- 2007/01/05 掲載
【中国ビジネス最前線(3)】ビジネスの鍵はやはり人間関係(中国ビジネス成功の秘訣)
中国 保山市の町並み
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保山市の市内から車で1時間半ほど西に進んだ、怒江(サルウィン川)の流域にコーヒー豆の産地がある。雲南のコーヒーは遡ること100年前フランス人により持ち込まれたのがきっかけだったそうだ。
このエリアにはティピカとカチモールという2種類の作付け品種があり、カチモールはぶどうのようにコーヒーの木にびっしり実がつくため大量生産でき、一方でティピカは実があまりつかないが価値が高い。この地域にあるシンガポール資本、台湾資本のコーヒー加工工場は収穫量を優先し、ティピカもカチモールも関係なく加工するため、地元の農家はティピカもカチモールもどちらも同じコーヒーとしてしかとらえておらず、ビジネスがため、この地域の農家が栽培するコーヒーの木はティピカからカチモールに植え替えられつつある。
雲南コーヒーの最高級品といわれる、保山のごく一部でしか採れないティピカ種がさらに減少する中、この希少価値に目をつけたのが今回ご紹介する企業「邱公館食品」だ。村田考市氏は、その工場長として3年前より雲南の土地に赴任した。村田氏のすべきことの1つは、ティピカ種の確保と、ティピカ種専用の農地開拓である。
邱公館食品の村田考市氏とコーヒー山
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しかし「農民はなかなか豆を売ってくれず、そのつど、相場の状況をみながらの駆け引きで、安定した取引はありませんでした」と村田氏は語る。1月から3月にコーヒー豆のバイヤーがたくさんやってくる。コーヒーはもちろん国際相場というものがあるが、雲南での相場もある。収穫は秋から始まるが、売り急がなければバイヤーがもっと高く買ってくれる、そんな農家の思惑があり、木に実がなっている状態では簡単には売ってくれないのである。
「特別な方法はありませんでした。あそこ(邱公館)に良い豆を売れば必ず買ってくれると思ってくれるような関係を構築すべく、地道に正直に地元の農民と向き合いました。この仕事で最も大切なのは地元の人々との人間関係の構築ですね」
翌年自社の加工場がこの地に完成し、オフィスや、倉庫や各種加工機器を確保し、また敷地に加工したコーヒー豆を乾燥させるための棚をたくさん並べ、衛生面を改善した。加工場の開設にあわせ地元でスタッフを何人か雇ったが、このとき問題が発生した。
雲南省には多数の少数民族がいることで有名だ。加工場周辺も例外ではなく、加工場には"タイ族"の村、工場が利用する水源には隣村の"漢族"の村があり、異なる民族の村が隣り合っていた。
村田氏は自身が直面した雲南ならではの雇用問題を語る。「はじめはスタッフのすべてを地元のタイ族からを雇っていました。するとしばらくの間、水道管が壊されたり、玄関の会社のロゴが外される嫌がらせがたびたび起きました。その後、漢族の村の村長の近縁の女性をスタッフとして雇ったところ嫌がらせはピタリと止まりました。逆に漢族だけ雇ったら、タイ族の村で暴動が起きるでしょうね」現在加工場にはタイ族5人、漢族3人が常時勤務し、収穫時には20人~40人のスタッフが加工場で働く。
昨年には地元の山の土地を丸ごと借り、100ム(約666アール=約7キロメートル四方)のコーヒー農園を開墾した。加工場内で苗を育て、その苗を山の段々畑に植える。これで将来のティピカ豆の収穫数減少への不安はなくなった。
さらに近い将来、別の400ムの山をティピカ種のコーヒーの木で埋め尽くす予定だ。邱公館食品は雲南コーヒーで雲南の土地、人々にお世話になっているので、今度は逆に少数民族の文化を雲南コーヒーを通して少数民族の文化を保護したいという目標を持っている。コーヒーのパッケージにタイ族の人々による刺繍をあしらうなどを一例として、いろいろ考えているそうだ。
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