- 2008/02/26 掲載
【速水健朗氏インタビュー】拡散する自己啓発と自分探しムーブメントを読む(2/2)
速水健朗氏
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速水氏■手帳に書くことが必要かどうかはともかくとして、夢をもったりするのは大切ですよ、そりゃ誰しも仕事は辛かったりいやだったりするでしょう。それは僕だってそうですし。
ただ、そのために読むべきものが自己啓発本なのか、と疑問に思う。あなたが読んでいる自己啓発本はこういうカラクリもあって、本当にあなたの人生にとって前向きな指針なり夢なりを与えるかどうかに関しては疑問もありますよ、と。それは言っておきたい。
脇の甘いヤツがいるから甘い言葉で搾取しようぜっていう姿勢は、資本主義においては「ビジネスチャンス」と呼ばれるわけですし。
――本の中では梅田望夫さんにも言及しています。彼の言う「好きを貫け」という言葉は、フリーターやワーキングプアを生む要因でしょうか?
速水氏■現実世界でワーキングプアになるんだったら、今のインターネットの世界では新しい経済ができているんだからこっちにおいでよ、というのが梅田氏の主張でしょ?梅田望夫がネットで支持されている理由の肝って、たぶんそこだと思います。
「あちら側」と「こちら側」という言葉を用いて、「気付き」をもって「あちら側」へ行けば幸せになれるよって、僕たち『ガンダム』世代には「ニュータイプ」といった方が伝わる話ですよね。『自分探しが止まらない』の中では「ハルマゲドン2.0」という言葉を使って、それについては書いています。
インターネットの世界に来ればみんな幸せになれるよという考えは、あまり根拠がない話だと思う。ガンダム的には「ああ、アムロ、時が見える」ってことでしょ(笑)。インターネットにしても実社会の延長線だし、yahoo!やgoogleはべつに霞を食って生きているわけではない。アルファブロガーの小飼弾のクラスまでいけば、Amazonの霞で食えるみたいですけど。
――次の本の予定とかあればどうぞ。
速水氏■宣伝になって恐縮ですけど、今、ケータイ小説がなぜ生まれたかを考察する類の本を書いているんです。『自分探しが止まらない』が、成熟を拒否するモラトリアムな若者の自分探しについて書いた本であるなら、今書いているケータイ小説に関する本は、成熟を急ぐヤンキー世界の「自分探し」がテーマになっています。
『自分探しが止まらない』という本は、中田英寿や「あいのり」とか高橋歩とか軌保博光とかそういう「自分探し」を動員する人や現象をたくさん取り上げている一種のカタログではあるけど、じゃあどう生きればいいんだよ?っていう実存の部分に答えを示している訳じゃない。多分、次のケータイ小説本に関しては、その「実存」の部分に触れることになるはずです。
(執筆・構成=republic1963)
●速水健朗(はやみず・けんろう)
1973年生まれ。石川県出身。フリーランス編集者/ライター。コンピュータ雑誌の編集を経てフリーに。
音楽、芸能、広告、コンピュータなどの多くの分野で執筆活動を続ける一方で、ネット上では、人気ブロガーとしての顔も持つ。
著書に『タイアップの歌謡史』(新書y)、『ブログ・オン・ビジネス』、『社内ブログ革命』(日経BP社、共著)などがある。
ブログ:犬にかぶらせろ!
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