- 2007/02/07 掲載
ERP導入で企業を強くする[第2回/全3回]
~中堅中小企業のERP導入実践シナリオ
コスモコンサルティング 代表 ・ITコーディネータ ・名古屋ソフトウェアセンター ERPアドバイザー ・独立行政法人中小企業 基盤整備機構 IT推進アドバイザー 畠山忠彦氏 |
現場で入力された情報が会計システムまで一気通貫で反映され、売上・原価・利益・在庫・生産の状況が刻々と更新され、最新の経営状況が把握できる。情報をもらった経営者は迅速かつ適切な判断を下すことができる。
2 業務の簡素化と効率化が図れる
全体最適の観点から重複業務を廃止し、業務プロセスの簡素化や不要な業務プロセスを取り除いて業務を効率化する。社内から手作業とペーパーを駆逐する。
3 経営改革を断行するチャンス
ERPシステム導入を古い社風や悪しき風土を改める機会として利用する。ERPシステム導入を機に業務改善や組織・人事の刷新を徹底的に進め、経営改革をドラスティックに遂行する。
ERPシステム導入の効用を述べたが、その現実は必ずしもバラ色ばかりではない。多くの企業が導入を目指すものの、失敗に終わるケースも少なくない。期待は大きいが、外れたときの代償も大きい。
ERPシステムの導入事例Ⅰ
日用雑貨販売会社A社はERPベンダーB社よりERPシステムを平成16年秋に導入した。A社が導入したERPパッケージは中小企業導入実績No1の売れ筋製品として定評があり、社運を賭けての導入は大きな期待が持たれた。
しかし、導入後1年を経過しても実稼動はおろか、先の見通しも立たない状況にある。A社の当初の導入方針はERPシステムがもつ「ベストプラクティス」を採用することで業務プロセスを最適化し、経営効率の向上を図ることであった。自社の業務にあわせてシステムをカスタマイズすることを避け、ERPシステムに業務を合わることが業務改善につながると目論んだ。しかし導入作業の過程の中でERPシステムと業務との不整合が噴出し、収拾がつかない状況に陥った。導入したERPシステムに業務を合わせることは新たに会社を起こし直さない限り不可能なことであり、当初の目論見は脆くも崩れ去った。導入前の業務要件定義が欠けていた事は云うまでも無い。現在、筆者が参画して建て直しの最中であるが、導入したERPシステムの大幅なカスタマイズが避けられない状況にある。当初に要件が明確に定義されていれば製品選択は違っていたと思うが後の祭りである。
ERPシステムは魔法の杖ではない
1 ERPシステムにベストプラクティスなどない
ERPシステムが用意するビジネステンプレートは選択肢が少なく、自社に最適なテンプレートの採用は望めない。業務プロセスの最適化は他力本願ではなく、自社で考えなければならない。
2 コスト削減と導入期間の短縮は期待しない
ERPシステムと自社の業務とのフィット&ギャップは慎重に時間を掛けて行わなければならない。調整不能なギャップはカスタマイズで対応する。ERPシステムに何が何でも合わせることは自社の強みを損なうことなりかねない。
3 ERPベンダーはコンサルタントではない
ERPベンダーが派遣するコンサルタントは、IT技術は知っていても経営や業務に関する知識は薄い。ERPシステムを活用して経営に役立てるノウハウは期待できない。
ERPシステムの導入事例Ⅱ
サービス業D社は月次決算の早期化と業務プロセスの最適化を目指してERPシステム導入に着手した。ERPシステムへの経験が無い社内スタッフだけでの導入検討には不安があり、かねてからITに関する相談を受けていた筆者に支援依頼が持ち込まれた。導入プロジェクトを結成し、経営戦略の確認から始まり、各業務の調査、課題抽出と解決策の検討を行ったうえでD社にとって最適な業務プロセスの設計まで行った。要件をもとに主要ERPベンダー5社に対してRFP(提案依頼書)を発行し、提案・見積もりを受けた。5社から提示された見積には大きな隔たりがあり、5000万円から1億5千万円にまで及んだ。慎重な審査の結果、業務適合度が最も高い(カスタマイズが少ない)E社の製品を選択した。現在導入準備の真最中ではあるものの当初の予定通りに計画は進行しており、本年4月からの稼動が見込まれている。D社が導入前に時間とコストを掛けて実施した要件定義が、その後のスムーズな導入を可能にした。
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