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  • 2008/08/14 掲載

SaaSもアプリケーションの一形態--テックバイザージェイピー 栗原氏

キーパーソンが語る「SaaS」の未来とその可能性

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2006年から「SaaS」というキーワードに着目し、当時から「SaaSとASPに本質的な違いなし。ASPにはあまりビジネス的に成功できなかったという悪いイメージがあるのでそれを避けるために、ベンダーがマーケティング上SaaSという新しい言葉をプロモートしている」という主張をするテックバイザージェイピーの栗原潔氏。今もその主張に違いはないのだろうか?注目すべきポイントも含めて、話を伺った。
所有から利用へのシフトがSaaSの本質

栗原 潔氏

テックバイザージェイピー
代表取締役
弁理士
技術士(情報工学)
栗原 潔氏

情報通信技術の動向、IT投資、知的財産権に関するコンサルティング業務と弁理士業務を並行して行う。 専門分野は、ITインフラストラクチャ、ソフトウェア・アーキテクチャ、ビジネス・インテリジェンス/データウェアハウス、ソフトウェア特許など。

──SaaSとASPの本質的な違いとは何だとお考えですか?

 ASPとの本質的な違いはないと思います。確かに細かい話をすると、SaaS( Software as a Service)は「マルチテナント方式(注1)」で、1つのアプリケーションで複数のユーザーが利用できるため、効率が良いという利点がありますが、これは本質的なポイントではないと考えています。どちらもソフトウェアを購入して自社コンピュータに導入するのではなく、ネットワーク経由でソフトウェアの機能を使うという基本モデルは同じです。つまり、「所有から利用へのシフト」がその本質と考えてよいと思います。そういう意味では、SaaSもASPもOn-Demandも同じで、あまり単語に気を使う必要はないでしょう。もちろんマーケティング用語としてのSaaSは、今一番注目が集まっていますから、キーワードとして使うことに問題はないと思います。

──では、SaaSがマーケティング用語として普及してきた背景は?

 マーケティング用語としての普及は、コンセプト自体の普及と同義であると考えてよいと思います。背景の1つに「ネットワークの高速化」が挙げられます。そもそもコンピュータの世界では、データをどこに置くか、どこで処理を行うかということは、その時代のテクノロジーによって変わってきました。メインフレームの時代は大型コンピュータが高価であったため、1台のコンピュータを中央に置き、複数ユーザーがタイムシェアリング方式でアクセスする方法しかありませんでした。その後、安価なPCが普及し、クライアント・サーバの時代になると、ネットワークの遅さが問題になり、今度はなるべくユーザーの近 くにデータを置こうという考え方になりました。今ではコンピュータもネットワークのコストも安く、大きな問題になりませんが、人件費は依然高いままです。人件費、つまり管理コストを下げるには、できるだけデータやアプリケーションを集中化する必要があり、「分散から集中への回帰」という現象が起きています。

 また、もう1つの要素としてアウトソーシングの動きもあるでしょう。昔のようにすべてを自前で行うのではなく「選択と集中」という考え方が重要になってきました。企業は自社が得意とするコア領域に特化し、それ以外をアウトソーシングするようになりました。そう考えていくとSaaSもアプリケーションのアウトソーシングの一形態です。アプリケーションも基盤も運用管理もすべてをSaaSプロバイダに任せる、かなり進んだアウトソースの形といえるでしょう。このようにテクノロジー的な変化と、選択と集中というビジネス上の要請が合わさり、現在SaaSに大きな注目が集まっているわけです。

──アプリケーションにも変化が現れているようですが?

 SaaSといえば、Salesforce.comが典型的なプロバイダだと思います。そのため、CRMなどのビジネスアプリケーション分野での展開が今後も中心になると思います。それに加えて注目すべき動向は、オフィスアプリケーション、いわゆるワープロやスプレッドシート、プレゼンテーションなどの機能をSaaS型で提供しようという流れです。最も代表的なのは「Google Docs 」ですが、そのほかにも米AdventNetの「Zoho」など、新興企業がオンライン・オフィスアプリケーションを提供しており、最近注目を集めています。


(注1)マルチテナント方式
1つのシステムやアプリケーションを複数の企業が共用するサービス形態のこと。従来は1社が1つのシ ステムを占有するシングルテナント方式だった。

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