ITIL準拠のインシデント管理ツールを「無料」にしたゾーホーからの提言
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ゾーホージャパンは、昨年11月にInformation Technology Infrastructure Library(以下、ITIL)準拠のインシデント管理ツールを無料提供すると発表した。このツールは、全世界で25,000社以上に導入され、小規模から大規模事業者まで、あらゆる規模のITサービスを支援するツールだ。先頃開催された「ITサービスマネジメントセミナー 2014」に登壇した同社の曽根禎行氏は、本ツールの無料版を提供した背景や、ITサービスマネジメントを企業に浸透させていく際に重要な点など、同社の考えについて説明した。
ゾーホーがITIL準拠のITSM支援ツールを無償提供した背景とは
ゾーホーは、南インドのチェンナイに本社を置くグローバル企業だ。1996年にAT&Tベル研究所の技術者が、前身となるベンチャーを設立。その後に現社名へ変更し、2200名の社員が全世界で働いている。同社の事業は、通信キャリアなどの大規模向けネットワーク管理システム開発基盤「WebNMS」や、一般企業向けIT運用管理製品「ManageEngine」、クラウド型ビジネスツール「Zoho」の3本柱から成る。本セミナーでは、企業のITサービスマネジメント(以下、ITSM)に特に関わりの深いManageEngineを中心に紹介した。
この製品の特長は大きく3つある。1つ目は、マニュアルを読まなくても分かる画面設計で、利用者の負担を低減できること。2つ目は、導入から運用に至る総コストが大幅に抑えられることだ。3つ目は、日欧米を中心に10万社以上の導入実績があること。インド発ということもあり、これ以外にも中東圏や南米圏などにもビジネスを展開し、グローバル基準を前提とした製品を投入している。
ManageEngineには「仮想サーバ/アプリケーション監視」「ネットワーク監視」「ITIL/ヘルプデスク」「特権/証跡管理」という分野で各種製品が用意されている。このうちITIL/ヘルプデスク分野のITSM支援ツール「ManageEngine ServiceDesk Plus(以下、ServiceDesk Plus)」は、ITIL準拠のインシデントツールとして、2014年11月よりStandard Editionの無償提供が開始されている。では、なぜ今回このツールの無償化に踏み切ったのだろうか?
曽根氏は「これまでITILに対応したツールは高額だと思われていました。実際のところ、ITSM支援ツールの導入を検討しても、コストが足かせになって進まなかったケースも多いと聞きます。そこで我々は、ServiceDesk Plusを無償化し、さらにITIL認証基準のPinkVERIFYで認定も受けました。本格的なITIL準拠ツールを無償提供することで、社会に貢献し、企業や事業規模を問わず、ITILにチャレンジするキッカケづくりにしたいという思いがありました」と背景を説明する。
投資リソース全体のなかで貢献度が小さいITSM支援ツールの真価とは
では、ServiceDesk Plusは、ITSM支援にどのように役立つのだろうか? その前に、まずISO20000とITILの関係について把握しておく必要があるだろう。曽根氏は、これらの関係についても説明した。
そもそもISO20000は、高品質なITサービスによって、組織の価値向上を可能にするITSMシステムの国際規格である。一方のITILは、ITSMのベストプラクティス集として、ITサービス提供のガイドラインとして作成されたものだ。2000年にBSI(英国規格協会)がBS15000をITILプロセスとして規格化し、その後これをベースに、ISOがISO20000を策定したという経緯がある。
「ITILとISO20000は、基本的に同様のものと考えてもよいのですが、異なる点もあります。簡単にいうと、ITILは教科書にあたるもので、ISO20000はその教科書をベースに、正しくITサービスが運用されていることを外部から認めてもらうための基準になります」(曽根氏)。
一般的にITSM支援ツールの導入というと、サービスデスクツールを導入する場合が多い。実はITILの主要プロセスに対し、サービスデスクツールでカバーできる範囲は全体の2割ほどで、それほど多くはない。たとえば、ITILでは5つのライフサイクルが定義されているが、ツールで対応できるのは「サービストランジション」「サービスオペレーション」と、これらのアウトプットを利用した「継続的サービス改善」の一部分のみだ。7ステップの改善プロセスのうちデータの「収集」「処理」「分析」という3ステップの支援に対応している。
ITILでは3つの“P”、すなわち「Process」「People」「Product」という要素を、40%、40%、20%ずつ、バランスよく割り当てないと、ITSMの成熟度を上げることは難しいと言われている。ここで外部リソースとしてのツールが貢献できるところはProductの部分だ。曽根氏は「つまり支援ツールは、全体リソースのうち20%程度の貢献となります。結論としては、ツールだけを導入してもITサービスの最適化は図れません」と指摘する。
では、そのような状況において、ITSM支援ツールが真価を発揮できるのは何だろうか? 「ITSM支援ツールを導入することで、まず案件の進捗状況がリアルタイムに分かり、管理しやすくなります。案件記録や状況把握も正確かつ迅速になり、結果として生産性も向上するのです。さらにナレッジの活用によって、担当者のスキルと作業品質の向上に寄与できるわけです」(曽根氏)。
ITSM支援ツールはトータルコストの安い製品を選ぶべし
このように曽根氏は、ITSM支援ツールが全体リソースの20%程度の貢献であることを示したうえで、同社のServiceDesk Plusの立ち位置について示した。「支援ツールには全体の20%しかリソースを割り当てないのが理想的なのであれば、できるだけ低コストの製品を選んだほうが良いというのが我々の見解です。ServiceDesk Plusは、低コストで提供できる代表的なITSMツールだと自負しています。ライセンス費用については、他社製品と比較しても5分の1から3分の1程度です。さらに、私達が業務整理やツールの設計などの導入支援を行ったとしても、少ない工数で導入できるので初期投資も抑えられます。実際に国内では、業種を問わず多数の有名企業で導入されており、コストや工数の削減に貢献しています」(曽根氏)。
ServiceDesk Plusは、エンドユーザーとのコミュニケーションのチャネルとして、セルフサービスポータル画面をサポートしている。ここでメールや、Webフォーム、電話を通じて、不具合や問い合わせなどの受付記録を管理できる。加えて、監視ツールからのアラート入力もサービスデスク側に自動で記録できる。インシデントの原因追求には問題管理を、ITリソースの追加やリプレースには変更管理/構成管理を利用して、組織のITSMレベルを向上できる。こうしてエンドユーザー、サービスデスクオペレータ、社内マネージャ、技術担当者、ベンダーのなかで、円滑に情報を共有できる仕組みになっている。
あらためて同氏は、ServiceDesk Plusの特長について触れた。「他社と比較するとライセンスや保守サポート費用が圧倒的に低価格であることがわかるかと思います。ITILにおいてもツールのコーディングを伴うカスタマイズは推奨していませんが、我々のツールはもともとITILの管理プロセスに則った機能を装備しているため、コーディングに関わるカスタマイズは不要です。また、画面設計も直感的で分かりやすいため、ITSM支援ツールの導入が初めてでも、他ツールからの乗り換えでも、操作方法の習得が容易となります。このほか29言語の同時利用が可能であることから、サービスデスクの1次オペレータを国外に置いているお客様や海外に事業展開しているお客様からも好評を博しています」(曽根氏)。
ServiceDesk Plusの提供形態については、いわゆるオンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドという形態から選べる。
最後に曽根氏は「ServiceDesk Plusの導入をご検討の方向けに製品紹介セミナーを毎月開催していますので、ぜひ機能の説明や操作体験を通じて、使いやすさを実感してください」とアピールして、セミナーを終えた。
ITサービスマネジメントツール「ManageEngine ServiceDesk Plus」公式サイトはこちら
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