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SNSを広告宣伝のツールとして利用する企業はすでに数多い。そこで課題となりがちなのが、SNSを用いた各種施策の「効果測定」の難しさだ。そうした中、大手菓子メーカーの森永製菓では独自の測定手法を考案し、SNS活用を効果的に進めている。同社のマーケティング部 広告部の二宗 瑞季氏がUser Local Customer Conference 2023に登壇し、SNSの効果測定の具体的な手法とともに、同社におけるSNSデータの活用法について解説した。
創業120年を超える老舗企業、森永製菓の新たな挑戦「SNS活用」
創業から120年を超える歴史を持つ森永製菓のあゆみは挑戦とともにあった。西洋菓子の文化が日本になかった1899年の創業自体がそもそも一大チャレンジだったという。その後も携帯できるポケット用ミルクキャラメルや、日本初のカカオ豆からのチョコレートの一貫製造などに取り組み、それが時代ごとの人気商品の開発につながっている。
「今では菓子以外にアイスやゼリー飲料、ホットケーキミックスなども扱い、お子さまからお年寄りまで幅広い年代の方々に楽しんでいただいています。そんな当社が今、取り組んでいる挑戦の1つが『SNS活用』です」(二宗氏)
嗜好(しこう)品という菓子の特性を踏まえ、同社ではかねてより各種媒体を用いた広告宣伝に積極的に取り組んできた。ブランドや目的ごとに複数のSNSアカウントもすでに運用している。
そこでの経験を基に、同社では、いわゆる「トリプルメディア」の媒体特性を次のように整理している。
- ペイドメディア:テレビCMや雑誌広告など。不特定多数への情報配信力の大きさから「認知度向上」で最も力を発揮する。
- オウンドメディア:ブログやECサイトなど。より詳細な情報を消費者に届けることでの「理解促進」で効果的だ。
- アーンド(ソーシャル)メディア:X(旧ツイッター)やインスタグラムなど。従来メディアにはない消費者とのつながりによる「ファン化」が一番の魅力となる。
アーンドメディアは、「ファンがメディアとなる」点でも多媒体と一線を画す。UGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)による同社や商品への良い評価は、企業からの一方的な伝達ではない、消費者間の“口コミ”として当社や商品の信頼向上に極めて有効で、消費者の購買欲求も直接的に刺激する。
メディア内でのユーザー間のコミュニケーションも活発で、情報のコントロールが難しい半面、上手に使えば低コストで高い広告効果を期待できる。
SNSをやる意味とは、森永製菓が採用する効果測定方法
同社ではアーンドメディアの特性に着目し、オウンドメディアと自社アカウントの双方でのオーガニック(独自コンテンツ)発信を通じた消費者のファン化に向け、自社アカウントのフォロワーの増加に力を入れているという。
しかし、この活動を進めるにあたって課題となるのが、「フォロワーの増加が企業経営にどんな好影響をもたらすのか」という点での検証のしにくさだ。
同社の会員サイト「エンゼルPLUS」で実施した調査によると、同社商品の購入頻度や金額は、フォロワーのほうが一般消費者の2倍以上であることがすでに明らかになっている(図1)。
ただ、SNSでの1番の“肝”は、すでに述べた消費者自身による情報発信である。そのため、フォロワーが何を発信し、その影響で消費者全体の購買活動がどう変わったのかの網羅的な把握は、現実問題として不可能だ。また、ファン化の手法はSNS以外にもある。その点からSNSをやる意味、さらにフォロワーが増えることで見込まれるメリットを社内で尋ねられることが少なくなかった。
状況を打開すべく、マーケティング部が採用しているのが、「SNSでの評価の広告費への換算」だ。具体的には、フォロワー増加数やインプレッション数、クリック数などの「投稿に対する反応」と、過去に実施した広告配信結果から算出した反応の「単価」を掛け合わせ、同様の「価値(効果)」を得るために必要な想定広告出稿額を算出するというもの。
「これにより効果を数値として明確に説明できるようになりました。あくまでも参考値ですが、以前よりもSNSの意義を社内で理解してもらいやすくなっています」(二宗氏)
【次ページ】森永製菓はXとインスタグラムを日々どう運用しているのか
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