- 2007/07/17 掲載
日本のIT生産性が低い要因とは-アクセンチュア 森氏
「Novell Virtualization Tour 2007」レポート
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(1)IT投資における現状および問題点
ITに基づく生産性は、米国75.5%に対して、日本は52%にとどまっているほか、IT投資と経営目標の整合性に至っては40%に満たない状況にある。このように日本のIT生産性が低い原因について、「日本的縦割り組織によりITが機能組織別に分化」するとともに、「オープンシステム化が進みシステムが分散」していることなどが原因なのだという。
また、既存システムの保守・運用コストに対する意識が低く、コストが積み上げ型になっているため見直しが行われず、戦略的なIT投資の割合が下がっている、にもかかわらずIT投資を効果測定する仕組みを確立されていない点が問題だと指摘。ハイパフォーマンスな企業は、機動的なIT支出、すなわち戦略的IT投資を行っている企業であり、収益力や業務効率の向上に貢献しているのだという。
(2)インフラの価値
それでは機動的なIT支出を行う上で何が必要になるのだろうか。それは、アプリケーション開発にひも付いた柔軟なインフラ構造の構築である。開発しなければならない案件の数自体を変えることはできないので、インフラを含めて開発を見直すのか、専用のアプリ開発に限るのかで費用・期間といったランニングコストが大幅に変更される。つまり共通のリソースを全社システムとして効率化を図りつつ、既存資産の全体最適化、有効活用を可能とするITインフラが求められているのである。これを「インフラの価値」とした。
ただし、運用上で「成果が見えないと長続きしない」「台数を減らした効果を示していくことが必要」と注意点を指摘。IT-ROIを考えて、結果を出すIT投資を行えば、(1)の問題が解決できると道筋を示した。
(3)インフラ最大化に向けた具体的施策
それでは、柔軟、かつ効率的なインフラを実現するにはどうしたらよいのか、というとここで初めて「仮想化」という具体的な方法論に行き着く。まずは既存のIT試算を「統合化と標準化」し(ステップ1)、必要なインフラを必要な時に引き出すことが可能な「On Request」環境(ステップ2)、企業内すべてのIP化をはじめとした最も効率的・理想的なシステム「Utility Computing」へ(ステップ3)実現していくのが良いという。
その点、「仮想化」はさまざまなIT資産の統合により、リソースを自動的に割り振ったり、動的に供給することを可能にする。「仮想化によってプロビジョニングを行えば、調達に数日かかっていたものが10分で済む」というように、ハードウェアの調達、ソフトウェアの共通化、標準化など、「使い回しが可能なシステム」を実現できるのである。またさまざまな事例とともに、ベストプラクティスを紹介。主要な成功要因として「トップのコミットメントメッセージ」「指標の設定」「早期段階で明確になった小さな成功を実現すること」「実行に焦点を当て続ける」「モチベーション維持」「継続は力なり」といった言葉を挙げた。
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仮想化は30年ほどの歴史を持つテクノロジー。初期の頃は高価なIBMのメインフレームなどを統合していくための技術だった。それがx86型のマシンの登場により、結果として仮想化の対象はx86マシンを効果的、効率的に行えるようになった。
その具体的な仮想化技術として氏があげたのがオープンソースソフトウェアの「Xen」だ。同社の提供するOS、SUSE Linux Enterprise Server 10より正式にサポートしている。
オープンソースで開発されたXenは、準仮想化(パラバーチャル)ゲストとしても、完全仮想化(フルバーチャル)ゲストとしても動作し、x86をはじめ新しいプラットフォーム上でも動作が可能な点が大きな特徴だという。
Xenの利用される具体的なシーンとしてもっともよく使われるのは「サーバ統合」によるものだという。たとえば、DNSサーバ、ファイルサーバ、Webサーバをそれぞれ別々に3台の物理サーバとしていたものを、1つのサーバで統合する。仮想化を考える企業はまずここから入る。
次に仮想サーバのフェイルオーバークラスタによる可用性の確保を行うパターン。1台の物理サーバで動作する1つのWebサーバを、1台の物理サーバ上において2台の仮想サーバとしてクラスタ化してしまう。
最後が高速プロビジョニング環境の構築。新規の物理環境を構築せずに、同一環境を容易に構築できるため、システムの構築期間やコストを大幅に削減できる。
それではなぜノベルなのかについて、氏はまずXenオープンソースコミュニティへの取り組みを紹介。次に「SUSE Linux Enterprise Server 10」によるXenの統合によって高い管理性を実現した点について言及した。最後にマイクロソフトの次期サーバ「Longhorn Server」を含めた技術提携によって、Windowsを含めたプラットフォームを選ばない環境を実現できるとした。
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IBMの考える仮想化プラットフォームは、クライアント、サーバー、ネットワークといった物理的なリソースを仮想化する「リソース・バーチャリゼーション」、いくつかの機能を統合化する「管理」、そして、ファイルの仮想化やグリッド、プロビジョニングなどを行う、もっとも上の領域となる「サービス・バーチャリゼーション」の3つからなる。
この3つにより、もたらされる価値は3点。まず平均使用率5~15%のサーバを統合化することが可能になる。その際、サーバリソースをプールしておく機能があるため、可用性と信頼性が向上する。
次に生産性の向上。テスト開発用に仮想化されたインフラを利用でき、より迅速なワークロードスケールを改善できる。同様に多くのシステム間で共通のツールを使い、資源管理をシンプル化できる。
最後にビジネス連携。ビジネスの要求に基づいた柔軟なリソースを提供できる。目標とインフラ性能の連携が実現し、ビジネスの継続性やいざというときの回復力を改善できるという。
これらを実現するのが同社のソリューション「IBM Systems Director」で、混在環境から物理統合、単純化(シンプリフィケーション)まで一貫して実現できるという。
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同社では仮想化技術の活用として、ブレードサーバを利用したソリューションを取り上げた。HPのブレードシステムはブレード内でWebサーバ、アプリケーションサーバ、データベースサーバを3層構成が可能で、ラックからの高度集約化でTCO削減に貢献できるという。特にラックからブレードへの移行については、電力消費量、床面積の効率化に加え、通信ケーブルの集約が大きいのだそうだ。ある事例では通信ケーブルにかける費用が8割程度削減されたこともあり、これらの点を踏まえた上でブレードの一元管理できるというメリットを強調した。
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