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- 2008/06/05 掲載
迷惑メールの経済的損失、特電法改正のポイント--日本データ通信協会 専務理事 大島氏
【ITキーパーソンインタビュー(15)】
財団法人 日本データ通信協会 専務理事 大島 正司 氏 |
経済活動においてICTがなくてはならないものだということは、すでに皆さんの共通認識になっているでしょう。ビジネスを成り立たせるだけではなく、ICTをいかに活用し、経営に役立てていけるかが、ビジネスの成否を左右することさえある時代です。そうした情勢を背景に重要視しなければならないのが「セキュリティ」でしょう。特にインターネットでビジネスを展開している企業にとっては、企業の生き残りを左右する重大な課題です。
――セキュリティの重要度が高まっているにもかかわらず、情報漏えい事件は後を絶ちません。原因はどこにあるのでしょうか?
情報の持ち出しを禁止するルールがあっても、持ち出してしまう状況がビジネスの現場にはあるということです。重要なのは「作ったルールに基づいて行動させる」ことです。そのためには厳しい罰則を盛り込むと同時に、本当にルール通りに運用されているかどうかを監査する必要があります。しかし、どうしても情報を持ち出さなければならないシーンがあります。そうしたリスクの存在をきちんと理解し、情報を持ち出す場合には上司の承認を得たり暗号化を施すなどのリスク管理を徹底しなくてはなりません。
また、ルール作りと同時に行わなければならないのが、従業員への教育です。ビジネスの現場にいる方々は「この情報が外に出たらどうなるか」ということを認識していないことが見受けられます。情報漏えいが企業の信頼を著しく阻害し、企業存続にも関わる問題だということを、研修などを通じて伝え、従業員の意識改革を進めなければなりません。
――テレコム・アイザック推進会議などを通してセキュリティの啓蒙を行っているようですが、成果などがあればお教えください。
テレコム・アイザックは、1団体や1企業の枠を超えてネットワークのセキュリティの向上に取り組んでいる団体です。多様な業界から多彩な意見を出し合う場にもなっています。NTTやKDDI、ソフトバンクといった通信会社、サービスプロバイダやICTベンダーといった民間企業をはじめ、総務省や情報処理推進機構(IPA)といった団体までが情報共有する業界横断的な組織となりました。これにより、セキュリティの脅威の発見や対策において、1企業や1団体だけではできないことを実現できています。総務省・経済産業省連携プロジェクトとなったボット対策のためのCCC(サイバー・クリーン・センター)も1つの成功例と言って良いと思います。参加ユーザー、参加企業から集められたボットの情報をJPCERTコーディネーションセンターなどが解析し、ツールを民間企業が提供。さらにIPA(情報処理推進機構)がボット感染予防を促し、テレコム・アイザックがボット対策システムを運用するといった業界横断的なアクションを実行する、という大きなサイクルが確立されました。常に新しい脅威にさらされている以上、業界横断的な対応を実施することで、対応の幅が広がってくると思います。
また、こうした取り組みが奏功している背景には、ICT業界にかかわる皆さんの危機感があるのではないかと考えています。インターネットには良いところもたくさんあるけど、怖いところもたくさんある。昨今のセキュリティの脅威は明確に金銭的な目的を持っていると聞きます。正常にビジネスを進めていくために、みんなで対策をしていかなければいけないという危機感を、それぞれの立場で感じているのではないでしょうか。
ネットワークは高度化し、利用範囲も広がり続けています。新しいビジネスの世界だけではなく、電子政府など身の回りのことがすべてネットワークで完結するようになっていく可能性も高くなってきています。そういう世界になればなるほど、これまで私たちが知らなかった部分が次々と出てくるでしょう。現在の状況に対しては、テレコム・アイザックは一定の効果を示していると思いますが、今後の新しいネットワークの仕組みや脅威に対しても、同じように対応していかなければならないのではないかと感じています。
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