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地域別スマートグリッドの実態
富士経済では、同調査による地域別のスマートグリッドの実態について、下記のようにみている。
米国
まず、米国におけるスマートグリッド構築計画は、2009年2月の米国再生・再投資法(ARRA)の成立により様相が一変しているという。一挙に100件の投資プロジェクトと36件の実証プロジェクトに各予算の50%までの助成金が付くこととなった。計画が具体化するとともに、選ばれたプロジェクトはそれぞれの期限内の実行が事実上、保証される形となった。米国再生・再投資法の予算は380億ドルで、その内45億円がOE(エネルギー省配電・エネルギー信頼性局)を通じスマートグリッドやエネルギーインフラのセキュリティ強化、電気供給の信頼性向上のために投資されるという。
欧州
欧州のスマートメーター導入促進の動機は、スマートグリッド以前に、メーター検針の近代化とEU域内でのメーター仕様の共通化でだったという。2006年にEU首脳会議で採択されたエネルギー最終消費の削減目標を定める“エネルギーサービス指令”では一般消費者の省エネを促すために電子メーターによる計測が必要であるということを強く打ち出すようになり、加盟各国にスマートメーター導入の義務化・スケジュール化を要請することとなった。しかし、同指令を国内法に移す期限(2008年5月)を過ぎても、加盟国の大多数はまだそれを行っていないという。
各国の対応の仕方の違いから、欧州のスマートグリッド構築計画は、1)指令の出される前からその国内法制化とは関係なく進められてきたプロジェクト、2)指令の国内法制化によりスマートメーター導入が既に義務化され、タイムスケジュールも決められている国でのプロジェクト、3)義務化とは直接関係なく、公益事業者などの判断で進められているプロジェクトに分類。
スマートグリッドを導入するための研究開発を目的として、2010年に送電および配電事業者は、9年計画の欧州研究開発/実証試験プログラムを発表した。このプログラムでは、送配電事業者、関連市場参入事業者、研究所、大学などにより、2010年から2018年にかけ20億ユーロの投資が見込まれているという。
アジア圏
アジア圏でのスマートグリッド構築は、現状ではまだすべて実証試験レベルで、今後の計画についても、公益事業者によって具体的に立てられたものは少ない状況。なお、中国では2015年までに2億7,000万台の既存のメーターを、また韓国は2020年までに都市部の既存のメーターを、2030年までには国内1,800万台のすべてのメーターをスマートメーターに取り換える計画を打ち出している。
日本
2010年度より経済産業省主導で「次世代エネルギー・社会システム実証事業」が実施される。予算規模 1,000億円(5年の総額)、地方自治体と国、企業が一体となった全国5,000世帯が対象となるビックプロジェクト。電力各社もスマートグリッド推進部門を設置しており、スマートグリッドが動き始めているという。
富士経済では、「日本型」スマートグリッド像の確立が、2010年から2011年に掛けてのテーマとなると考えられるとみる。ポイントとなるのは分散型電源(太陽光発電システム中心と見込まれる)からの逆潮流が電力系統に与える影響を最小限にすること。
許容値を超えた逆潮流は蓄電池に貯める方法や、必要に応じて配電網をメッシュ化することで逆潮流の影響を逃すといった考えなど、さまざまな対応が想定される。現時点で実現性が高いのは蓄電池の有効活用と考えられる。分散型電源を保有する個人が蓄電池を購入(投資)する必要があるのか、電力会社が投資するのか、政府が補助金を出すのか、といった議論が今後進むと考えられるとしている。
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