- 2007/04/27 掲載
【IT投資 市場調査】IT投資の拡大要因は、NGNとグローバリゼーション
まず、国内20業種のIT投資のトレンドをみてみる。
国内IT投資額は、2006年度で9兆1,100億円、2007年度の予測では、前年比5.9%増の9兆6,500億円となった。
業種別では、1位が通信、2位が銀行/証券、3位が電気機器、以下、官公庁/地方自治体、小売と続いた。 企業の規模別では、大手企業への依存度が高まっているという。IT投資額を企業規模別にみると、従業員5,000名以上の大企業が、全体の投資額の40%以上を占めている(官公庁/地方自治体除)。今後は、日本版SOX法対応などで大企業依存の傾向は続くと見られている。業種にみると、許認可性の通信や銀行/証券、生保/損保、電気/ガス、参入には大規模投資が必要な化学/石油・石炭/プラスチック/ゴム業界は、大企業の占める割合が高く、必然的にIT投資額が高くなっている。また、電気機器では総合電機メーカー、輸送用機器では自動車メーカーは潤沢な資金力によってIT投資を実践し、またEDIシステムに代表されるような業界単位で整備するシステム化プロジェクトを率先する立場にある。
2007年度は、国内景気の回復や引き続き好調な輸出等により、需要拡大に対応した設備投資を進めると同時に、より積極的なIT投資が進み、国内IT投資額は前年比5.9%増の9兆6,520億円と予測される。
業種別IT投資ランキング 2007年 |
次にハードウェアの動向を見てみる。
ハードウェアは依然として価格下落が続いているが、ハイエンドクラスに限っては変化が出てきている。主な要因は、サーバやストレージ分野におけるコンソリデーション(集約・統合)の活発化によるもの。複数の比較的小型なIAサーバやストレージで分散保有している各種システムを高性能サーバや大型ストレージに集約し、性能向上や運用負荷、コスト削減を図る動きが見られている。IT投資額の増加は、サーバなど重要な設備のリプレースが行われやすい環境に移行しつつあり、ハードウエア市場にとってプラスだと見られる。
最後に、IT投資を促進するキーファクターについて見ていこう。キーワードとしては、「NGN」「グローバリゼーション」が挙げられる。
NGNとは、2008年大都市圏で商用サービス開始を予定しているIP技術を活用した大容量・高品質の通信基幹網。NGNの特徴としては、通信速度の保証やセキュリティ機能を大幅向上が挙げられる。高画質なテレビ会議、高音質なIP電話が可能になるとされる。
通信業界は、2004年時点で企業数が約2,000社(総務省「事業所・企業統計調査」)、売上高は16兆円(総務省「平成17年度 通信業基本調査」)規模の市場である。2007年度の全設備投資額は、3兆4,000億円で、IT投資額はその42.6%にあたる1兆4,500億円になると予測される。2006年度に続き大手企業は、NGNの商用設備の導入に数百億円規模の投資を計画しているという。IT投資の主体は、NGN構築に関しての各種ハードウエアやコアネットワーク機器などの「設備」と、各種レイヤとしてTelecom Management(ネットワーク管理/サービス管理等)やBusiness Support System(CRM/課金システム/顧客サポートシステム等)の「開発」であり、投資は拡大すると予測される。
次のキーワードは、「グローバリゼーション」。
あらゆる業界で今、海外事業の強化が課題となっている。海外拠点への積極的なIT投資が見られる業種は、電気機器、輸送用機器、一般機械、鉄鋼/非鉄金属/金属、金融、通信、印刷/同関連業、精密機器、繊維、建設、運輸、卸売である。
電気機器(製造業)は、2004年で企業数が約2万2,000社(総務省「事業所・企業統計調査」)、出荷額は50兆円(経済産業省「工業統計表」)の市場である。国内需要は産業用機械で、国内電力会社による設備投資、民生用電気機器では、薄型テレビといえるが、全般的に低迷基調に変わりはなく、産業用は北米やアジアなどの電力会社、民生用は中国を中心とする海外市場といった海外需要が業界を牽引している。
2007年度の全設備投資額は4兆5,500億円で、前年比6.5%増は製造業の中で特に高い増加率となっている。IT投資額は、その28.6%にあたる1兆3千億円が予測される。大手中堅企業では、引き続き好調な外需を背景として、国内外拠点に対するIT投資が一層活発化する。
鉄鋼/非鉄金属/金属業も海外進出でIT投資が積極的である。鉄鋼/非鉄金属/金属業界(製造業)は、2004年で企業数が約4万2,000社(総務省「事業所・企業統計調査」)、出荷額34兆円(経済産業省「工業統計表」)の市場。2007年度は全設備投資額2兆5,000億円で、IT投資額はその15.2%にあたる3千800億円が予測される。需要家の海外生産拡大に伴い、鉄鉱石等材料のグローバル調達体制の強化や、海外拠点を本社で一元管理し、グローバルシステムとしての全体最適化を図り国際競争力強化を目指す取り組みが、大手企業を中心に拡がっている。また、多品種少量発注、コスト要求、納期短縮に迅速に適切に対応するため、材料調達から生産、物流に至るサプライチェーンの強化、関連取引先企業との情報共有によるシステム連携などが、大手企業を中心に進められており、IT投資拡大が期待されている。
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