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  • 2007/12/28 掲載

「デジタル・ディバイド解消に向け、県庁の屋上からWiMAXの実証実験」佐賀県CIOインタビュー(後編)

経営革新を支える日本のCIO

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 見渡す限り田んぼ、山、川。空を見上げれば、気球がふんわり浮かんでいるのんびりした風土…。そんなイメージの佐賀県が目指すのは、ずばり「IT最先端県庁」。現在、県知事主導のもと、改革が推し進められている。今回は、世界銀行で勤務経験を持ち、佐賀県2代目CIOとして活躍している川島宏一氏に、地方自治体の現状と、CIOが果たすべき役割などについて話を伺った。地方からの新しい風をお届けする。
「ICTで地域にポジティブな影響を与えていきたい」佐賀県CIO川島宏一氏インタビュー(前編)

「街づくり」は「人づくり」、3つの大きな壁を越えたい

川島宏一氏

佐賀県CIO、都道府県CIOフォーラム会長
川島宏一氏

――川島さんは、116人の応募者から選ばれています。そもそも、佐賀県のCIOに応募された動機は。

 川島■
前職は世界銀行の東京開発ラーニングセンターで、プログラム&プロジェクトコーディネータを勤めていました。国、地方自治体、公共セクターなどに借りていただいた資金を有効に使っていただくため、地域開発戦略の立て方、組織マネジメントの方法を始めとして発展途上地域の開発を促進するための様々な研修プログラムを開発、実施していました。具体的には、全世界を衛星回線でつないだテレビ会議システムを活用して世界各地の専門家同士が議論しあい、学びあうアプローチをとっていました。その前には、建設省で、街づくりや建築基準の業務などにも携わりました。

 なぜ、佐賀県のCIOに応募したかの話に戻りますね。「街づくりは人づくり」なんです。ICTのハードやソフトの開発よりも、それがツールになって地域の人々の活動にいかにいい刺激を与えられるのかに大きな関心がありました。そのため、現場で実際に実務を担当できる県のCIOに応募しました。

 私自身、CIOとして、「行政と民間」、「国と地方」、「日本国内と国外」の間に3つ大きな情報・知識の壁があると感じています。それぞれのサイロに蓄積されたノウハウを有効に交流させ、佐賀県地域によい刺激を与える方法を編み出していきたいですね。

デジタル・ディバイド解消に向け、WiMAXに大きな関心

吉野ヶ里歴史公園

吉野ヶ里歴史公園の遠景

――ICTに関して、最近関心を持たれている技術などありますか。

 川島■
WiMAXです。実は、民間企業と共同で、佐賀県庁の屋上にWiMAXのアンテナを立てて実証実験を開始する準備を進めています。WiMAXなら、車で移動している状況でも自宅で光ファイバーにつないでいるようなインターネット環境を得られると言われています。無線技術の投資対効果は有線に比べて高いため、革新的な意味があります。

 実は、総務省には、全国枠としてモバイルWiMAX免許を民間企業2社に許可するのと同時に、「固定系地域バンド」として違う周波数を市などの地域単位で割り当てようという方針があります(*1)。例えば、佐賀県内でWiMAX技術を用いた低コストの携帯電話が可能になります。他キャリアの携帯電話とどうつなげるのかといった多くの検証すべき課題もありますが…。佐賀県内で携帯電話の非カバー世帯はまだ0.5%ほど残っています。長期的には、デジタル・ディバイド解消に向け、WiMAXは非常に有効な手段になり得ると考えております。

――費用対効果の問題もあります。デジタル・ディバイド解消に向け残り1%からが難しいと思いますが。

 川島■
デジタル・ディバイドにはブロードバンド、携帯電話、地上デジタル放送の3つがあります。それぞれ現時点では違う端末なんですが、それぞれのディバイド状況に対して行政として、どのように支援していくか考える必要があります。市街地から離れた山の中にある数世帯でしかも当面ブロードバンドに対する需要が見込めないところに対して、ブロードバンドネットワーク延伸のために、行政として税金を投入することが妥当だろうか、という課題もありますが、災害などの非常時にいかに重要な情報を伝えていくかを考えると、やはりインターネットでのブロードバンドネットワーク整備は重要だと思います。3つに対する投資を効率良く組み合わせていくことが大切です。

――ちなみに、佐賀には離島がたくさんありますが。

 川島■
唐津市のいくつかの島のデジタル・ディバイド解消には、海底ケーブルを敷設する予定です。できるだけの支援を来年度中に行う予定です。

――公共的なインフラを整えるという視点が、民間企業のCIOと違いますね。

 川島■
県庁内の業務に対して効率化を進めるという点では、企業とまったく同じだと思っています。一方、県庁の外側に対しての意識、すなわち、県内全域、県民の方々一人一人にICTでどのようにポジティブな影響を与えるかという視点は、行政ならではのポイントですね。

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