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- 2015/01/09 掲載
IoTが促すモノづくりの変革、Boseも取り組んだクラウドを活用した新製品開発とは
IoTが促すモノづくり企業のビジネス革新
また、マッキンゼーはこれから世界を変えるであろう12の「破壊的な技術」(Disruptive technologies)をレポートとして公開しているが、その1つにIoTが挙げられており、2025年までに経済的な価値は年6兆2000億ドルになると予測した。これはクラウドや3Dプリンタを凌ぐ市場規模だ。
「PTC Live Tech Forum 2014」に登壇したロブ・グレムリー氏は、IoTが製造業にもたらす変革の本質を「モノ(製品)を売って利益を得るモデルから、モノによるサービスを提供するモデルへと転換すること」と指摘する。同社では、IoTによってネットワークに新たにつながるモノを「スマート・コネクテッド・プロダクト」と表現しており、これが「新しいマーケットの形成を促している」という。
PTCの社外取締役であるハーバード大学教授のマイケル・E・ポーター氏は、かつて「バリューチェーン」という概念を提唱したが、IoTによってバリューチェーンの定義そのものさえも変えざるをえないところまで来ているとグレムリー氏は説明する。
それに伴って、メーカーの製品開発も変わっていく必要がある。「従来、製品は機械と電気が融合しているものだったが、さらにインターネットにつながることで、設計分野が改善される可能性がある。物理的な機械製品は、スマート・コネクテッド・プロダクトを生み出すうえで必要条件だが、十分条件ではない。つまりソフトウェアやエレトロニクスによって、スマートの部分が追加されることで、必要十分条件になるということだ。実際にソフトウェアによって、機構のみで制御することが難しかった部分を容易にコントロールできるようになった」(グレムリー氏)。
ただし、このような開発を行うことになれば、製品自体も開発プロセスも複雑になってしまう。たとえば製品自体に組み込みソフトを実装するのか、あるいはクラウド上に組み込んでいくのか、またインターネットに接続される場合にも一対一か、一対多でシステムにつながるのか、多対多のメッシュ的な接続になるのか、そういうことで開発アプローチも当然変わってくる。
新機能を生み出す四分野とその活用事例
スマート・コネクテッド・プロダクトは、各種デバイスから実データを吸い上げ、それらをネットワークを経由して、フィードバックする。実環境での製品情報や使用状態を把握できるため、そのデータを設計部門に戻すことにより、製品開発や品質改善に役立つわけだ。これまで集荷前のテスト環境のみで実施していたものが、現実に使用される環境情報として得られるため、その有用なデータを開発現場にも活かせる。では、具体的にスマート・コネクテッド・プロダクトを組みわせたシステムには、どのようなものがあるのだろうか。グレムリー氏は、いくつかの実例を挙げて説明した。たとえば建設現場では、監督者が情報を一元管理できるようになる。農場では、作物に水を適切に供給する灌がいシステムや、土壌の状況によって種蒔きを判断するシステムなどにも利用されている。さらに「システムのシステム化」も可能になった。スマート・コネクテッド・プロダクトの新しいバリューとして、大きく監視、制御、最適化、自動化(自律化)の四分野で新機能を生み出せる。
監視分野では、遠隔の見守りシステムを提供できる。バイオトロニック社では、心臓にペースメーカーを装着して、その情報をすぐにネットワークで医者に伝えるホームヘルスサービスなどを実現している。制御分野では、ホームドアをコントロールし、家に誰が訪問したのか、スマホなどのタブレット端末で外出先から確認できる「DoorBot」のようなシステムも登場。このほか工場内の機械設備や、人が行きづらい鉱山の掘削機、油田のポンプ・バルブの遠隔制御にも利用できる。
また最適化という分野では、運転中に可能な限り可用性を向上することが可能だ。時間帯と需要に合わせてエレベータの運転をコントロールしたり、風力発電のグレードのピッチを最適に変化させることも遠隔で行える。さらにメンテナンスを考えると、予防保全もリモートで実現できる。最後の自動化(自律化)分野では、ボストンエンジニアリング社の水中ロボットなどの事例もある。これはマグロのような回遊ロボットで、自律的に目的地に着いたり、人が遭難したときに探索や救助が行えるものだ。
【次ページ】ハードウェアからソフトウェアへ開発プロセスも移行
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