• 2009/10/05 掲載

【連載】ザ・コンサルティングノウハウ(11):生産性向上ノウハウ

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社内コンサルタントの育成を目指す企業が増えている。その狙いは、経営に資するIT戦略の策定や、コンサルティング営業による勝率・利益率の向上、グローバルグループ会社に対する本社支援力の強化などさまざまである。しかし多くの企業では、コンサルタントの育成はうまく進んでいない。この理由は、コンサルタントが、分析技法や方法論などの技術修得によって育成されるという誤解にある。コンサルタント育成に重要なのは、技術ではなくノウハウである。この連載では、コンサルティング会社の実態をもとにしたストーリー形式で、コンサルティングノウハウの存在とパワーを示す。

コンサルティングの生産性を向上させるノウハウ

【セキュリティ】

アクト・コンサルティング
取締役
経営コンサルタント
野間彰氏


山口は、2週間後にシステム・インテグレータB社の社長に会うことになった。B社案件については、直接部長の難波がアレンジし、シニアコンサルタントの岩崎はノータッチだ。山口はこの2週間、徹底的にシステム・インテグレータ業界の情報収集を行った。仮説構築の材料である、事例や視点を得るためだ。何といっても、自分がかつていた業界だ。山口は、「難波の前で、ぶざまなことはしたくない。これまで得たコンサルティングノウハウをすべて使って、一矢報いたい」と思っていた。

A社プロジェクトの方は、中間報告以来、クライアントの会議で岩崎が中心に発言するようになっていた。山口は、岩崎の指示に従い資料をまとめたり、クライアントと岩崎のディスカッションを横で聞いたりしていた。 「A社はケチがついたから、もういい。B社に集中しよう」山口は、そんなことを考えていた。

山口は、A社では自分の力のなさを思い知らされた。しかし同時に、考えることから開放され、ほっとしていた。今考えてみると、プロジェクトの前半、すべてを任されていた時、山口は何をしていいかわからなかった。何を考えればいいかもわからなかった。ABCコンサルティングには、標準コンサルティング・メソドロジーなどないのだ。だから1日中、腕を組んで考えていた。そして、苦し紛れに作り上げた成果は、ことごとくクライアントや岩崎からバツがつけられた。

山口から見る限り、岩崎は腕を組んで天井を見上げたりしていない。その場で考えているとしか思えないスピードで、てきぱきと山口に指示を出し、クライアントをリードし、そして他のプロジェクトに行ってしまう。山口は、岩崎が何故そのような高い生産性でコンサルティングを進められるか、理由が知りたかった。

A社プロジェクトも終盤に差し掛かったある日、岩崎はA社からの帰り道、山口にこう言った。

「考えないのは、楽かい」

図星の山口は、返事ができなかった。

「プロジェクトは佳境に入った。これから僕は、クライアントの前では手を抜かない。それでも君は、クライアントの前で君の存在価値を示さなければならない。そうでないと、君のこのプロジェクトでの貢献度はリサーチャー並になる」

岩崎の言う「貢献度」とは、岩崎が山口に配分するA社プロジェクトの売上のことである。ABCコンサルティング社では、プロジェクトを受注したコンサルタントがプロジェクトのリーダーとなり、そのプロジェクトにメンバーとして参加したコンサルタントやリサーチャーに、プロジェクトで得た売上を配分する。配分の権限は、リーダーにある。メンバーがどんなに残業をしようが、どんな分厚いレポートを書こうが、貢献度が低いとリーダーが評価したメンバーには、配分は少なくなる。そこで、高い売上のプロジェクトを得、効率よくメンバーを使ったリーダーは、自分に配分できる売上が増える。実力のある若手コンサルタントやリサーチャーは、リーダーから多くの配分を獲得し、自分の得る売上が増える。売上の低いプロジェクトを受注したリーダーには、メンバーは寄ってこない。このようにして得た年間売上合計が、コンサルタントの人事評価の基準となる。

すべてお金で判断する。そこでこの制度は、コンサルタントの能力やプロジェクトの品質がなおざりになるようにも見える。しかし、実力があるコンサルタントは、クライアントに高い価値を提供できるから、当然高い売上額のプロジェクトを受注できる。そのようなリーダーのプロジェクトは、当然品質も高い。なぜなら、リーダーを評価し、仕事を頼むかどうかを決めるのは、眼力のあるクライアントの経営者だからだ。厳しいが、合理的な評価制度なのである。

ABCコンサルティング社には、このような売上によるコンサルタントの評価以外に、プロジェクト終了後クライアントにお願いする「顧客満足度評価」もある。これは、ABCコンサルティング社のコンサルタントの上司が、直接クライアントに出向き、顧客の満足度と、各コンサルタントの評価を聞くものである。コンサルタントのパフォーマンスは、クライアントの前で行われている。コンサルティングの結果は、成果物ではなくクライアント経営者の意思決定である。だからコンサルタントの実力を見るには、ABC社の社内でのコンサルタントの行動以外に、顧客の評価が必要なのだ。

岩崎に、配分する売上はリサーチャー並みになると言われた山口は、だからといってかんばる方法がわからなかった。

「どうすれば、岩崎さんのようにてきぱきと、プロジェクトがこなせるんですか」

山口の問いに対する岩崎の答えは、意外なものだった。

「吐くほど考えるんだ」

「岩崎さんは、少なくとも横で見ている限り、吐くほど考えているようには見えないですが」

「答えが見つからず、寝られないこともある。コンサルタントは、誰かと話している時以外は、ほとんど考えている」

この話を聞いて、山口は少しだけ楽になった。岩崎は、何かマジックを使っているわけではなかったのだ。しかし山口にとって、事態は何も改善していない。

「僕は、考えるべきことがわからないです」

山口は、正直に言った。

「それは、仮説を持っていないということだ」

「しかし、岩崎さんが言うように事例や視点の知識がない以上、そんなにすぐに仮説ができる訳がないですよ。新任コンサルタントは、知識がないという前提で、うちは組織運営を考える必要があると思います。まず重要なのは、新任コンサルタントを育成するプログラムの開発です。その方が、わからないところで苦労させるより、若手の育成スピードは向上するはずです」

「できない理由を言うために、頭を使うな。君はすでにA社プロジェクトで3カ月検討している。最終報告で、社長にどのようなメッセージを言うか、仮説がないとは言わせない。社長に会えるのはおそらく2時間以内だ。こちらからの説明は、1時間半程度だろう。君は、そこで1時間半、何を説明するつもりだ」

「その仮説が考えられない場合は、どうすればいいんですか」

「仮説は、考える執着心、知識、視点からの触発によって生み出される。前に説明しただろう。君は、考える執着心は持っているだろうから、知識を充実し、視点を得る努力をするべきだ。君と僕の、知識や視点蓄積の差は、君が考えている以上に大きいよ。僕と同等の仮説が作りたければ、寝る間も惜しんで、これらを充実することだ。それなくしていくら腕を組んでも、仮説などできない。はっきり言って、ここのところ、君は何の努力もしていない」

たしかに山口は、岩崎が前面に出てきたのをいいことに、A社プロジェクトでは、ただ言われたことをやっている。あるいは、ただ情報をまとめているだけで、何もクリエーションしていない。これは、ABCコンサルティングにおいては、何もしていないことに等しい。『新たなクリエーションができないのならば、君らより外注を使う。そのほうが数段安い』。岩崎は、リサーチャーの時から山口達にそう言ってきた。

「B社の準備に力を入れるのはわかる。是非、B社は受注してきてほしい。だからと言って、A社は手を抜いていいわけではない。君にわかってほしいのは、僕達コンサルタントが求められている生産性だ。将来君がシニアになれば、並行していくつかのプロジェクトをこなしながら、複数のプロモーションも行わなければならない。そうでないと、君のチームは回らない。急にそのような生産性が身につくわけがない。今の内に、そのような能力を身に着けるんだ。そのためには、自分を追い込むことも必要だよ」

「それほど生産性向上が重要なら、何故うちには標準コンサルティング手順書がないんですか」

「僕たちが、標準的な手順で解けるような、簡単な命題を解いていないからだ。成長期に、手順教育コンサルタントというビジネスがはやっていた。経営環境はこのようなフレームワークで収集しましょう、このようなチェックリストに従って強み・弱み・機会・脅威に分けましょうといった戦略策定手順を提供し、教育によってこれを実践させるんだ。その時代には、経営に関わる技術が現在ほど普及していなかったし、成長期だったから、極端な話し大した戦略がなくても成長できた企業も多かった。だから、こういうビジネスが成り立っていた。僕の知る限り、大手企業には現在、そのような手順の需要はない。市場環境が厳しくなり、ただ漫然と手順に従えば解けるような命題はないからだ。そういうクライアントを相手にするコンサルタントに、画一的な手順書があっても役に立たないだろう。むしろそのような手順書は、コンサルタントのオリジナリティーを減退させる」

「そのかわりに、コンサルティングノウハウがあるわけですか」

「そのとおり。今まで君に教えたコンサルティングノウハウを応用すれば、プロジェクトごとに最適なコンサルティング手順を作るというコンサルティングノウハウだってあみ出せるよ。簡単なことだ。ビジョンを仮説し、現状とビジョンのギャップである課題を明確化し、課題解決の手順を作るというものだ。我々コンサルタントが用いる手順は、(1)視点を確保し、(2)仮説を構築し、(3)これを検証して革新策を作るという『大きな流れ』のレベルでは同じだ。しかし、その中身は、プロジェクトごとに異なる。ビジョン仮説で明確化した課題は、この『大きな流れ』の詳細部分を決定するために使える」

「たとえばどういうことですか」

「システム開発の世界では、(1)現状を分析し、(2)要求を把握し、(3)システムを設計し、(4)プログラムを作り、(5)テストをして、(6)移行するだろう。これは『大きな流れ』だ。たとえば、原価管理のシステムを作ろうとしている会社がある。このシステムによって目指すビジョンを、開発前に仮説できない場合、標準システム開発手順に従い、作業計画を作ることになる。しかしこれでは、このシステム特有の課題を想定し、これに対応する作業や工数を用意できない脅威がある。原価管理システムへの投資は、何らかのリターンを生み出さなければならない。ビジョン仮説とは、このリターンを生み出すために、どのようなシステムをどのように活用するかを、開発に着手する前に想定することだ。詳細な現状分析をしなくても、経営幹部へのインタビューや、先行してシステム開発に成功している企業の事例調査などから、重要なビジョンは作れる。たとえば、製品ごとの収益が捕らえられておらず、赤字製品を売っている脅威がある場合、これを改善できる。返品が横行しているが、返品に関わる原価が本社費の中に埋没しているため、利益を垂れ流している場合、これを改善できる。返品問題の解決の場合、返品に関わる物流費が製品ごとに捕らえられる仕組みが重要になるから、この領域の分析や設計に時間をかけなければならない。また、返品は押し込みセールスが原因だから、営業部門の意識改革をシステム開発と並行して行わなければならない。このコンサルティングノウハウは、『プロセス・クリエーション』と呼んでおこう。プロセス・クリエーションは、理屈は簡単だが、とても頼りになるコンサルティングノウハウだ。この意味は、実践すればすぐにわかるよ」

「岩崎さんは、プロジェクトの度にプロセス・クリエーションを行っているのですか。類似するプロジェクトのやり方を、そのまま持ってくることはないんですか」

「必ず毎回、プロセス・クリエーションをする。結果的に、過去のプロジェクトと類似するやり方になることもあるが、それは結果だ。君も知っているとおり、経営コンサルタントは、クライアントの競争相手から、クライアントと同じテーマのコンサルティングは受託しない。だから、まったく同じ方法で解決できるプロジェクトが起きる可能性は低い。A社で君も経験したとおり、技術戦略の策定といっても、その中身は千差万別だ。だから、作り上げるビジョンの仮説は、プロジェクトごとに異なる。B社のコンサルティング・プロモーションで、いやでもやらなければならない。楽しみにしているといい」

山口は、うなずいた。

「それから、すでに君にはわかっていると思うが、当社のノウハウ共有の仕組みをメソドロジーの階層、つまりコンセプト、メソッド、プロセス、ツールで見るなら、使っているのは第一階層の『コンセプト』だけだよ。さっき示したプロセス・クリエーションの場合、コンセプトとは、『先の先まで見通して進め方を創造する』となる。コンセプトをプロセスやツール(チェックリストなど)に展開する必要はない。何故なら、コンサルタントは、コンセプトをメソドロジーの全階層へ展開する能力を持っているからだ。だから、あえてメソドロジーを誰かがまとめ、紙に書いて標準化する必要はない。逆に、紙にして普及させる必要がないから、膨大な量のコンセプトを共有できる。必要なメソドロジーを機動的に生み出せるんだ」

「コンサルタントの生産性を上げるコンサルティングノウハウは、あるのですか」

山口の問いに、岩崎はしばらく考えた。

「ある。『視点がなければ、外へ行け』。これがコンサルタントの生産性を向上させる第1番目のコンサルティングノウハウだ。意味はわかるね。難問を解くとき、知識や視点が少ないと、何を考えるかわからず考える。つまり、腕を組んで天井を見上げるんだ。これは、何も考えてないのと同じだ。やがて時間がなくなる。破滅のシナリオだよ。このような時は、考えるのをやめる。無駄だからね。そして、先行企業に行ったり、専門家に会ったり、徹底的に事例を調べたりする。そうすれば、考える視点や仮説構築材料である事例が充実し、いい仮説が作れる。『視点不足による頭の空回り』が防止できるんだ。君は、宇宙ステーションのシステムにトラブルがあって、太陽電池のパネルを太陽に向ける制御ができなくなった時、これを解決する仮説をいくつ作れるかい。このままでは電気が供給できず、乗組員は生きていけない」

「急に言われても。…わかりません」

「僕は、ロシアの人工衛星で、実際にこのような問題が起きたのをニュースで見て知っている。その時実際に行った解決策は、1つは船外活動で太陽電池のパネルを人が動かす方法だ。もう1つは、地球に帰還するために積んでいるロケットブースターを噴射させて、人工衛星の方向を変える方法だ。少なくとも、このような知識があれば、少しはましな仮説ができるだろう。君たちは、考える執着心や、論理的な思考方法はすでにマスターしている。あとは、知識と視点の充実だ」

「なるほど」

「コンサルタントの生産性を向上させる2番目のコンサルティングノウハウは、僕達の成果物が何かを認識することで、明らかになる。山口君。僕たちの成果物は、なんだい」

「報告書。調査レポートですか」

「ちがう。メッセージだ。革新策を理解してもらうのも、意思決定を支援するのも、すべてメッセージだ。極端な話、必要な数字はその場で読み上げてもいい。重要な概念は、その場でホワイトボードに書いてもいい。報告書ができても、結局クライアントは、報告会で僕らが言葉で示す提案に対して意思決定するだろう。君は、視点や知識獲得、メッセージ創造、レポート作成に、どのような比率で時間を割いている」

「レポート作成が50%、残りが50%くらいです」

「君は、山の頂上に行く前に、下り始めているんだ。最悪の場合、レポートはいらない。与えられた時間のすべてを、妥当なメッセージの創造に使うつもりで、徹底的に考えるんだ。そうでないと、どこへ行くか決めていないのに、車を発進させているようなものだろう」

「その辺は、ちゃんと考えているつもりですが」

「では聞くが。来週A社の今後の推進体制を決める会議があるね。推進体制の案は、僕との議論の結果を君がまとめている。昨日見せてもらったが、なかなか凝った図だ。今回a技術の開発部門、a技術を搭載した機械を製造販売する部門、a技術を使ったサービス事業推進部門それぞれが関わるから、それら3つの組織を調整する会議体と調整責任者を置く案を作っているね。それじゃあ、この調整責任者の人事評価は、何に基づいて行うべきか。それは何故か。君は言えるか」

「前回の岩崎さんとの打ち合わせでは、そこまで検討していません」

「しかし君は、調整会議の図を作成しているだろう。クライアントは、当然疑問に思うよ。きれいな図を用意する前に、詰めるべきことが残っているんだ。詰め残しを放っておくと、生産性が悪化する。詰め切る前にレポートを作ろうとするのは、考えるべき時間をつまらない成果物のレイアウトや表現方法に消費してしまうことだ。詰めがあまいから、誰かにレビューを受ければやり直す部分が出てくる。クライアントにもって行くと、詰め残しをクライアントに指摘され、タイム・マネジメントができなくなる。結果、時間切れで会議に積み残しが出、スケジュールが遅れる。また、クライアントから信頼感を失って、その後コミュニケーションリーダシップを取るのが難しくなり、ますます生産性を悪化させる」

「この間教えてもらった、『メッセージ・ファースト』ですか」

「『メッセージ・ファースト』と言ってもいいが、あれは調査方法を決めるノウハウとして整理しておこう。僕は先輩に、『詰めきるまで動くな』と教わった。これが2番目の生産性を向上させるコンサルティングノウハウだ。『突き詰めるまで動くな』を使うと、プロジェクトの作業の一部を、クライアントにやってもらうこともできる。これも、コンサルタントの生産性向上方法だ。たとえば僕が、A社の分科会で、クライアントに社外の情報を収集し、原価低減策を作ってもらうお願いをして受け入れられたね。君は、つめ切らないでお願いをしたから、クライアントから猛反発を受けた。僕はあの時、クライアントの現状を、彼らは今までドラスティックな技術革新を経験していないから、技術情報は待っていれば部材メーカーが持ってきてくれるというパラダイムに安住していると仮説した。そこで、積極的に外へ勉強に行くというビジョンと、この現状とのギャップつまり課題を、『外に行く効果を体感してもらう』と置いた。課題解決策として、資材購買部門に依頼し、積極的に部材メーカーに働きかけることで得られる、技術情報を事前に準備してもらった。そして、『外に行くと勉強になるでしょう』というメッセージと共にこれを示した。僕がいなければ、君はクライアントを動かせなかっただろう。そうすると、自分で調査したり、事務局と一緒に悩んだり、本来クライアントにやってもらえれば済むことに、時間を使うことになったはずだ」

山口は、自分では十分詰めた後で成果物を作っているつもりだった。しかし、岩崎の指摘したとおり、山口の詰めは、あまい。山口は、自分が『突き詰める』達成水準が理解できていないと思った。

「岩崎さんの言われるように、僕の詰めがあまかったことは認めます。しかし、どこまで詰めれば、つめ切ったといえるのでしょうか」

「実行して効果が上がるところまでだ。たとえば先ほどの組織の場合、これから提案する組織を、クライアントの検討チームが納得する。これが社長に提案され、承認される。実際の組織革新が行われる。必要な人材の再配分が行われる。新しい組織が動き始める。成果が生み出される。その間に、関係者にどのように伝え、どのような課題が発生し、それをどのように解決するか、すべて見通すことだ」

「すべてですか」

山口は、あきらめたように言った。

「クライアントの組織には、目指すべき方向が明確になった時、それを達成しようとする『展開力』がある。クライアントの展開力で対応できるところは、彼らにまかせばいい。コンサルタントは、クライアントの『展開能力』の及ばないところだけを見通せばいい」

「たとえば、どういうことですか」

「たとえば、設計時に製造や保守のメンバーも参画して、製造や、保守コストの削減方法を設計に盛り込む、つまりコンカレントエンジニアリングを達成しようとしている企業があるとする。この企業が、業務革新は今まで継続的に実施しおり、革新の方向が決まれば自律的にそれを実現できる人材が揃っているなら、課題は革新策の必要性を現場が認識する、実行時にトップが組織を鼓舞するリーダシップを発揮する、推進事務局が難題に萎える現場を元気付ける知恵を生み出す、となる。そこで革新策の策定段階で、たとえば実際に製造、保守の人材を設計に参画させる施行を実施し、この革新策の効果を現場に納得させるといった施策を実施する。あとはクライアントの展開力で革新は進む。ところが、継続的な自己革新に挑戦していない中小企業がコンカレントエンジニアリングを実施すると、関係部門が集まって何を議論すべきか、エンジニアリングのリーダーは、複数の部門の意見をどのように調整すべきかといった課題があがる。それぞれに答えを準備しなくてはならない。それは、継続した当社の支援であったり、あるいはそのような経験のある人物のヘッドハントだったりする。結局これも、知識と視点が必要だ。企業買収、新規事業立ち上げ、事業構造の変革など、それぞれの革新策ごとに、実行して効果を上げるための押さえどころがある。徹底的に事例を勉強するんだな」

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