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  • 2012/11/05 掲載

発信ではなく「聞く」ことで生まれるコミュニケーション──凄腕ライターが教える仕事とキャリア

『会話は「聞く」からはじめなさい』著者 上阪徹氏インタビュー

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3000人もの人へ取材を行ってきたライターの上阪徹氏の最新刊は、『会話は「聞く」からはじめなさい』(日本実業出版社)だ。自身の経験に基づき、ビジネスからプライベートまで「聞く」ことの大切さを示し、そのコツやヒントを伝える内容となっている。豊富なインタビュー経験を持つ上阪氏に、今回の著書からこれまでの歩みについてまでを若手ライターの加藤レイズナ氏が伺った。

どんなに機嫌が悪くても、落ち着けば話してくれるもの



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『会話は「聞く」からはじめなさい』

──今まで3,000人以上にインタビューをしたと、著書の『会話は「聞く」からはじめなさい』にあって、驚きました。もう想像もつかないです。

 上阪 徹氏(以下、上阪氏)■今はずいぶん減りましたけど、30代前半の時期は、ものすごかったです。1日10人に取材して、それを3日連続とか。

──うわあー! 取材のない日がない。

 上阪氏■50~60人インタビューしていた月もあります。

──それ、原稿をまとめる時間はどうやって……?

 上阪氏■原稿は夜、作られるんです(笑)。若かったからできた。今考えるととんでもない。もう戻れないです。

──上阪さんは大学卒業後、リクルート・グループを経て、95年からフリーライターとして活動しています。リクルート時代からインタビューは多かったのですか?

 上阪氏■企業の採用広告を作っていたので、制作に必要な情報をもらうために、企業の社長や人事担当者によく取材していました。リクルートにいた時間は5年半なんですが、その間にたくさんの人に話を聞きましたね。

──それだけ多くの人にインタビューをしていると、中には最初から機嫌が悪い人とかもいますよね。僕も経験があるんですけど、そういうときにはどう対処すればいいのかなと。

 上阪氏■広告では、お客さんがお金を払って、僕たちは必要な情報をもらいにいく。いってみれば、業者です。ですから、お金を出している側の人事担当者や、決裁権を持っている人の中には「俺がお金を出してやっているんだから」みたいな態度を示されたり、厳しい対応をされることも時にはあるわけです。僕が作った広告じゃないのに、「君の前の担当者が出した広告の効果が悪い!」「人がぜんぜん取れないじゃないか! お前の会社どうなっているんだ!」と怒られたこともありました。

──そういうところからインタビュー人生が始まっている……。かなりヘビーですね。

 上阪氏■逆にそれが良かったと思っています。メディアは広告で成立していて、クライアントがいるからこそ自分も報酬をもらえているのだ、という現実も理解できましたし、取材をさせてもらえるありがたみを知ることもできました。だから、フリーになって、大手経済新聞社系の雑誌記事の仕事でインタビューに行ったときは驚きましたよ。広告のときとは、まるで違う。

──「上阪さま、お待ちしておりました」みたいな。

 上阪氏■そうそう(笑)。あれー、対応全然ちがうぞ!? って。厳しい取材に慣れていましたから、おかげで取材にはあまり困ったことはないですね。とりわけ著名人の取材では、みなさん、とてもいい人たちだという印象を持っています。謙虚だし、丁寧だし、サービス精神旺盛だし。成功されている人ほどそうですね。だから、嫌な思いをすることはまずないです、例外もわずかにありますけど。質問しても答えてもらえなかったり。

──え、そうなんですか!?

 上阪氏■時代の寵児だった著名な経営者の方ですね。

──飛ぶ鳥を落とす勢いの時に取材なさったわけですか。

 上阪氏■はい、絶頂期に。それで、なにを聞いても「なんで答えなきゃいけないんですか?」っておっしゃるんですよ。

──事前にアポを取って、インタビューとして時間をもらっているんですよね?

 上阪氏■もちろんです。しかも、講演とセットになった高額のギャラも支払われていた。ですから、「私もビジネスで来ているので、しゃべってくれないとお互い困りますよ」と話を進めていきました。でも、そういうのは珍しいケースですね。だって、そもそも取材を受けた段階で、向こうはしゃべる気持ちでいるはずなんですよ。私がインタビューするのは、取材を受けるのも相手にとっては仕事でありビジネス、という場がほとんどですから。

──しゃべる気がないのに、なんで取材を受けたんだと。

 上阪氏■だから、仮にどんなに最初は機嫌が悪かったとしても、そのうち落ち着いてしゃべってもらえると思っています。そういえば、このあいだ、夏休みの「小学生新聞記者」の講習会で、取材についての講演をしたんです。そこで、「話を聞くときは緊張するかもしれない。でも、取材を受けてくれたということは、しゃべりたくて来ているわけだから、遠慮なく聞いていいんだよ。わからないところがあったら、何回聞いてもいい。わからないで進めるほうが失礼だから」と言いました。そうしたら子どもたちがその後からバーっと聞くようになってくれて。「聞いてみたらしゃべってくれた!」とうれしそうに言っていました。これは大人のインタビューも同じだと思っています。

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