- 2009/03/09 掲載
【セミナーレポート】今こそ情報共有基盤の強化で社員力を活かす
2月25日開催「不況下の企業経営に求められるIT戦略セミナー」
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部下の成長を支える
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まず森戸氏は 「脱工業化が進み、知識資本時代を迎えた現在の人材育成にあたっては、ナレッジマネージャーが部下を支えるという考え方が重要なキーになる」と切り出した。
「総務省の統計では、受け手が取ろうとして受け取れる情報=選択可能な情報の流通量は、平成8年から数えて10年間で530倍にふくれあがっているといいます。企業はこの中からどんな情報を選び活用するのかという、いわば情報の目利きをする必要があるのです。あふれる情報をつねにウォッチして、その中から市場の変化の予兆や新しいニーズを敏感に感じ取っていけない企業は生き残ることができません」と森戸氏は言う。
そうした情報競争力を持った人間を、企業の中に育てなくてはならない。そうした時代のナレッジワーカー育成を担うのが、情報の目利きを行える管理職、すなわち“ナレッジマネージャー”だと森戸氏は強調する。
「ビジネスをスピーディかつ効率的に動かすには、社内外に流れる大量の情報の中から何が必要で何が不要かを適確に見分け、部下に示していく能力が必要です。しかしこの“目利き”は、豊富な業務経験がなくてはできません。そこで、中間管理職がナレッジマネージャーとして部下を支えていくことが求められてくるのです。もちろん最初から回答を教える必要はありませんが、部下が何か新しい仕事を始める際に、事前のアドバイス&事後フォローは必須と考えてほしいのです。今の若手は、きちんと教えれば成果を出す能力は持っています。そのためにナレッジマネージャーがみずからリードし、かつ後押しをして支えてあげることが大切です。つまり、下から支えるリーダーシップこそが現在は重要なのです」。
グループウェアは有効なツール
森戸氏は、情報システムの活用ポイントについても言及する。
「ここでまず覚えておいてほしいのは、『データ』と『情報』は違うものだという事実です。情報とはデータをある意図を持って加工したものであって、ここを理解していないと、ビジネスに使える情報システムは作れません。ここでもナレッジマネージャーの役割が求められてくるのです」。
ナレッジマネージャーは、あふれる情報を精査し自社や自部門の業務に必要なデータを選び出し、使える形に編集・加工した上で情報システムに加えていく。森戸氏はこうした情報蓄積のための身近なツールとして、グループウェアの有効活用を提唱する。
「しかしながら、ほとんどの人はまだグループウェアの使い方を間違ったままです。自分のスケジュール帳としてしか考えていないマネージャーも多いのが現状です。しかし本来グループウェアは、そこにある情報を共有するためのツールであることに気づいてほしいのです。管理職が自分のスケジュールを書き込むというのは、『この日ならば空いている。みんなの相談に乗ったり、営業に同行できる』というメッセージでなければなりません。よくぎっしりと予定を書き込んでいる上司がいますが、これは『君たちの相手をするヒマはない』と拒絶を示しているようなものです。そうではなく、グループウェアを使ってマネージャー層が自分の時間を若手や部下にシェアする意志を見せることが、スタッフの行動を促し組織の活性化につながります。このことを理解すれば、グループウェアの使い方も効果も大きく異なってくるはずです」。
個人スキル&組織IQを向上させよう
グループウェアは、組織のコミュニケーション促進や教育にも強力なツールだ。
「マネージャー層にあって若手にないものは経験です。若手はどうすれば成功できるのか、情報を欲しています。そこでグループウェアを使って、先輩の成功体験を伝え共有していくことは有効です。ナレッジマネージャーが、自分の過去の経験を現在の状況に即して分析・整理して提供できれば、部下は情報の見方や使い方を学び取り、みずから考える力を養っていけるようになるでしょう」。
このように、グループウェアを情報共有ツールとして中心に据えながら、「マネージャーによる情報の精査・提示→共有化」を繰り返し行っていくことで、社内に「ワークプレイスラーニング」の好循環が生まれてくると森戸氏は語る。
「経験のない若手でも適確な情報があれば、それをもとに仮説を立て行動を起こすことができます。このトライ&エラーのサイクルを回し続けていくことで若手に経験値が蓄積され、どんな状況の変化にも柔軟に対応できる次の世代が育っていく。こうした仮説から行動へのサイクルを、できるだけ多く繰り返させることがスキルアップにつながり、それを加速するためにもグループウェアは有効です」。
最後に森戸氏は、「一人ひとりの能力を伸ばしていくのは重要ですが、この多様化・複雑化した時代に唯一の正解などありません。その時その状況に応じて変化しながら最大の顧客満足を引き出す『納得解』こそが求められるべきです。それには各人が自立したビジネスパーソンであると同時に、個人の枠を超えて組織全体で学習し、考え、行動できる組織が必要になってきます。学習する組織とは、個人と組織のビジョンを融合させ、そこで共有されたビジョンを全体で達成できる能力を持った組織のことです。個人の能力開発とチームでの学習能力向上を通じてシステム的な思考力を養うこと。そのためにグループウェアなどのITを効果的に活用することが『組織IQ』を高める道だといえます。これを実現できた企業こそが、これからの困難な時代にあってサバイバビリティを獲得していくことができるのです」と力強く語り、セッションを締めくくった。
それぞれの情報活用を意識することが成功への第一歩
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「100年に1度といわれる経済危機を背景に、IT投資を含む大幅な経費削減が各方面で進んでいます。しかしこのような時代だからこそ、情報システムに対する投資を止めてよいのかよく考えていただきたいのです。無駄な出費の抑制・削減の一方で確実な成長領域を見きわめ、そこに投資していくことが、厳しい時代にあって新たな情報価値の創造を可能にします」。
その実現のポイントとなるのが、2つの情報活用だと近藤氏は指摘する。
「“守りの情報活用”と“攻めの情報活用”という2つの情報活用の局面を意識することが必要です。まず増大する情報を的確にマネジメントし、かつセキュリティなどのリスクをコントロールすることで社内の情報管理・コミュニケーション基盤を強化すること。これが“守りの情報活用”です。次に景気回復を先取りできるよう、その社内基盤に立って全社レベルでの情報共有と可視化のためのシステムを整備し、今後の情報活用に向けた布石を行うこと。これが“攻めの情報活用”です。この両者をそれぞれ意識した上で、自社の情報活用を考えていくことが成功への第一歩となるでしょう」。
5つのポイントを押さえて変化に強い企業体質作りを
近藤氏は、この不況を勝ち抜くためのIT投資として下の5つのポイントを挙げる。
1. 経費・設備投資の削減:情報を極力電子化し、統合的な管理を可能にして無駄を排除する。
2. 業務の効率化:組織間の情報流通を活性化して情報共有を促し、同時に情報収集を効率化して本来のナレッジワークのための時間を作る。
3. 人材流動化への対応:情報の共有基盤を整備し、個人に死蔵された情報資産の活用と継承を図る。
4. 情報の流出防止:情報漏えいを未然に防ぐための対策を徹底する。
5. 新規ビジネスの創造:情報をもとに顧客価値の仮説立案と検証のサイクルを確立し、収益改善につなげる。
以上の具体策を通じて、経済環境や事業環境の変化に強い企業体質を作る情報管理・コミュニケーション基盤を構築し、攻めの情報活用を実践すること(例:Webなどのチャネルを活用しお客さまへ必要な情報を的確に発信することで売上拡大へつなげていくことやパートナー支援など)による企業価値の向上、経済価値の向上を達成することが、最終的な目標だと近藤氏は結論づける。
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セッション終了後の質疑応答では、満席の参加者から両スピーカーに複数の質問が寄せられるなど、厳しい経営環境の中で情報管理・活用に寄せる関心の高さが改めて伺われた。
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