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- 2008/10/09 掲載
内部統制最前線(2):日立製作所の内部統制、After J-SOXへの取り組み(前編)(3/4)
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日立製作所 情報・通信グループ 経営戦略室 新事業インキュベーション本部 企業改革分野 担当部長 谷岡 克昭 氏 |
谷岡:まず私の立場ですが、私自身は、After J-SOX研究会の運営委員や産業系団体のIT内部統制専門委員会などの役割を担いつつ、本社の内部統制監査部門やIT戦略部門とコミュニケーションを取ることで得られる情報を活用しながら、メディア対応・啓蒙活動を行ったり、グループ内では製品ソリューション事業部隊と連携して内部統制の健全な普及に役立つビジネス企画を担ったりしています。自社内にありながらも、客観的・独立的な観点を持って日立グループ全体の動きや市場動向などを見たりしながら日本版SOX・内部統制に関わっています。
情報共有については、社内はもちろん運営方針として情報共有を図るとともに事業部長会議などの進捗状況の共有、あるいはインターナルコントール委員会の状況もイントラネットで公開されています。社外への情報開示という意味では、最近、数は減りましたが日立グループの内部統制整備の取組みということで多々の紹介場面がありましたし、CSR報告書などにも体制の開示を行っています。
戸村:日立製作所ではNYSE(ニューヨーク証券取引所)上場の関係で、先駆けて本家の米国版SOX法(US-SOX法)対応をしていらっしゃいました。その点を少しお聞かせ下さい。
谷岡:私どもの米国版SOX法対応のスタートは2004年の1月頃になります。ですから、2年の猶予期間を終えた2006年が我々の本番初年度でした。2006年の評価結果を2007年の7月頃に、2007年の評価結果を2008年7月頃に提出したわけですから、これまでに計2回の内部統制の報告をしたことになります。現在は、米国版SOX法対策の3年目に入っています。
戸村:米国版SOX法対策の経験を、日本版SOX法対策においてどのように活かしていらっしゃるのでしょうか?
谷岡:米国版SOX法に着手した2004年には、日立グループには上場子会社が20近くありました。いずれは日本版SOX法に取り組む必要性に迫られるだろうと当初より考えました。米国版SOX法の場合は、日立製作所がグループ連結上、まとめて内部統制の有効性評価・報告をするわけですが、その傘下にあるグループの子会社・上場会社と日立製作所内の各グループで、米国版SOX法対応のオペレーションをやっておけば、その後の日本版SOX法対応においても各上場子会社がスムーズに対応ができるというわけです。その点では、米国版SOX法対策と日本版SOX対策はほぼ同時進行で進んだと言って良いでしょう。米国版と日本版では、枠組みに若干の差異はありますが、基本的な考え方、および現場での取組みは変わりません。
戸村:同じく、NYSE上場のトヨタも、米国版SOX法における404条対応のまま日本版SOX対応を進められるようです。しかし、トップダウン・アプローチで対象範囲(スコープ)を数字の独り歩きで誤解されがちではあるものの、いわゆる連結売上高の2/3基準なるものをベースに絞るという日本版SOX法対応であれば、ボトムアップ・アプローチでかなり網羅的にスコープを広げていた米国SOX法対応とは、まったく逆のアプローチを迫られたはずです。その点では、御社はどう考えてどのような工夫をされたのでしょうか?
谷岡:米国版SOX法対応という点では、私どもはスコープを90%まで広げました。日本版SOX法対応では、連結売上高の2/3というのは、よく定番で言われていますが、そこは参考例として示された一定のポリシーにしか過ぎないと考えています。また、日本版SOX法が議論されていた当初、実施基準についても曖昧な憶測が飛び交っていたため、スコープとしては90%までカバーしておけば大丈夫だと考えました。日本版SOX法対応ということで、やみくもにスコープを絞るとか米国SOX法より手を抜くとかといった対応はほとんどやっていません。両国の制度上の若干の違いはあっても、基本は投資家保護や企業の健全性の向上を大切に、日立グループをステークホルダーからの信頼性向上に努めてきました。のちに米国版のほうもリスクアプローチ的なやり方に制度がかわっていきていますので、評価範囲の重点化という考え方も採用しています。
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