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  • 2024/01/09 掲載

不況真っただ中で「V字回復」、CX(顧客体験)最強飲食チェーンの秀逸な逆転戦略

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中国の飲食店が窮地に追い込まれてる。景気後退により、多くの消費者がファストフード店や格安店に流れているからだ。そのような中で、「再起困難」とまで言われたどん底からV字回復をした飲食チェーンがある。「お客さんが喜ぶことは何でもやる」という接客手法で知られる大手火鍋チェーン「海底撈」(Haidilao:ハイディーラオ)の復活劇の裏側には、現場のスタッフたちによる秀逸な戦略があった。
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不況にあえぐ飲食店が多い中でV字回復をした飲食チェーンは何をしたのか?
(Photo/Shutterstock.com)

窮地の中国飲食業、V字回復した大手火鍋チェーン

 中国の飲食業がかつてない試練に直面している。10年か20年に一度という危機が、ここ数年毎年のように襲ってきているのだ。2020年は新型コロナの感染拡大、2021年は原材料費の高騰とリベンジ消費の不発、2022年は感染の再拡大、そして2023年は消費マインドの減退だ。


 こうした状況で、火鍋チェーンのリーディング企業である「海底撈」(Haidilao:ハイディーラオ)は、2021年に創業以来最大となる41.61億元(約845億円)の純損失を計上した。一部には、もう海底撈が復活するのは難しいという見方まであるほどだった。

 しかし、2022年には13.73億元の純利益を出すV字回復をし、2023年は上半期のみながら22.59億元の純利益を出している。存続危機から一転して、絶好調といっても過言ではないほど力強く成長を始めている。

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海底撈の営業収入と純利益の推移。2019年までは順調に成長。2020年はデリバリーなどの外販で乗り切ったが、記事後半で解説する2021年の積極策が裏目に出て、41.61億元という大損失を出した。2022年にはV字回復をした
(データ出典:海底撈財務報告書)

“変態級接客”で一躍人気に、「海底撈」とはどんな企業?

1ページ目を1分でまとめた動画
 海底撈は、1994年に四川省簡陽市で開業された4卓しかない小さな火鍋店がその始まりだ。トラクターの製造工場で働いていた創業者の張勇(ジャン・ヨン)氏は、起業をするときに調理技術を必要としない火鍋に目をつけた。

 しかし、四川省は火鍋の激戦区だ。料理で差別化できない張勇氏は、来店客に徹底的に親切にすることにした。「お酒を飲みすぎた人には無料でおかゆを出す」「タレがおいしいといってくれたお客さんにはボトルに詰めてお土産にもたす」「ソフトドリンクやサイドメニューは無料にする」など、どうしたらお客さんが喜んでくれるかを考え、それを徹底していった。これにより、小さな火鍋屋に行列ができるようになった。

 その様子を見ていた投資家が注目して、海底撈のチェーン展開が始まった。このころに、張勇氏は1つの確信を得た。「お客さんは満腹になりたくてくるのではない、満足したくてくるのだ」と。これが海底撈チェーンの基本コンセプトになる。

 海底撈ではソフトドリンク、サイドメニューは無料(中国のみ)。タレは8種類用意されていて、自分の好きなブレンドを楽しめる。悩んでいると、すぐにスタッフが「私のおすすめのタレを試してください」と言って作ってくれる。紙エプロンもつけてくれ、鍋の管理もしてくれる。店内では常に麺打ちや変面のパフォーマンスが行われている。

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客席では随時、麺打ちや変面のパフォーマンスが行われる
(引用:海底撈公式サイト)

 それだけではなく、火鍋店なのになぜか無料のネイルサロンや靴磨きコーナーが併設されている。最近では洗髪コーナーまででき始めている。火鍋とどんな関係があるのかは考えない。「お客さんが喜ぶのであれば何でもやる」、それが海底撈の個性となり「変態級接客」とまで呼ばれ、海底撈はあっという間に人気チェーンになった。

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海底撈の多くの店舗に併設されている無料のネイルサロン、靴磨き、洗髪コーナー。火鍋を食べている最中になぜそのようなものが必要なのか、理由は特にない。お客さんが喜ぶことなら何でもやるのが海底撈だ
(引用:海底撈公式サイト)

 最盛期には客単価100元以上という中級レストランでありながら、1日5回転するという異常人気となった。飲食店では高級店になると1日1回転の想定で価格を設定する。ファストフードの繁盛店では1日10回転するが、客単価は海底撈の半分以下だ。コロナ禍前は、海底撈の店舗には必ず長い行列ができていた。

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海底撈の客席回転率の推移(回転率=客数/客席数)。コロナ禍前は客単価100元以上の中級レストランでありながら5回転以上をしていた。その後、大きく下落したが2023年は上昇の兆しがある
(データ出典:海底撈財務報告書)
【次ページ】高い顧客満足度をキープできる独特すぎる「評価指標」
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