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野村総合研究所(NRI)が12月に実施した全業種599社の大手企業へのIT活用に関する調査によれば、「ITが競争優位につながるコア技術」と考える企業ほど、事業創造や変革へのIT活用と、IT分野での新技術活用に積極的であることがわかった。
野村総合研究所(NRI)は28日、日本企業におけるIT(情報技術およびそれを利用したシステム)活用の実態を把握するために2013年12月に行ったアンケート調査の結果を発表した。日本の売上高上位企業3000社の情報システム担当役員、情報システム部門長宛てに調査票を郵送し郵便にて回答を得た(有効回答数は599社)。
調査によれば、ITが果たす役割によって、企業を4つのタイプに分けて分析すると、「ITが競争優位につながるコア技術」と考える企業ほど、事業創造や変革へのIT活用と、IT分野での新技術活用に積極的であることがわかった。
調査では、企業でITが果たす役割によって、「ITが競争優位につながるコア技術でありかつ基幹設備であると考える企業(コア・基幹)」「コア技術であるが基幹設備ではない企業(コア・非基幹)」「コア技術ではないが基幹設備である企業(非コア・基幹)」「コア技術でも基幹設備でもない企業(非コア・非基幹)」(それぞれが当てはまる企業の割合は、33.7%、19.9%、37.9%、7.5%)の4つのタイプに分けて分析した(下図参照)。
日本企業全体のIT投資は、横ばいから微減へ。ITがコア技術の企業では増額する企業も
日本企業全体のIT投資を2007年度から比較すると、2008年度の金融危機(リーマンショック)で低下して以降、2009年度から2012年度まで増額する企業が増え、緩やかに回復基調だった。その後は横ばいで、2014年度についての予想では、「減らす」と回答する企業の割合が15.6%から18.0%へとわずかに増加した(
図1)。
タイプ別では、“コア・基幹”で2014年度のIT投資を増額すると回答した企業が40%と他のグループに比較してやや多いものの、増額率は2013年度よりも下がっており、減額する企業も増えた。他のタイプでは、“コア・基幹”よりも増額する企業は少なく、しかも増額する企業の割合が2013年度よりやや減っていた(
図2、
図3)。
ITをコア技術とする企業は、ビジネスの変革のための投資の比重が大
IT投資の総額が増えない中で、投資配分の適正化に向けて既存システムにかかる費用の削減が行われていることがわかった。いずれの企業でも、「IT基盤の見直し」「業務機能の棚卸」、「過剰なサービスレベルの見直し」「アウトソーシングの活用」「業務アプリケーションパッケージの活用」による費用の削減が行われ、IT投資配分の適正化の内容は、タイプによって大きな違いはなかった。ただし、ITがコア技術である企業のほうがより適正化の努力をしていることが伺えるという(
図4)。
その結果、年間のIT費用をRUN(ビジネスの維持)とCHANGE(ビジネスの変革)に分けた比率を見ると、“コア・基幹”“コア・非基幹”はRUNが67%、“非コア・基幹”“非コア・非基幹”は75%で、ITがコア技術である企業の方がビジネスの維持のための費用を削減し、変革のための投資にお金を回していることがわかった(
図5)。
「事業創造」「変革」「新技術活用」のいずれもITをコア技術とする企業が積極的
IT活用のテーマでは、「業務効率化」「業務標準化」「経営管理機能強化」はどの企業にとっても重要とされているが、「事業・サービス創造」は“コア・基幹”の企業で特に重要とされ、他のタイプとの差が顕著にあらわれた(
図6)。
事業価値の創出につながる変革の達成状況についてみると、「改善的な変革の実行(既存の機能や方法を基本的に変えずに行う変革)」はタイプによってあまり差は見られなかったが、「計画的な変革の実行(既存の機能や方法の抜本的な見直しや、新たな機能を新たな方法で実現する変革)」と「変革のためのIT活用度合」は、ITをコア技術とする企業の方が高い傾向が顕著となった。
IT分野における新技術の活用では、多くの企業において、システムをスリム化、低コスト化する技術である「オープンソース」「クラウド」の利用が、業務の柔軟性・俊敏性・創造性を高める技術である「SOA」「アジャイル開発」「ソーシャルリスニング」よりも導入が進んだ。いずれの新技術についても、ITをコア技術とする企業ほど積極的に導入しているという。(
図7)。
「IT人材」「CIO」「経営者の参画」のいずれも“コア・基幹”が充実
いずれの企業でも、「IT専門人材」の育成が重要と回答しているが、ITをコア技術とする企業では、ITを活用した変革をリードできる「ゼネラリスト」と「プロジェクト推進者」の重要性が相対的に高く、一方、“非コア・非基幹”では、IT人材としてのキャリアパスが無い企業が多いことがわかった(
図8)。
いずれの企業でも、「情報システム担当役員」がCIOである場合が多くなっているが、ITをコア技術とする企業の方が、その割合が高くなった(
図9)。“ コア・非基幹”“非コア・基幹”では、「経営企画担当役員」がCIOを兼務する企業がやや多く、 “非コア・非基幹”ではCIOが「いない」という企業が多い傾向が窺えた。
“非コア・非基幹”以外では、IT専門委員会を設置する企業が40%を超えているが、ここでも、“コア・基幹”では、専門委員会に経営者が参画する企業が30%あり、他のタイプの企業より進んでいることが判明した。
ITを自社のコア技術として位置づけ、積極的に活用しようとする企業と、そうでない企業とが2極化する傾向が見られ、業種などによってITが事業において果たす役割に違いはあるものの、こうしたギャップを埋める施策が必要になってきていると考えられるという。
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