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米IBMは20日、今後5年間で人々の働き方、生活、関わり方を一変させる可能性を持った一連のイノベーション「Next 5 in 5」を発表した。この発表は今年で6回目となる。これによれば、今後5年の間に、人の心を読むことが可能になったり、迷惑メールが価値あるお知らせになったりするとしている。
Next 5 in 5は、人々の生活を一変させる可能性を持つ市場・社会の動向やIBM研究所が持つ新しいテクノロジーを基に提示するもの。
今回IBMが発表したのは、次の5つ。
- 誰でも発電
- パスワードは不要に
- 人の心を読むことが可能に
- デジタル・デバイドのない世界に
- 迷惑メールが価値あるお知らせに
まず1つめの近い未来として挙げたのが、自分で作ったエネルギーが誰でも使えるようになるということ。ウォーキング、ジョギング、サイクリングや、自身のパソコンからの熱、水道管を流れる水など、動くものや熱を発生するものであれば何でも、貯めておけるエネルギーを作り出せる可能性を持っている。
今後、再生可能エネルギー技術の向上により、今は無駄にしているこれらのエネルギーを個人が集め、家庭、オフィス、街への電力供給に利用できるようになるという。
具体的には、自転車の車輪のスポークに取り付けた小さなデバイスが、ペダルを漕ぐとバッテリーに充電するような仕組みが考えられるという。自転車で好きなところに移動するついでに、自宅の照明の電力の一部を作ることができる。
現在アイルランドのIBM研究者は、波の力を電力に変換することによる環境への影響を最小化する方法を研究しているという。
2つめの近い未来として挙げたのが、パスワードが不要になるということ。顔認識、網膜スキャン、音声ファイルなど、DNAによって合成された生体情報が個人のアイデンティティーの鍵であるように、近い将来それが個人を守る鍵、たとえばオンライン認証のカギになる。
マルチファクター生体認証と呼ばれるこの技術は、リアルタイムに情報を集約することで、情報にアクセスする際は毎回生体情報を確認し、本人の生体情報と照合して認証する。また、懸念されるセキュリティを考慮し、提供する生体情報は各個人が指定することができるとしている。
これにより、何種類ものログイン・パスワードを作成、管理、記憶しておく必要はなくなる。具体的には、銀行のATMで自分の名前を名乗るか、あるいは網膜のパターンを読み込む、小さなセンサーを覗き込むだけで安全にお金を引き出すことができるようになるとしている。また、同様の方法で、モバイル端末やタブレット端末からも残高の確認などができるようになる。
3つめの近い未来として挙げたのが、人の心を読むことが空想から現実になるということ。今までSFファンの空想でしかなかったが、近い将来現実のものとなりそうだとしている。
人間の脳と、コンピューターやスマートフォンなどの機械をリンクさせる方法が研究されているが、IBMの科学者もこの研究に携わっている。これが実現すれば、話したい相手を思い浮かべるだけで、電話をかけられるようになったり、カーソルの移動先を思い浮かべるだけで、画面上に表示されているカーソルを操作できるようになるという。
バイオインフォマティクス分野の科学者たちはすでに、脳の電気的活動や、表情、興奮、集中の程度などを計測できる高度なセンサーが付いたヘッドセットを考案しており、それを利用すれば、人が何をしようとしているのかが行動前にわかるようになるという。
IBMは5年以内に、ゲームやエンターテインメント分野でこのテクノロジーの初期の応用事例を見ることができるとしている。また、医療分野でも脳の活動パターンを調べ、脳梗塞後のリハビリや自閉症などの脳疾患の研究に役立てられるようになると考えられているという。
4つめの近い未来として挙げたのが、デジタル・デバイドのない世界になるということ。
グローバル社会では、いかに多くの情報にアクセスできるかで経済の成長と豊かさが左右される傾向が強まっている。これが、モバイル・テクノロジーの発展により、5年後には情報を持てる者と持たざる者の差は大幅に縮まるという。
現在の世界人口70億人に対して、5年後にはモバイル端末の出荷台数は5.6億台に達すると見られ、世界人口の80%が1台ずつモバイル端末を持つことになる。モバイル端末価格の低下に伴い、これまで買うことができなかった人々も今後はモバイル端末を手に入れ、さまざまなことができるようになる。
たとえばインドでは、音声技術とモバイル端末を活用して、読み書きのできない地方の村人たちが、端末に録音したメッセージを介してコミュニケーションできる仕組みをIBMが実現。以前は手にできなかった情報を得られるようになったことで、村人は天気予報を確認して農作物に肥料を散布する時期を決めたり、医師が村を訪れる日程を確認したり、また農作物や商品の最適価格を決定したりできるようになったという。
今後は、より多くのコミュニティーがモバイル・テクノロジーを活用して重要な情報にアクセスし、モバイル・コマースや遠隔医療などの新しいソリューションやビジネス・モデルの恩恵を受けられるようになるとしている。
最後、5つめの近い未来として挙げたのが、迷惑メールが価値あるお知らせになるということ。5年以内に未承諾広告はよりパーソナライズされた内容になり、スパムは事実上根絶されるという。
同時に、スパム・フィルタの精度も上がるため、不要な売り込み広告からは解放されるようになるとしている。もし、カレンダーに登録しているスケジュールに合わせて、お気に入りのバンドのチケットを発売開始と同時に予約できるようになった場合、通知を受け取り次第、モバイル端末からすぐにチケットを購入することができる。また、搭乗予定の飛行機が大雪の影響を受けそうな場合に通知を受け、航路を変更することができるようになった場合も同様に自身の行動に変化を与えるだろうという。
IBMはソーシャル・ネットワークやインターネットのユーザー嗜好など、人々の生活のあらゆる側面から得られるデータを解析して統合し、各ユーザーに最適な情報を提供できるリアルタイム・アナリティクスを活用したテクノロジーを開発しているという。
ユーザーはこのテクノロジーによって、ニュース、スポーツ、政治など興味のある分野の情報を受け取り、活用できるようになるとしている。
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