竹中工務店、清水建設、大林組、鹿島建設らの描くクラウドビジネス
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一般的なユーザーはクラウドの実体を意識する必要はないが、システムやサービスの提供者からすれば、それは物理的な存在であるデータセンターということになる。もはやITを語るには、経営戦略、プロセス、システムだけでなく、ファシリティの要素を抜きに語ることはできない時代になってきた。そんな時代を反映し、竹中工務店、清水建設、大林組、鹿島建設らゼネコン各社のアーキテクトやエンジニアによる次世代データセンターに関するパネルディスカッションが開催された。
データセンターは都市型・地方型に分化する
7月9日に開催されたAPC by Schneider Electric SOLUTIONS FORUM 2010では、「ITとファシリティの融合」と題して、大手ゼネコン4社のアーキテクトやエンジニアが集まって、最新のファシリティ技術を取り入れた次世代データセンターに関するパネルディスカッションが行われた。モデレータは、東京大学大学院 情報工学系研究科 教授 江崎浩氏が務めた。江崎氏は、クラウド時代のITはデータセンターを抜きにして語ることはできず、そのデータセンターを設計、構築するには、ゼネコンならではの取り組みや手法があるのではないかと述べ、5年後の日本のデータセンターは、どうあるべきか、またはどのような方向に進んでいるのかを、4社の専門家に話を聞いて議論を深めたいと、パネルディスカッションの目的を説明した。
最初に意見を述べたのは、竹中工務店 エンジニアリング本部 データセンター推進担当副部長 後神洋介氏だ。後神氏は、同社独自のデータセンターとして2層フロア構造を紹介した。2層フロア構造とは、従来フリーアクセスとして確保していた床下部分と、下の階の天井裏スペース部分を一体化し、その部分に空調のエアフロー、各種の配線や設備を配置するというものだ。現在、データセンターの床下部分は高圧の空調ダクトとして高床式の構造が多いが、これを下の階の天井までの空間とつなげることでスペース効率を上げようというものだ。このとき広がった床下部分の壁面にはトラス構造で補強しておく。こうすると、床荷重が上がり、柱を減らすことでサーバルームのスペース効率がよくなる。さらに、床下の空間が広がることで、大量のエアをゆっくり流すことができ空調効率も上がる、などといった効果が期待できる新しい施工方法だという。この床下空間は人が立って作業できるほどの高さになるが、当局の指導に従い、建築基準法における建物の床面積には含めなくてもよくなっているそうだ。
ユニット化が進む次世代データセンターファシリティ
後神氏の発表を受け、江崎氏から「都市型のデータセンターとしては多層階のニーズは高く興味深いが、グリーン化などでは郊外や地方のデータセンターも増えているのではないか」と質問が出された。これに対して、鹿島建設 iDCプロジェクト室 室長 市川孝誠氏から、米国ではニューヨークにデータセンターを作るブームの時代があったが、最近では隣のニュージャージー州に広がりつつある現実を示した。しかし、それでもサーバを都心に置くニーズは高く、「日本の場合は地方型と都市型の2極化が進むのではないか。」との考えを示した。
次に清水建設 技術ソリューション本部 iDCプロジェクト室 室長 郷正明氏が、自社のデータセンターへの考え方を発表した。清水建設では、データセンターは、常に最先端であることを重視し、ユニット化による柔軟性や拡張性に重き置いているという。設計、建設に数年かかる建築、ファシリティビジネスでは、足の早いIT業界と比較すると、建物ができたころに設備が陳腐化してしまう危険性もあるといい、空調、サーバ室、UPSなどをユニット単位で考え、複数のレベルの設備が混在、あるいは拡張できる設計を行っているそうだ。郷氏は、ユニット化の考えを進めるとコンテナ型データセンターがわかりやすい例だが、清水建設でのユニットは、スパンごとにユニットを構成させたりラック単位で対応したり、ユーザーの多様なニーズに応えられるようにしているという。
江崎氏は、このようなソリューションは、10年、20年という単位で建物を考えるゼネコンにしかできないアプローチではないかと述べ、長期的な戦略として重要性が高いとした。郷氏は、「その反面、ユニットごとの制御が複雑になり、可視化技術やマネジメントにIT技術の導入が不可欠となる」と受け、さらに、スモールスタートが可能でスケーリングも自由なデータセンターファシリティへのニーズが高まると、ゼネコンといえども建物を売って終わりではなく、ランニングのビジネスモデルを重視するようになるのではないか、という認識も示した。
【次ページ】日本型のデータセンター施設基準が必要
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