップランキング」で1位に選ばれています。なお、インターンで非常に優秀だった人材については、任意のタイミングでいつでも入社できる「入社パス」を発行しています。
今、人材発掘で注力しているのは、海外での人材発掘ですね。約6年前から中国やインドのトップレベルの大学から人材を採用しています。彼らはエリート中のエリートですから、オフショア的な現地採用ではなく、日本の社員と同様の報酬を支払っています。我々は毎年100名を越える人材を海外で採用していますが、企業戦略を考えれば、こうした優秀なグローバル人材を確保しないと、世界市場で戦えません。
【次ページ】牧野氏「HUE発表で、久々に日本が海外に先んじた」
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