- 2008/02/12 掲載
携帯業界をインターネットに引きずり込む ソフトバンクの「アジアナンバー1戦略」
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代表取締役社長 孫正義氏 『決算内容・携帯事業』 この記事の内容は ストリーミングでも視聴できます。 |
1つ目は、『3Gネットワークの増強』。現時点で、基地局数は全国で5000局を超えている。急ピッチで基地局を増加させたが、設備投資額について孫社長は、「07年は3800億円を予定していたが2500億円ですんだ。08年は2000億円超になる」と述べた。設備投資額が見込みより下がった点について、「コスト効率が上がったことと、一部、08年に持ち越した投資がある」(孫社長)とした。
2つ目は、『携帯端末の充実』。ソフトバンクは、ユーザーの多様な価値観に合わせた端末を開発した。 タッチセンサー、プレミアム、スマートフォン、ワンセグ、薄型、シニア、子供向け、カメラ、カラーバリエーション、株専用、そして、3月1日からソフトバンクモバイルショップで販売するディズニー端末。 ディズニー端末は、20代、30代の女性から非常にたくさんの問い合わせがきているという。同端末には、ヤフーボタンではなく、ディズニーボタンを設置。同ボタンを押すと、ヤフーとディズニーが協業で作成したサイトに飛ぶ。そのサイトには、女性のニーズにあったグルメやファッション等のコンテンツが掲載されている。
孫社長は、すべての端末の開発に携わり、「機能だけでなく、商品価値を高めるものを発売する」 とし、開発には妥協しない姿勢を示す。また、昨今、端末メーカー数が増加しているとし、「07年は、シャープ社が力を入れてくれた。最近は、パナソニック社が力を入れてくれている」(孫社長)と発表した。
3つ目は、『携帯コンテンツの強化』。07年3QのARPUは、07年2Qの4800円に比べ、マイナス280円の4520円。内訳は、音声ARPUが3340円から3040円とマイナス300円だったのに対し、データARPUは1470円から1490円とプラス20円となった。このデータARPUを増加させるには、コンテンツ強化が必要となる。ヤフーをはじめ、グループ各社がコンテンツ開発に力を入れているという。
そして、最後が『営業体制・ブランディング強化』だ。先日発表した、ティファニー社とのコラボ携帯は、ソフトバンクショップの旗艦店である原宿店で披露。集客効果を狙う。また、CM高感度で三冠王を達成(08年1月)。CMデータバンク/CM総合研究所によると、会社別、作品別、銘柄別で1位を獲得した。 それぞれの2位は、任天堂、東京ガス、NTTドコモだった。
ブランディングだけでなく、顧客満足度も向上している。ソフトバンク利用者の継続利用意向は07年12月で86%(外部機関による調査)、乗り換え満足度はKDDIを抜きトップになった(ブランド総合研究所調査)。解約率は、07年3Qで1%を切り0.88%である。
また、ソフトバンクは、全加入者のうち、シェアわずか7%の学生をターゲットに、2月1日より、『ホワイト学割』をスタートさせた。これは契約後3年間は、基本料が0円というもの。通話料は、ソフトバンク同士であれば無料。また、コンテンツ学割クラブという同プラン専用のコンテンツも用意した。市場では、このプランに対して、ARPUが低下すると懸念を示す。しかし、孫社長はそんな声を一蹴。「今は、シェアを取りに行く」(孫社長)と高らかに宣言した。また、この戦略に対し、「学生の契約数が少ない ソフトバンクだからこそ取れる戦略だ」とし、自社のポジションを最大限に利用した、他社のジレンマ を誘う戦略だと胸を張る。同サービスの反応について、こう説明した。「出足はわれわれが想定している以上のペースで注目が集まっている」(孫社長)。
携帯と中国を制する必要がある
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代表取締役社長 孫正義氏 『世界のトレンドと ソフトバンクの中長期的戦略』 この記事の内容は ストリーミングでも視聴できます。 |
その意図はどこにあるのだろうか。
リサーチ大手のIDCによると、パソコンは全世界で年間2.7億台増加し、インターネットに接続する時間は1日約2時間。一方、携帯電話は11億台で、インターネット接続時間は徐々に増加するという。「08年、インターネット接続の主役は、パソコンから携帯電話に移行する」と孫社長は話す。さらに、携帯電話でインターネットを閲覧するハードの環境面が整うとし、今まで閲覧されなかった3つの要因、通信速度が遅い、画面サイズが小さい、CPUが遅い、が今年、一気に解決できると自信を見せた。携帯電話は今年、3GからBeyond3Gへ、そして、ボイスマシンからインターネットマシンへ進化するというのだ。
ソフトバンクは、これにあわせた戦略を加速させる。
08年春モデルのBeyond3G端末発売数は、KDDI、NTTドコモより多い。また、ソフトバンク携帯向けポータルサイトであるヤフーケータイの検索サービス、モバイル版ヤフー検索の機能を大幅に拡充させた。ユーザーにとって利便性を高め、使ってもらう環境を整備するためだ。
2月1日から適用された有害サイトを規制するフィルタリング規制でも、その対策において戦略との整合性を図っている。孫社長は、「ソフトバンクはインターネット思想の企業だ」と語り、この規制に対する同社の対策を、「ブラックサイトを拒否する、性善説の対策だ」(孫社長)とする。KDDI、NTTドコモの対策は、CMで流している「庭においでよ」を例に出し、「庭思想だ」とした。
KDDIは公式コンテンツ2000サイトのみ接続可能にし、NTTドコモは、わずか70サイトしか接続しないホワイトリスト方式を取った。これにより、ある県の災害情報サイト等が閲覧できないという思わぬ落とし穴に陥った。
携帯電話が音声マシンからインターネットマシンへ移行するにあたり、プレイヤーも様変わりする。すでに、グーグルやアップル、マイクロソフトといったネット企業が参入。これらの企業は、今後、携帯市場において影響力を増していくと考えられる。2月1日、マイクロソフトが発表した米ヤフーの買収提示に対して、孫社長は、「今はノーコメント」としたが、「グーグルは今後もキープレイヤーだ」と警戒感を示した。
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代表取締役社長 孫正義氏 『質疑応答』 この記事の内容は ストリーミングでも視聴できます。 |
2月7日に開催された決算発表の最後に、孫社長は、こう宣言した。「ソフトバンクはインターネット企業であり、アジアナンバー1のネット企業を目指す」「携帯電話市場に参入したのも、ネット企業ナンバー1になるための布石だ」。携帯と中国を制したものがインターネット業界を制する。これを実行するため、ソフトバンクは5年、10年の長期戦に挑む。「今はまだ始まったばかりだ」と、孫社長は静かに語る。
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